散歩のお気に入りのコースは、海岸から1キロ山側に上って歩く。北アルプスの山々を眺め、やがて右か左に直角に折れて海岸に平行して、田園の中を進む。また海に向かって、歩を進めるというものだ。季節のいろいろな変化が、日を追って見えて来る。朝がた雨の匂いがしたが、雨は早朝だけで、すぐに上がったようだ。小川は満々と水を湛えているが、濁りはない。
ここは、黒部川が作った扇状地である。花崗岩質の透水性のいい砂礫層でできている。そこを通って流れる地下水は、名水と評価が高い。以前、海洋深層水のことをブログ<ナチュラルミネラルウオーター>に書いた。この地は川の水、地下水に恵まれている。目を海にやる。この海の水面の色合いも日によって違う。潮の流れが、太陽、風や雨の影響を受けるからだろうか。
水のことなどいろいろ考えながら、堤防沿いに村里のとば口を見た。ブログの<いずこにあっても難は逃れじ>でおなじみの、いつもの三人組みが目に入った。漁師のK彦と大工のT男と農業をやっているS子である。
朝談義 三人寄れば 拡散す 宙に浮くか 現世の話
何の話題か尋ねるとS子がK彦を指差して、
「この人がヨ、世界中で水が足りんようになっておると騒ぐがア。あんた、そんな、ダラ(馬鹿)なことって、あろうか。海の水を見ろって言うとるがア。こんなに、水があるがにのウ」
K彦は漁師だけあって、なかなか水についても研究熱心である。
「月から見たら、地球って、水色できれいって言うけど、あのほとんどは海水ながヨ。水のほんの2、3%が淡水で、それも南極とか北極の氷だとか地下水や。地球の水の量を2リットルのペットボトルで言うたら、人間が使えるのは、目薬のほんの一摘分やっちゃ」
こうなると、K彦の独壇場である。
「オーストラリアの干ばつのニュース見たけエ。アメリカのカルフォルニアでも砂漠化が進んどると。中国だってやゾ、あの黄河が、干上がっているそうや」と。
彼の国は 経済進み 水枯れる あまたの人よ 如何して生きん
ようやくというか辛うじて、S子も言葉を継いだ。
「中国なんか、急激に都市化が進んだり、農業用水に黄河から引いたりしたからやワ。私もテレビで観たよ。地球温暖化かどうか分からんけど、チベットの氷の山が溶けて、なくなっておるとネ。チベットの水って、黄河、揚子江、メコン川に水を流しておる水の巨大なタンクやもんネ」と。
T男も加わった。
「それだったら、水資源の心配のない日本って、いいね。いくらでも水の使い放題だから」
K彦、ここぞとばかり本領発揮して、知識を披歴する。
「なーん、あんた、それはお門違いというもんや。日本は、いっぱい水を輸入しておるがやゾ。ペットボトルの水なんて、大したことはないがア。食料を生産するのに使う水が問題なんよ。トーモロコシを1キロ作るのに水2トン、小麦だと4トン要るがや。豚とか牛は、穀物を餌にするから、豚1キロの肉のために10トン、牛だと100トンも水が要るがや。それだけの水を輸入するのと同じ理屈や」
肉・穀物 ウオータと違う 水輸入 誰の責任 地球砂漠化
S子も同調して、心配を煽る。
「アメリカ、オーストラリアが水不足で、作物がよけい作れんとこへ、持ってきて、中国が、爆食したら、日本に回ってくる食糧が、なくなるがいネ。平吾さん、あんた、好い知恵ないがかエ」
そこで、黙ってみんなの談義を聞いていた僕にお鉢が回ってきた。何か言わなければなくなった。
「あまり知恵がないちゃ、食糧自給率が40%の日本で、自らを守るには、ベジタリアンになることやナ。たまには、魚や卵は許されよう。要は、空いている土地を活用して、家庭菜園をやって、たんぱく質は、豆からとったらいい。僕は実践している」と日頃の自説を展開した。
菜園は ベジタリアンの 意思あらば 魚許して マメに菜っ葉を
2011.8.23