先週から 『ブログを通して得た“文字友”』 というシリーズで書いている。今週はその第2回だ。

 

 

 

 “文字友(もじとも)” というのは、ブログの文字や写真を通して、私が勝手に “友人” になりたい投稿者をさす造語だ。

 

 

 

 今週の “文字友” のブログタイトルは、シンプルに『両親の介護日記』。投稿者のペンネームは「ごちゃん」。

 

 

 

 まず、ブログの紹介欄をそのまま転記しておこう。

 

 ・・・父は要介護4で、特養に入所中。母は要介護2で、私達夫婦と一緒に同居中。レビー小体型認知症と診断され、日に日に認知症は進行中。仕事をしながらの介護。いろんな壁に打ち当たり、その時の思いや体験談を書いています。

 

 

 

 ところで、今まで自分の回りに介護を必要とする高齢者がいなかった人にとっては、このブログの紹介文だけでも戸惑われる言葉がたくさん出てきます。

 

 

 要介護4、特養、要介護2、レビー小体型認知症、認知症・・・といった用語は、そうした方々にはなじみのない言葉です。

 

 

 ご参考までに、ここでは簡単に解説しておきます。

 

 生活していく上で手伝いが必要と思われる高齢者がいた場合、介護サービスの必要度を判断するために、まずどのくらい介護の手間がかかるかを認定します。要介護認定という作業です。要介護4要介護2といったように、その程度によって5段階に分かれ、その段階に沿ったサービスが受けられます。

 

 特養(特別養護老人ホームの略)は老人福祉法に基づく公的な介護施設で、要介護3以上の方しか利用できません。民間の老人ホームに比較して低料金な点が魅力です。

 

 認知症は、さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす症状をさします。脳などの病気の原因によってアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などのタイプに分けられます。

 

 

 

 

 

 

 さて、私が「ごちゃん」さんのブログに出会ったのは今年に入ってからです。

 

 

 家族等が投稿した親の介護に関するブログは、ネット上にたくさん公開されていますが、今まで継続的に読んでいたブログはありませんでした。


 しかし、そうした投稿を目にするたびに、親の介護で毎日忙しいのによく継続的に投稿されているなあ・・・と感心していました。それだけでも頭が下がります。

 

 

 

 そうしたなかで「ごちゃん」さんのこのブログに出会ったのですが、彼女はほぼ毎日投稿されていました。

 

 

(「ごちゃん」さんのブログ「両親の介護日記」表紙の記事一覧。枠内をクリックすれば開きます。一覧の各タイトルをクリックすれば、投稿ブログを読めます。)

 

 

 

・・・4月5日に投稿された『母の徘徊の予感』の冒頭の部分を転記させてもらいました。「ごちゃん」さんのブログの雰囲気を感じて下さい。

 

 

 

息子の陸が、父のお見舞いに行った翌朝4時、自宅に帰ろうとした🙂

 

母が、玄関のドアの鍵を開けたり、閉めたりしていた。

陸「ばあちゃん、どうしたの?」

母「ドアが、開かないから、鍵がおかしいのかなと思って。」

陸が、ドアを開けたら、蝶つがいに器具が、挟まって、10cmしか、開かない。陸、母の徘徊予防策だと、察しがついた。

陸「お父さんが、直してくれるから、起きるまで、待とう。ばあちゃん、朝ご飯、作ろう。」

上で寝ていた私は、陸と母の話のやりとりを聞いて、もう少し寝ることにした。

 

午前5時、目覚ましが鳴り、下の台所に行った。

リビングで、陸と母がテレビを見ながら、朝ご飯。

私「ごめんね。陸。ばあちゃん、また、徘徊しようとしたんだね。」

陸「そうみたいやね。。。。ばあちゃんに目玉焼き🍳お願いしたら、フライパンに油たくさんいれて、その中にチューブのニンニクと生姜を何プッシュもするもんやから、油がはねて、大変やったわ。火を止めて、卵を割って入れたわ。でも、その目玉焼きが美味しかった。なーっ、ばあちゃん😁」

