大相撲夏場所は、初土俵からまだ7場所目の「大の里」が12勝3敗で初優勝を飾った。

 

 

 

 あるプロ野球チームの ”星取表” を見てもらおう。開幕からの45試合を15試合ごとに区切ると 6勝9敗、5勝10敗、4勝11敗 となる。

 

 

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 じつは、プロ野球パ・リーグ序盤の45試合を終えた時点での、わが愛する「埼玉西武ライオンズ(以下ライオンズ)」の今シーズンの成績である。

 

 

 

 15勝30敗の最下位。1位のソフトバンクとのゲーム差は15.5ゲーム。ライオンズが16連勝し、ソフトバンクが16連敗しないとひっくり返せない大差である。(残り試合98試合)

 

 

 

 ・・・もう少し詳しくライオンズのデータを見てみよう。順位はパ・リーグ6チームでの順位。

 

 

得点 6位 118点 

(1位 ソフトバンク 197点)

失点 5位 167点 

(1位 ソフトバンク 102点)

打率 6位 0.214 

(1位 ソフトバンク 0.261)

防御率 5位 3.29    

  (1位 ソフトバンク 2.06)

 

 

 ・・・ライオンズは1試合平均で「2.6点」しか取れないが、相手チームには「3.7点」取られている・・・というデータで、簡単にいうと ”相手に3点取られたら負け” という数字だ。

 

 

 

 この結果を受けて26日夜、ライオンズは松井稼頭央監督のシーズン途中での休養と渡辺久信GMの監督代行兼任を発表した。

 

 

( 埼玉西武ライオンズ・松井稼頭央前監督 )

 

 

( 渡辺久信GM兼監督代行 )

 

 

 

 以来ネットや新聞上には、この ”監督休養” をめぐり賛否両論さまざまな意見が溢れている。

 

 

 

 ファン歴70年の私の記憶では、ライオンズが福岡から所沢に移転してきた45年前から成績不振で途中休養した監督は、2014年の伊原春樹監督だけだ。

 

 

 その年の5月終了時点でライオンズは19勝31敗の借金12。首位から12.5ゲーム差だった。

 

 

 そして6月4日伊原監督の休養が発表され、田邊徳雄打撃コーチが監督代行になった。しかし、残り試合頑張ったものの引き継いだ時点での借金を返せず、63勝77敗の5位で終わった。

 

 

 ただ伊原監督は、2002年~2003年の2シーズンも監督をしているが、初年度はパ・リーグ優勝、2年目は2位と好成績を上げていた。

 

 

 

 ふたりの監督休養にいたる成績を見る限り、松井監督の休養も仕方ないかなと思わざるを得ない。

 

 

 

 ただ伊原監督時代の優勝した2002年頃は、松井稼頭央、アレックス・カブレラ、和田一浩、伊東勤、西口文也、豊田清、森慎二ら軸になる選手がまだ残っていたが、昨年から今年にかけてのライオンズの戦力低下は誰の目にも明らかだった。

 

 

 

( 多摩湖近くのライオンズの本拠地「ベルーナドーム」)

 

 

 

 パ・リーグ随一と評価されている先発投手陣はともかく、野手の選手層の薄さは全く解決されないままここ数年戦っている。

 

 

 

 ところで、ライオンズはFA(注)で残ってくれる待遇を提示できず、他球団に出ていく主力選手が後を絶たないという指摘は以前から多い。FA制度導入後の主な流出選手を挙げてみよう。

 

(注)FA(フリーエージェント)とは一定期間一軍に登録された選手に与えられる「あらゆる球団と選手契約のできる権利」のこと。長く一軍でプレーした選手へのご褒美。

 

 

 工藤公康、石毛宏典、清原和博、松井稼頭央、和田一浩、中島裕之、涌井秀章、岸孝之、浅村栄斗、炭谷銀仁朗、秋山翔吾、森友哉、山川穂高

 

 ・・・そうそうたる顔ぶれである。

 

 

 

 ライオンズに復帰した炭谷を除き涌井以降の選手は、今シーズンも所属チームの主力選手として活躍しているからライオンズファンとしては悔しい思いしかない。

 

 

 

 悔しいものの、FAは選手の権利だから元ライオンズ選手の活躍はうれしいが、その穴を埋めてほしい若手選手の育成、トレードによる補強、外国人選手の獲得がうまくいっていない。

 

 

 トレードによる補強は資金的負担や代替選手放出という点で現在のライオンズは動きづらい。また、外国人選手獲得はMLBですら選手獲得に苦労している現状に加え、日本のプロ野球がレベルアップし、来日してすぐに活躍できる選手がほとんどいなくなりつつある。現在活躍している外国人選手は、数年苦労して日本野球に慣れ対応できた選手である。

 

 

 だから、昨年外国人選手の中ではまずまずの成績を残し、日本の野球にも慣れてきたマキノン選手と今年契約できなかったことは残念だった。好きな選手だった。

 

 

 となると、資金的に苦しく外部からの選手獲得が難しいチームは自前の育成力が問われることになる。育成力とは将来性のある選手のドラフトでの獲得と戦力化である。

 

 

 

 この点で松井監督には悔しい思いがあるだろう。

 

 

 2018年に現役を引退した松井監督は、2019年から2021年までの3年間2軍監督のポストにあった。まさに若手育成の責任者だった訳である。

 

 

 さらに2022年は辻監督の下で1軍ヘッドコーチに就任、近くで辻監督の采配を勉強し満を持しての2023年からの監督就任だった。しかし昨年は5位、今年は前述の通り成績不振によりシーズン途中での休養となってしまった。

 

 

 

