どうも僕です。今年度から奄美は小児科常勤となっています。
玉ちゃん先生です。
せっかく玉ちゃん先生がいらっしゃるので小児の勉強会もしてみようとのことで毎週月曜(予定)に勉強会がはじまりました。
時間もないので、教科書をよむというよりは臨床症例をあげて、あーだこーだ言い合う会にしたとおもっています。
本日は1回目は『小児のタバコの誤食』です。
鹿児島生協病院でも当直のときにであったことはありますが、奄美でも小児は当直帯によくきますし、飲食店でも分煙の意識はまだまだ低いので子供がタバコと接してしまう機会は都会よりは多い気がします。
乳幼児のタバコの対応は今、どのようになっているのでしょうか。
またどのように親に説明してあげればいいでしょうか。
まず結論から言うと
・無症状(~軽症)に胃洗浄の適応はない・・・・①
・服用後2時間経過観察・・・・・・②
はじめに:
・2歳以下において、タバコの誤食は中毒事例では非常に頻度が高い
・以前(玉ちゃん先生曰く30年くらい前)はニコチンは毒性が高いとしてほど全例に胃洗浄していたよう。
(たばこを親にやめさせるためにも胃洗浄をするような風潮があったとのこと・・・・・。)
・その後、摂取量に応じて胃洗浄の適応をきめるように変わってきた
・その後、過去の経験例では死亡例の報告がなく、転帰は良好であったため、侵襲を伴う胃洗浄を施行しない治療が提唱されるように
〇治療法の変遷〇
1988年 浜本 胃洗浄施行すべき(施行率85%)
1988年 Smolinske タバコ5本以下は胃洗浄なし
1989年 Drexhage 1時間経過観察
1994年 大西 胃洗浄なし
1995年 関 無症状は胃洗浄なし、3時間観察
1997年AACT/EAPCCT 「Position statements」(胃洗浄の適応制限)
1998年 山中 2cm以下や量が不明で、無症状は胃洗浄なし
(日本小児科学会指針)
1998年 Hulzebos 無症状は胃洗浄なし、4時間観察
1999年 千代 無症状は胃洗浄なし、2時間観察
(今日の小児科治療指針 12版)
:ニコチンの特徴
半減期は1時間と短い
急速かつ容易に吸収されるため15-30分で症状が出る
⇒
このデータは大切!
症状は服用してすぐにでるし2時間も経過をみたら悪化のピークは確実に確認できることがわかります。・・・・・・・・②
最多の症状は嘔吐
実臨床では約80%程度が無症状である
:どのくらいの服用したら危険なの?
そもそも
中毒量や致死量は血中濃度で証明されていない
中毒量や致死量の報告には根拠ない。
小児から血中濃度のデータを今後も集めることは困難であり、客観的な指標をもって胃洗浄は決めることはできない。
・申告量や推定量は不正確で、症状と一致しないことも多い。
・ニコチンの血中濃度を測定し得た症例でも、血中濃度は非常に低値であり推定よりも誤食量の少ない
(星野恭子、他:タバコ誤飲におけるニコチン、ニコチンの血中濃度について 日小児会誌100:1387-1391,1996)
・1998年の日本小児科学会指針では誤食量が2cm以下であれば胃洗浄を施行せずに経過観察を推奨しているが、銘柄によって2cmに含まれるニコチンの量も異なる
つまり
cm単位の推定をすることにあまり意味はない。
どのくらい摂取したから致死的になる、胃洗浄した方がいいといった摂取量に関しては、客観的指標はない。
またこんなデータもある。
●2001年から2008年のタバコの誤食症例357例の後方検討●
救急医は2001年からは胃洗浄を行っていない
小児科医は2006年から胃洗浄を行っていない
千代孝夫:家庭用品中毒のトピックス 救急医39:815-823、2015
好発年齢:5カ月~12カ月
無症状は85%転帰:経過観察の後に全例が帰宅し、経過良好だった
⇒
症状で胃洗浄を適応をきめていくしかないのですね。
無症状から軽症は経過観察でよいのでしょう。
再度まとめます
小児のたばこ誤食を診療するときは
・無症状(~軽症)に胃洗浄の適応はない
・服用後2時間経過観察
※症状が強い時は小児科の先生に相談
以上です。
当直でこのような子がきたら、親にも安心してもらえるように説明できたらなとおもいます
もちろんタバコを控えることは強くすすめますけどね