先日のブログ<イボのトゲ>で、キュウリは、夏野菜の主役になれないと書いた。トマトに華があるし、茄子に存在感がある。少々収穫が多くても、ご近所に配れば、いくらか貰ってくれる。ところが、キュウリは、そうはいかない。数日前の日曜日、とつぜん妻の従兄弟が、軽トラックに乗ってやってきた。3キロほど離れたところに住み、サラリーマンの傍ら農業をやっている。
「平吾さん、都会から引っ越しをして、ここにずっと住むがやってねエ。俺ア、進ぜるもの何もないからア、家の畑で採れた野菜をちょっこし持ってきたがぁ」と言って、段ボールを二つ、玄関先に置いた行った。私は、自分も菜園をやっているとは言えなかった。妻の用意したコーヒーを急いで飲んで、他に用事があると言って、早々に立ち去ったのである。段ボールの中に、トマト、ナス、ピーマン、カボチャ、枝豆などが入っていた。驚いたのはもう一つの段ボール箱だ。キュウリが、山ほど入っている。形は好いのだが、いずれもヘチマサイズとは言わないまでも、やや育ちすぎである。ここ数日、天気が良かったこともあり、わが菜園でも10本ばかり収穫したばかりであった。
菜の園 山ほど宝 産みたまふ
始末に困って、途方に暮れていたところに、今度は従姉が、娘の運転で大きなライトバンに乗って、現れた。
「あんた、引っ越しをして来たのを知って、早くに顔をだそうと思っていたがやけど、私、車の運転できないもんやから、今日になったがぁ。あんた、堪忍してぇ。これ、さっき作ったお赤飯、なーん、お昼に間に合うわんだねぇ。あとで食べて。」と。この人の妹の方は、やはりブログの<陸に上がった漁師>に登場した。一人っ子だった私が、姉のように慕う従姉妹たちである。キュウリは要らないかと聞くと、自分も畑で作っていて、十分だという。僕は、自分の畑で採れたのもあるし、沢山あって困ったと言った。
バチあたり 余りて捨てる 人でなし
ここからが、彼女の出番である。
「あんた、この時節、勿体ないにか。天の恵みやっそウ。粗末にしたら罰が当たるちゃ。私、いいこと教えてあげる。『キュウちゃん漬け』のことやけど・・」
「大きな鍋にお湯を沸かして、沸騰したら洗っておいたキュウリが全部浸かるように入れるがぁ。入れ終わってから2分で火を止めて、そのままやぞ一晩冷すがぁ。絶対に、鍋の蓋っちゃ締めては、ダメながよ。朝になったら、キュウリをザルにあげて、もういっぺん鍋に新しい水を入れて沸騰させて、再びキュウリを入れて、お湯が完全に冷めるまで置くがよ。そこでキュウリをザルにあげ、輪切りにするがぁ。大きなキュウリは、半分に切ってから輪切りにしたら、それでいいがよ。それを布巾に包んで水分が無くなるまで何回も搾るがぁ。ここが一番肝心のとこながやっちゃ。」
肝心は 粗熱とりと 水抜きと
「あとで、分量などレシピ書いておくけどウ、漬け汁の材料ってねぇ、しょうゆ、みりん、酢、砂糖がやけど、これを応分に入れ、好みに合わせてショウガの千切りや唐辛子を適量鍋に入れて、沸騰させるがやっそウ。」
さ行の みりん加えて シソを抜く
(○砂糖、×塩、○酢、○醤油、×味噌
「これにきざんだキュウリを全部入れて、2分経ったら火を止めるがよ、長く煮たらダメながぁ。そのまま鍋ごと自然に冷えるまで置くがよ。冷えたら保存容器に移して出来上がりや。そうしたら、あんた、パリパリ感のある歯応えのある漬物ができるっちゃ。一カ月やそこいら持つよ。」
歯ざわりの パリパリ感が 汝が命
数日して、試しにヘチマのようになったキュウリで作ってみた。これは、美味なるかな。もし、ご存じなければ、ぜひお勧めしたい。 2011.7.28