kashi-heigoの随筆風ブログ-火山1


 もう6,7年前になるだろうか、ボクは娘夫婦と中南米のコスタリカに遊んだことがある。コスタリカは日本と同じ火山国である。今でも噴煙を上げている火山も多い。温泉リゾートもあるというので、そこに行った。アレナ火山という有名な山がある。コスタリカの最大の都市の首都サンホセからバスに揺られて、そのふもとに行った。この山、姿形が富士に似ている。温泉好きにはたまらない。ジャングル中の天然温泉である。過ぎ去れば、一昔に近い過去である、いや遠い昔か。想い出は、大事にとっておきたいものだ。


kashi-heigoの随筆風ブログ-温泉


 さて、現実は薄日でも射してくれればいいのだが、ここ北陸地方は、朝から曇天であった。日が照らないかぎり、雪こそないが冷気が差し込む。その上に冷気の下に寒気がもぐりこむ。年の暮も月半ば過ぎるとなにかと心せわしいが、こういう時こそ、心を失わず、ゆったり、自らを見つめることが大事だと、わけのわからないこと言って、妻と90歳になる義母を連れて近くの温泉へ行くことにした。車を駆って、海辺の村里から30分もしないうちに、目的地の温泉に着いた。浜辺にはまだ雪こそないが、山里近いこの温泉地のあたりは、すっかり雪景色である。宣伝文句に曰く。「清流黒部川のせせらぎ響く、山あいのいっぷく宿」という。源泉掛け流しの温泉である。客の多くは、近隣の80歳前後のお年寄りばかりである。海山の新鮮な豪華な膳と入浴がセットになって、大人三人分が合わせて大枚の半分とは有難い。


kashi-heigoの随筆風ブログ-猿


 10年前の夏休みに、娘婿を初めて連れてこの温泉に来たことがある。彼はアメリカ人であるが、すっかり温泉を気にいってくれた。往路たまたま猿の軍団が歓迎してくれて、大いに気を良くしたのだった。このあたりは去年のことだが、冬に熊が出没したと大騒ぎだった。かって、村落の山側に薪や柴を取り、落ち葉を集める林があった。その里山がなくなり境界線が失せて、猿も熊もどこまでが、縄張りなのか分からなくなったに違いない。猿の出現までは愛嬌で許すも、熊や猪はご免被りたい。そんなことを考えながら、露天風呂を楽しんだ。30畳敷きの露天の岩風呂に、贅沢にも客はボクが一人である。

 また、現実から離れて、6,7年前のコスタリカの温泉の話に戻ろう。コスタリカの温泉は、婿が富山の温泉が気に入って、同じような温泉が世界の他にもあると調べて、中南米に案内すると勧めてきたので、日本から僕ら夫婦が定年を前に行ったのだった。ニューヨークの娘のところで落ち合って向かった。

kashi-heigoの随筆風ブログ-水着女性


 コスタリカ特有の熱帯雨林で野生の動物の啼き声がする、野鳥のさえずりが絶え間ない中に、天然の温泉があった。川を利用した大小8つの温水プールやジャグジーが整備されたタバコン温泉である。若いアメリカ人観光客が、ピチピチのギャルと言ったらボクは興が乗る。それが思い思いにビキニ姿で、温泉をプールに泳いでいる。温泉にはバーがたくさんあるのだ。温泉に浸かりながら、好きな酒を飲む。ビール、ウイスキー、ワイン、さながら極楽だった。泳いで疲れたら、身体を埋める木製ベッドがある。酒池肉林とは、酒を池に満たし、肉を林にみたてた様である。ぜいたくの限りを尽くした盛大な宴会だ、ボクも目をつむって脳裏にしっかりと描いた。



 あんまり酒が旨いので、腹一杯飲んだ。今少し飲み足りない。飲み過ぎたのか、息が苦しい。足の先から頭のてっぺんまで、酒を帯びてしまった。

 いやはや、すんでのところで、溺れるところだった。いつに間にか、露天風呂の中であまりの気持ちのよさに眠ってしまったらしい。夢は長くは続かない。ほんの一瞬だから、楽しく得難い幸せなのかもしれない。現実は、そんなに甘くはないのだ。年の暮れである、雪が露天の風呂に舞ってきて溶ける。少し、天気が怪しくなってきた。クリスマスあたりは、大雪になるかもしれない。                2011.12.21