母、笑みを浮かべながら「そうか😅」

 

陸が、帰るので、私は、玄関まで行き、ドアの蝶つがいの器具を取ってもらった。

陸「この器具、めっちゃ良い案やな。お父さんが考えたの?」

私「そうやで。ばあちゃん、おかしくなかった?」

陸「ばあちゃんが、ドアの鍵を触っていたのは、不気味やったけどね。でも、やはり、火を使わせるのは、怖いな。あと、お茶も、急須のふたを開けて、お茶葉を入れて、湯を入れず、他のことして、やっと、湯を入れて、ふたを探して、コップにお茶を入れられるみたいなね。時間がかかってたわ。

ばあちゃん、大変やけど、無理せずに、ロングのショートステイとか、考えよ😆また、来るわね👋🏻👋🏻👋🏻」

帰って行った😮‍💨😮‍💨😮‍💨

 

母、機嫌良く、テレビを見ている。

そのうちに、洗濯と、お弁当作り。

私と、主人の朝ご飯、準備・・・(つづく)

 

 

 

 ・・・このような彼女のブログを読んでいると、仕事を持ちながら他の家族と力を合わせて両親の介護をするかたわら、これだけの内容のブログを毎日投稿する “意志の強さ・継続力・体力” にまず敬服しました。

 

 

 

 その一方で、このブログで、同じ環境にある多くの人たちは間違いなく励まされ、介護のやり方や介護しながらの暮らし方のヒントを与えられているのではないかと思いました。

 

 

 ブログに書かれた読者コメントを読めば、同じ環境にある方からの励ましや「ごちゃん」さんへの同意・賛意がたくさん見られます。

 

 

 さらに、これから家族を介護をする可能性があるかも・・・と考えている人にとっては、実際介護をしている家庭の見学に行っているような感覚にもなり、いろいろ勉強になるのではと思いました。

 

 

 

 ちなみに「ごちゃん」さんのブログには、「読者になります!」と登録したフォロワーが687名もいます。そして毎日の投稿に、200~300件の「いいね」が付いています。これが多い数字なのかどうかは知りませんが、少なくともそれだけの読者に何らかの力を与え、励ましを与えているということです。


 

 私のブログなど足元にも及ばない読者の数です。

 

 

 

 今まで読んできた彼女のブログには、“私” の他に、ご両親、ご主人、娘さん夫婦、息子さんが登場します。それに、他の家族や施設の職員さん、お医者さん等が脇役として登場します。

 

 

 

 私がこのブログが好きになり、いろいろ教えられる一番の理由は、この家族の温かさです。

 

 

 それぞれ仕事や自分たちの暮しがありながら、両親の介護に力を合わせる中で、イライラしながらも、腹を立てながらも知恵と時間を出し合って・・・両親を含むみんなの暮しをなんとか成り立たせている姿です。

 

 

 

 そして、この家族の温かさの源(みなもと)は、両親がまだお元気で、自分たちがまだ幼かった頃、あるいは若かった頃の温かく楽しかった家、そこで見てきた子どもや孫のために一生懸命働き、自分たちに不自由な思いをさせまいと尽くしてくれた両親の姿だ・・・ということがしっかり伝わってきます。

 

 

 

 しかもその風景が、じつに淡々と書かれています。日頃、両親の回りで起きている出来事から、何も引かず、何も加えず、何も飾らず、その様子がただ率直で平易な文章に置き換えられているだけなのです。

 

 

 

 だからこそ、この家族の温かさがスーッと私を含む多くの読者に届くのでしょう。

 

 

両親の介護日記』というシンプルなブログタイトルと同じように・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで、4月8日の朝日新聞のコラム「ひととき」に、『きょうもクスッと』という投稿が掲載されていた。 

 

 

