昨夜の台風は、大変な爪痕を残して、日本海に抜けて行った。たまたま、私の住んでいる北陸地方は、それほど大きな被害はなかった。それでも、野外に設えられた大きなスピーカーから、豪雨の注意が呼びかけられていた。今日は、よくてもまたすぐに違う台風がやって来るかもしれない。こに住むかぎり、台風は我が意を受けて避けて通ってはくれない。

 少年の頃、台風が怖かった。収穫を目前にした稲田が、上からローラを引いたように、絨毯にされるのだから。これに豪雨にあたると、稲に芽が出て、一年の労苦が無駄になった。夜は、停電が起こる、川の氾濫、堤防の決壊などの心配に、海は大しけになる。子供心にも、自然災害の怖さは、身にしみていた。

 今年は、東日本の震災は、大地震、大津波に加え、原発事故を誘発し目を覆うばかりの惨状を呈した。地獄絵図そのもの。まさに、日本は災害列島と化した。未だ、東日本は、復旧、復興の目途が立たない。テレビ、新聞で、現地の状況が毎日報告される。悲しさと恐ろしさを通り越して、大自然の脅威に、身がすくんでしまう。この大地震・大津波というのは、1000年おきに繰り返しているという。人間の非力に泣けるばかりである。



 昔から、怖いもの順にたとえる言葉に、「地震、雷、火事、親父」がある。いくら、昔の「親父」の怒った形相が怖いと言ったって、今回の地震に比べれば、屁でもない。語呂がいいから、並べたのだろうと思って、調べてみると、案の定「親父」は「大山嵐」のことで、台風を指すようだ。火事だって、台風に乗った火事や地震の際の火事など、対策をあやまてば、被害も相当大きくなる。大津波に加え、これに原発事故という災害の可能性が出て来た。日本は、弓状の腹を突かれると弱い列島である。その列島の弓の弧に54基の原子力発電所がある。「地震、雷、火事、親父」どころではない、「原発、地震、津波、雷、火事、台風」と置き換えねばなるまい。

 日本列島いずこにありても、災禍から身を守って生きられようか。狭い日本、いつ起こるか分からない災厄を、避けて通れないなら、せめて来るべく惨禍に向きあって、その対処の手をなんとか考えねばなるまい。 2011.9.5