日下武史さんの追悼公演
『思い出を売る男』10日に無事千秋楽を終えました。
連日沢山のお客様にお越しいただき、
カンパニーが予定していたよりも多くの回数のカーテンコールを毎公演頂戴しました。
これは、作品へのバウズと共に
お客様が
日下武史さんという偉大な俳優さんへの様々な想いを
カーテンコールを通して昇華していく時間なのではないかと思いながら
自由劇場の客席を見つめ
毎カーテンコールを過ごしていました。
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お稽古場から千秋楽まで
演出家がずっとこだわって私たちに追求したものは
いかに【捨てられるか】ということでした。
『思い出を売る男』は
浅利先生や日下武史さんの恩師である
加藤道夫さんの書かれた台本。
役者がこうやりたいああやりたいと思うことを【捨てて】
作品の中に自分を沈めて
そして
役としてその作品の言葉を語ること。
ここをああやりたいこうやりたいと考えると演技がパターン化してしまい
役者の個性が出ない。
個々の魅力を出すために
作品の魅力を伝える為には
この役をこのセリフをこう喋ろうああやろうとする余計な気持ちを捨てなさい。
ありのままの自分で、かつ
役として存在し
その場の心からの交流で相手と話すこと。
そしてその難しさ。捨てられなさに
出演者全員で挑み続けた日々でした。
全出演者![音譜](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/038.gif)
![音譜](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/038.gif)
日下武史は【捨てていた】よ
と稽古場でなんども演出家はおっしゃいました。
日下武史さんという偉大な俳優さんは
今公演冒頭の
坂本里咲さんのご挨拶にもありました様に
『演劇とは文学の立体化である』という浅利演出を見事に体現した、私たちの永遠なるお手本となる憧れの存在でした。
日下さまには遠く及ばないけれど、
この追悼公演、どうか日下さまが喜んでくださるように、
日下さまや浅利先生が大切にしていらっしゃる加藤道夫先生の教えとその台本を
お客様に少しでも届けられるようにと
願ってやまなかった公演でした。
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恋人ジェニィ役での出演でした。
ジェニィは
GIの青年の思い出の中に出てくる
祖国に残してきた恋人。
台詞も歌も、全て英語のみの役。
英語の発音、褒めていただけること多くて嬉しかったです。
恋人の幻想の中に出てくる役なので
彼の幸福のイメージそのものになれるよう
そして恋人ジョージとの会話があくまで幻想の中であり、日常のリアルな会話になりすぎないよう、
かつ自然なやり取りになるように
相手役の五十嵐春くんと色々話し合い
バランスを取りながら演じました![ひらめき電球](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/089.gif)
![ひらめき電球](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/089.gif)
戦後の日本。
裏通りのコンクリート壁が透けて
祖国アメリカにいるジェニィが登場するシーンは
『思い出を売る男』の中でも特に好きなシーンとお客様が言ってくださる事も多い
印象的な場面。
毎公演、緊張しながら
スタンバイしていましたが
出演できてとても嬉しかったです。
沢山お世話になった
相手役の五十嵐春くんと。
実は近年のジェニィ役が着ていた
白や青のワンピースもフィッティングしていたのですが
劇場入りの初日
「初演の衣装を一度着てみてもらえないかな?」と装置・衣装担当の土屋茂昭さんに提案され
この赤のワンピースを着てみたら
土屋さんのイメージに合ったようで
25年ぶりにこの衣装を着ることになりました![おねがい](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/005.png)
![おねがい](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/005.png)
初演時の衣装が
25年間もきちんと保存されているってすごいことですよね!
赤いチェックのワンピースとカチューシャ、とてもお気に入りでした![ドキドキ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif)
![ドキドキ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif)
千秋楽に
演出家・浅利慶太先生を囲んで。
浅利先生とは2年ぶりにご一緒しました。
演劇こそわが命というかの如く情熱的に稽古に取り組まれる姿を
目の前でまた拝見することができ
様々なご指導をいただく中で
自分自信の仕事に取り組む在り方についても、深く考えさせられる日々でした。
また2年ぶりに自由劇場の舞台に立てたこともとても感慨深いものでした。
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2年前には
私は自由劇場で『李香蘭』に出演していました。
あの頃は日下さまも青井陽治先生も生きておられ観に来てくださいました。
2年の間に導いてくださる沢山の方々が天国に向かわれました。
隣の春劇場も秋劇場も無くなりました。
だけど
あれから2年経った千秋楽の日も
劇場は変わらず凛としていました。
これからも
この劇場が建った当初の理念や空気感を
この劇場がいつまでも保っていてくれたらと願います。
はる