( 2024年4月8日付け朝日新聞コラム「ひととき」)

 

 

 

 転記しましょう。

 

 ・・・パーキンソン病で要介護4の83歳の父は、近頃ちょっと面白くなっていて、クスッと笑える話が聞けます。

 

 例えば、「ベッドの足元に忍者がいる」と言う父に、私が「伊賀? 甲賀?」と尋ねると父は「伊賀」と返答。先日も、父が「今日はきいたなぁ」と言うので、「お酒飲んでないよ」と私が言うと、父は「酒も飲まずにきいたのか」と。私もすかさず、「安上がりでラッキー!」と話しかけました。

 

 見えないはずの人が見えたり、自分の思っていることが否定されたり。思うように体が動かないし、きっと本当はすごいストレスだろうと想像できます。不安も大きいだろうに、昭和世代のプライドで今日も父は威張っています。

 

 そんな父を日々支えてくれる姉夫婦やヘルパーさんたちには頭が下がります。この人たちがいなければ、きっと私は父の話をクスッと笑えず、自分のイライラを誰かにぶつけていたかもしれないと思うとゾッとします。

 

 父のお世話は大変ですが、私も今まで親に計り知れないほど迷惑をかけてきたはずです。たくさんの人の力を借りながら、まだもう少し、一緒にクスッと笑えたらいいなぁと思うこのごろです。

 

 愛知県豊川市 向井ゆかり 地方公務員 53歳

 

 

 

 このコラムの最後のくだりを読みながら、私は60歳から約6年間勤務した高齢者施設での思い出を投稿した6年前のブログを思い出していた。

 

 

( 2018年3月21日投稿「年老いた母親からの『手紙~親愛なる子供たちへ~』を再び」。枠内をクリックすれば開いてお読みいただけます。)

 

 

 

 

 

 このブログの中で、その手紙の概要を私は次のように書いている。

 

 「年老いた母親と思われる ”私” が、自分の愛する子供たちに、これからさらに衰えていく自分が心配だろうけど、もうしばらく付き添って欲しいと、子供たちを育ててきた頃の様子に重ねて、語りかけている・・・」

 

 

 

 私は6年にわたる高齢者施設での勤務の中で、次のような経験を何回かした。

 

 

 施設の入所者やデイサービス等のご利用者の気持ちが落ち着いていて、穏やかな時の表情を見ていた時のことだ。

 

 

 認知症の方々は、おそらく症状の影響でうまく伝えられずに、もどかしい時間が多いにもかかわらず、この手紙を書いた年老いた母親と同じように、 

 

 

 ”これからさらに衰えていく自分が心配だろうけど、もうしばらく付き添って欲しい・・・” 

 

 

 と、子どもたちに伝えよう、訴えようと思っておられるのだろうな・・・と。

 

 

 

 

 

 

 これからも「ごちゃん」さんの家は、忙しいバタバタした日々が続くと思いますが、ご家族が両親と一緒に楽しい元気な毎日をお過ごしになることを願っています。

 

 

 

 そのことが、私を含む多くの読者、とりわけ家族や親しい人の介護をしている方々を励まし、温かい気持ちにさせ、そしてホッと一息つく時間を与えてくれることにつながっていきます。これからも「ごちゃん」さんの投稿を楽しみにしております。

 

 

 次回の「文字友」は以前も紹介しましたが、幼い頃や少年時代の思い出を、自筆の素晴らしい絵で表現し、同じ世代の私たちに何とも言えない懐かしさと癒しを与えてくれる、私よりひとつ年下の「山のカケス」さんです。

 

 

 

 

 ・・・近くの公園の桜。月曜夜からの風雨にも負けず、まだしっかり咲いていてくれた。この柏市立の公園は、40年近く前に転居してきた頃は小さな牧場だった。

 

 

 

 

 

(注)新聞記事と桜以外の写真はネットよりお借りしました。ありがとうございました。