生まつきのハンデとひどい家庭環境でどんな人間ができるのかがわかる良書「女帝小池百合子」書評

みなさんの周りにいないだろうか？
なんでも自分の手柄にしてしまう人間。
言ったことや起きた出来事を
微妙にすりかえて
すべて自分の有利にもっていき
小さな嘘がいつのまにか大きな嘘に
なっていると気づいた時には
既成事実化してとりかえしのつかない
ことにしてしまう人間を。

これ、ぜひ読んでほしいのです。
「女帝小池百合子」。
まるで映画をみているかのよう。

政治に興味ない人も
小池百合子氏に興味ない人も
都民でない人もぜひ読んでほしい
めちゃくちゃおもしろい本です。

政治の問題の提言の書という部分はさておき
こうした人間がどうできるのか
非常によくわかる。

下記はあくまで本書に書かれていることを
ベースに紹介しているので
下記はすべて「事実」なのかはわからないが
本書にはこんなことが書かれている。

小池百合子氏は生まれながらにして
アザがあった。
女性にもかかわらず顔にアザがあった。
もうこれだけで大ハンデだ。
まして今みたいな時代ではなく
昔の時代ならなおのこと。
顔にアザがあるような女は
傷物だといわんばかりの
扱いや差別やいじめを受けてしまうような
ハンデを背負って生まれてきた。

にもかかわらず小池百合子氏は
そのハンデにもめげず
うまいこと交友関係や学校でもやっていく。
いやそのハンデがあったからこそ
そうやってしか生きていくことが
できなかったのではないか。

うまく立ち回り、みんなにいい顔し
できるだけ「権力者」とつながり
自分の有利なような環境を作っていく。
生まれながらのアザでいじめられないために。

しかも「不幸」なことに父親がむちゃくちゃだ。
むちゃくちゃというよりまるで
小池百合子氏そのものだ。

口からでまかせ、でかいことをいい、
有力な日本の政治家と
知り合いだといいふらし
有力なアラブ関係の政治家と
知り合いだといいふらし
はったりと嘘で人生を切り開こうとするが
当然うまくいかず
一か八かで選挙に出るも落選する。

そんなめちゃくちゃな父親に利用し
もしくは利用され
芦屋に生まれながらお金持ちではないために
なんとかお金持ちの子供たちとは違って
一歩抜きん出ようと
中高大一貫学校なのに
周囲にいわず大学は別のところに進学。
英語通訳を目指すもそこで
抜きんでることはかなわず
アラブ関係に強いをうりにする
はちゃめちゃな父親に利用され
もしくは利用し
エジプト・カイロに留学する。
本当はヨーロッパやアメリカがよかったのに。

しかしお金がそんなにあるわけではなく
留学といっても勉強はほとんどせず。
アラビア語もろくにできなかったが
はちゃめちゃな父親がコネで
カイロ大学に入れる。
しかしまるでアラビア語がわからないので
日本人でアラビア語ができた
留学生と結婚するがうまくいかず
結局ろくに勉強しないまま
エジプトをあとにすることになる。

しかし小池氏はメディアを使って
「カイロ大学首席卒業の女性」
という物珍しいプロフィールで注目され
キャリアをステップアップしていき
テレビキャスター
そして政治家へと転身。
その後も政局をみながら
どこにつけば有利なのか？
どういう戦いをすれば
自分に有利に働くか？
どう見せればイメージがよくなるか？
を徹底して行い
ついには大臣、都知事にまで成り上がるのだ。

本書で書かれていることが
すべて事実なのかはわからないが
綿密な取材をもとにしたノンフィクションだという。
小池氏本人に取材を申し込んでも
断られたと書かれているので
本書の内容は「事実」に近いのではないか。
もしそうでなければ小池氏本人から
訴えられるはずだ。

もし事実ならほんとおそろしいというか
ある意味ではすごいというか。

女性なのに顔にアザがあるというハンデ。
めちゃくちゃな父親。
金持ちでもないのに芦屋にいた悲劇。
そうした逆境、ハンデを乗り越えて
自分がいきていくために
世の中を渡り歩いてこなければならなかった。

本書の前半部分、小池百合子氏の
若かりし頃の話を読むと同情してしまう。

悪気があったわけではないのだろう。
たださまざまなハンデを乗り越えて
いじめられず生き抜くために仕方がなかった。
めちゃめちゃな父親のせいで
仕方がなかった。

しかし若気の至りのちょっとした「嘘」で
男性もメディアもアホのごとく
事実も精査せずちやほやし
取り上げてくれたことに味をしめ
それによって「日陰」の存在の自分に
スポットライトが浴びることがうれしくて
どんどん調子にのっていった。

政界後の渡り鳥っぷりは
本書を読むとまあひどい。
しかし小池氏にしてみれば
自分が生き抜くために当然のことを
したまでではなかったか。

バカな男たちは簡単にだませる。
バカなメディアは何をエサにすれば
取り上げてくれるかわかるのでちょろい。
そして国民は英語の
キャッチフレーズでも使えば
簡単にだませる。

「だまされた」政治家や男性や
メディアにしたところで
小池百合子氏を利用したかっただけだ。
元キャスターの女性の政治家というだけで
利用価値はあるからこそ
節操ない渡り鳥だろうが
利用されつつ利用してきたのだ。

そして結局、大臣までなったものの
たいした実績をあげられなかったため
ポストが回ってこなくなり
そこで目をつけたのが都知事だった。

そしてアホなおっさん候補しかいない、
女性をバカにするような候補しかいない
都知事選で勝利してしまったのだ。

確かに本書を読むと小池百合子氏はひどい。
でも生きていくために仕方がなかったのだ。
利用はしたが利用もさせたのだから
お互い様だよねって気持ちでしか
ないのではないか。

それにしてもすごい。
生まれながらの逆境やコンプレックスをバネに
世渡り上手の「嘘」を学び
男性やメディアを巧みに扱い
都合のいい時に女性を使えば
ここまでのし上がれるのは見事という他ない。

でも純粋に思うのだ。
それで都知事になって何がしたいんだろうか？
それで総理大臣になって何がしたいんだろうか？
スポットライトを浴びて注目されたいのなら
政治である必要はまったくない。

しかし権力者や政治家や
男性やメディアは利用したからといって
それはお互い様なのだろうが
利用された「下のもの」は
たまったものではない。

国民、都民、都職員。

小池氏を応援してきた築地女将の会は
完全に裏切られた形となった。
でもこの本書を読めば
「まあそういう人だよね」って
ことになるんだけど
そんなの本書が出るまでは
一般国民は知る由もない。

まさかここまでとは。

小池氏のバイタリティや上昇志向や
権力志向はある意味素晴らしい。
しかし付き合わされる国民、都民は
たまったものではない。

でも仕方がないのだ。
彼女は生きるためにそうしてきた。
ハンデがあったから仕方がなかった。
父親をみて育ったから仕方がなかった。

きっと彼女は何も悪いとは思っていない。
どうとでも言い逃れできる。

でもそれが本当に「かわいそうだな」
と思ってしまう。

アザがあったから仕方ないよね。
あんな父親がいたから仕方ないよね。
芦屋の金持ちに負けないために仕方ないよね。

こうして都合よく自分に有利に
何事もすすめてしまい
事実をうまくすりかえる天才というべき
「モンスター」が生み出される。

すごいです。
政治抜きにして都知事選抜きにしても
この本は読んだ方がいい。

みなさんの周りにも1人はいるだろう人への
理解や対処法にも役立つはず。

絶対読むべき良書です。