トマトダイエットなるものを毎日やっていると数日前に書いた。トマトダイエットも毎日”丸かじり”となると飽きる。また、トマトを使った料理というのは、日本人とくにボクには、なかなか馴染めない。精々がトマトミートソースで、これをパスタにまぶして喰らう。でもパスタはダイエットの敵である。それ以外には、サラダはあるがバリエーションは限られるし、生で原形を残しているのが気に入らない。
この夏、20株も植えたから、狂ったようになるのである。毎週のように都会に住まう娘の家族に送っているのだが、最近顔が紅くなってきたと笑う。我が菜園は、トマトだけでないのである、茄子・キュウリ・ピーマン・オクラ・インゲン・枝豆とこれでもかと追い討ちをかけるように食えと言ってくる。キュウリは、Qちゃん漬けにすることで保存が利くし、茄子は浅漬け・米糠漬けになる。豆類は熟させれば保存ができる。でも夏野菜は、生りすぎると処分に困る。
だから、トマトを植えるときに、ツレに言ったんだ、
「こんなに沢山は要らないんじゃないかい。きっと処理できないよ。」と、
すると
「送ってやれば、孫が喜ぶわよ、娘たちが世話になっている、ご近所さんに食べて貰えば・・」と。
ただ、このほかにも、ゴーヤや瓜の類が山と生るのである。カタウリ・冬瓜・カボチャは、冬至まで持つだろう。トマト・ピーマン・ゴーヤ・オクラの山をどうするかである。
そんなとき長女が婿を伴って現われた。5日間ほど滞在すると言うのである。この婿は、アメリカ人で名前をJという、彼らはホワイト・ベジタリアン(White-vegetarian) なのである。レッドミート(牛、豚、羊などの獣肉)を徹頭徹尾避けて、ただホワイトミート(鳥肉、魚介類)を摂るのが許されている。だが、彼らは、魚介類だけしか食さない。もう七年もそうしていると言うのだ。こんなに美味しいものが溢れている世の中で、肉を食べないなんて、ずいぶん損しているような気もするが、彼らのライフスタイルだから、当方は、関知しない。
ボクの菜園を見たJの第一声がいい、
「おとうーさん、これスバラシイ。みんなオーガニックでーすね。これは、ワタシのユメでした」
190センチの長身の大男である。夏野菜を食べつくすというのである。どう処理するか、見ものである。滞在三日目だったろうか、「菜園の夏野菜を使った料理に腕を振るいたい」という。すぐさま、街のスーパーに行って、幾種類ものスパイスを仕入れてきたようだった。チリパウダー、クミン、生しょうが, 生にんにく,粗挽き黒胡椒、ローリエ、各種のビネガーなどなど。ほかにも、パルメザンチーズ、ナチュラルチーズ、サワークリームなども。
トマトをミキサーにかけ、レッドキャベツや、菜園から採った野菜のほとんどを刻んで入れた、豆の類もささげに枝豆などである。大きな鍋一杯になった。これに惜しげもなく、ビールを一缶に赤ワインを入れた。ほかにもウースターソースにケッチャップを、更に醤油も隠し味だと。結局なんでもありの料理である。ときどきスプーンで掬(すく)っては、味見をしている。30分は鍋の傍を離れなかった。
そうやってできたのは、辛いがスパイスのたっぷり効いた、南欧かスペインの料理だった。夏の暑さを吹き飛ばすのには十分である。スープ皿に盛り、サワークリームとパルメザンチーズ、スライスチーズなどを載せ、クラッカーで掬うように食べた。汗が噴き出た。みんなが、「美味い、美味い」というものだから、Jはことさら満足そうだった。一週間ぐらいは持ちそうである。
ゴーヤのピクルス漬けもほとんど平らげた、よほど好きと見える。だから、お土産に、段ボール2箱の夏野菜ともぎたてのゴーヤを12本持たせてやった。