家内に頼まれて、町の魚屋に行った。夏も魚はあるが、暑さが鮮度を奪う、その点秋から魚の旨い季節が始まる。店頭には、豊富な魚の種類。いわし、さば、さんま、イカ、カマス、ひらめ・・・。

 マグロのような大きな魚もいいが、小魚は煮ても焼いても美味い。手間が面倒だが、刺身にすると抜群である。草フグなども刺身にして食したほどだ。食べ方に生食、焼く、煮る、和える、炊く・蒸すというのが調理の五法だという。なぜ、ここにてんぷらとかフライなどの<揚げる>が出てこないのだろうか。まあ、このほかに保存を念頭におけば、干物、漬ける、燻すもあろう。さば、さんま、にしんなど米ぬかで漬けると発酵食品となり安上がりで美味いものである。大漁の時の小魚など新鮮なうちの干物がいいし、冬に向かって、鰤、鱒、鮭と言わず、えぼ鯛、小アジ、はたはたのかぶら寿司も旨い。

君知る哉 活きが命の 魚でも 旨いご膳は 調理ひとつ



 そうだ、富山湾の魚といえば、ぶりである。このぶり成長とともに呼び名が変わる出世魚の代表格である。富山では、ツバイソ→フクラギ→ハマチ→ガンド→ブリなどと呼び名が変わる。重さ10kg前後になって初めて「ブリ」と呼ぶ。ちなみに、東京近郊では、ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと呼称し、関西に行くとモジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリというらしい。関西は、関東より区切りの段階が細やかだから面白い。

 そのブリの弟たちはと店頭のショーケースを見ると活きのいいツバイソが、4尾で200円である。それでも25センチのサイズはある、この間、6尾200円でもう少し小振りであった。さすがに、刺身にして食べるには、少し脂がほしい。酢味噌和え、レモンマリネがいいか。たっぷり玉ねぎを入れた南蛮漬け、いや三枚に下ろして、ムニエルはどうだろうか。新鮮だから、単純に塩焼きも悪くない。

ブリはムリ 揃ってゴール 辛いそう(ツバイソ) レモンマリネか 南蛮漬け 




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 しかし、何と言っても秋は、秋刀魚であろう。脂がのって、これに勝る美味はなかろうとさえ思う。庭のスダチは少し時期が早いが、これに大根おろしを添えて、食するのがいい。僕は、以前のブログで、天然の魚資源も有限で、これを無限に取り続けていいものか。人間が漁って採るのは、自然からの収奪ではと、疑問を呈した。

 サンマは生息の範囲が広く、イワシやサバに比べて資源的に安定的だと言う。ツバイソは、ブリに育てるための間引である。富山湾は、暖かい対馬海流と冷たい日本海固有の深層水で満たされ、暖流系と冷水系の両方の魚が棲める環境だという。僕の住む辺りの海も黒部川が富山湾にプランクトンを運び、それを狙って魚が集まる。黒部川など多くの河川が、森からの栄養を海底に送り込むため、多くの魚が繁殖できる豊かな漁場になる条件がそろっているのだという。もっともらしい理由をつけて、今宵は天然のブリの弟分のツバイソと秋刀魚に、舌鼓を打つとしよう。

ふるさとの 秋の夕餉は 鮭でなく 焼いた秋刀魚と 鰤の弟 


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                                                     2011.9.14