 こうしてみると、ライオンズ不振の原因は松井監督だけの責任ではないことは明らかだが、森友哉や山川穂高といった主力選手がFAで流出することがほぼ確実な中で引き受けたという点では、不運な監督だったと言えよう。

 

 

 

( ベルーナドームの内部。ライオンズはここ数年、ドームとその周辺の「ボールパーク」化に投資している。)

 

 

 

 しかし、似たような状況下にあったチームがある。北海道日本ハムファイターズだ。

 

 

 日本ハムは、2021年に中田翔選手、有原航平投手、2022年に西川遥輝選手、2023年に近藤健介選手、今年はエースの上沢直之投手・・・と主力選手を次々に放出しながら、その一方で他チームとの活発なトレード等を進め新しい選手と入れ替えた。

 

 

 そして今では、見事にチームの体質を変え「負けないチーム」「見ていて面白い野球をするチーム」に変貌しつつある。その裏では北海道に移転した20年前からの長期的な計画に基づくチーム作りがあったのだろう。

 

 

 

 日本ハムのチーム作りとライオンズのそれはどこが違ったのだろうか? 

 

 

 その意味ではチームの編成や方針に関する権限を持つGM(ゼネラルマネージャー)の地位にあった渡辺久信監督代行の責任も重い。だからこそおそらく引受け手の見つからなかった後任に自らを任命したのだろうと私は思う。

 

 

 

( 松井監督。優しい性格ゆえかインタビュー等で選手を責める発言を聞くことは無かった。)

 

 

 

 ところで、今回の松井監督休養に関する多くの記事を読んだが、「一番的を得た指摘だ」と感じた記事を最後に転記しておこう。

 

 

 その指摘は2016年から3年間ライオンズのコーチをしていた橋上秀樹氏(現・オイシックス新潟アルビレックスBC監督)からのものである。橋上さんはご存知の通りヤクルト等での現役を終えた後、18年近くプロ野球や独立リーグでコーチ、監督歴がある。

 

 

( ライオンズコーチ時代の橋上秀樹氏 )

 

 

 (記事)・・・J-CASTニュースは、西武の元コーチでオイシックス新潟アルビレックスBCの監督を務める橋上秀樹氏(58)に話を聞いた。16年から18年まで西武でコーチを務めた橋上氏は、「今シーズン西武が低迷しているポイントはいくつかあります」と切り出し、要因に言及した。

 

 

 「まずひとつは攻撃陣の低迷です。これは、編成はもちろんですけども、育成がうまくできていなかった。松井監督が2軍監督のころから、2軍から新しい選手が出てくるということが減っていた。FAで選手が出ていくというのは、ずっとここ何年も続いてきたことだが、以前であれば次に代わる選手が自前で出ていたことで多少補えていた。それがここ数年は育成ができていない。

 

 

 橋上氏が指揮するオイシックス新潟アルビレックスBCは今シーズンからイースタンリーグに参戦しており、西武の2軍と試合をする機会がある。すでに数試合しており、橋上氏はその時の印象をこう語った。

 

 

 「今、私たちのチームが西武のファームと戦っていますが、今後1軍で主力として活躍していくような可能性のある選手が少ない。特に野手に関しては楽しみな選手が少ないです。このままでいくと、野手の自前の上積みはここ数年ないだろうと感じます。

 

 

 ・・・かつてのライオンズは、「育成のライオンズ」と言われるほど若手を次から次に育ててきていただけにこの指摘はつらい。あの育成ノウハウはどこに消えたのか。

 

 

 このほか橋上氏は、投手陣の構成を先発投手中心にしすぎて救援陣との力の差が大きすぎること、せっかく補強した外国人選手のモチベーション向上のケアをもっとやってあげるべき・・・と指摘している。鋭い指摘だ。

 

 

 

 ・・・とはいっても試合は待ってくれない。28日からセ・パ交流戦が始まった。最初の相手・中日との試合前の渡辺監督代行の様子をある記事が報じていた。

 

 

 (記事)・・・試合前のロッカールームで、渡辺監督代行はナインたちを前に・・・

 

「今日から交流戦が始まる。この交流戦は今までになく非常に大事になる。戦う姿勢、ファイティングポーズを見せていこう。連勝したここ2試合はいい戦いをしている。必ず浮上していこう。9月にヤマが来るので、それまでにしっかり勝負できる位置まで上げていくためにみんなの力が必要。力を合わせて、今日からやっていこう」 

 

 ・・・とゲキを飛ばした。指揮官として明確なビジョンと的確な言葉でメッセージを伝えることは、松井監督にはなかなか見られなかったシーンでもある。

 

 

 

 昨日で渡辺監督代行になって2試合を終えた。戦績は1勝1敗。

 

 

( 代行になって初めて指揮を執る渡辺監督代行。)

 

 

 

 29日の1対0で中日に勝った試合でみせた隅田投手の力投、得点につながった蛭間選手の執念の内野安打、そして8回のピンチを救った佐藤選手の美技・・・何かが変わるキッカケになりそうな試合だった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・70年もライオンズファンを続けている私は、西武に譲渡される以前の八百長試合に絡む「黒い霧事件」の暗黒時代も見てきた。だから1968年からは7年連続Bクラスという長い低迷期に入った。

 

 あの時代の悔しさから見ればまだまだ傷は浅い。

 

 

 私は当然、残り96試合も全て試合終了までTV観戦し応援することにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・昨年の今頃もライオンズは低迷していた。昨年6月21日に投稿したブログ「ネット時代のプロ野球ファン・・・低迷する埼玉西武ライオンズの周辺で起きていること」も、枠内をクリックしてあわせてお読みください。 

 

 

 

 

 

 (注)球場内の写真以外はすべてネットよりお借りしました。また貴重な記事も転記させていただきました。ありがとうございました。