性別に特有の病は、「重篤さ」とは異なる次元で、
他の部位の病にはない、固有の感情を引き起こします。
例えば、女性なら子宮がん、卵巣がん、乳がんの場合、
配偶者・パートナーの方のなかには、
異性である患者さんの思いを推し測ることができずに、
もどかしい思いを抱いている人も多いと思います。
乳がん患者は「11人に1人」というデータがあります。
ということは、その家族や友人の方々は、
さらにその何倍も存在していることになります。
これまでの私は、
乳房を切り取ったことを
誰にも知られたくなくて、
そして、
病気になったことを忘れてしまいたくて、
乳がんの闘病経験は「なかったこと」として
過ごしていました。
しかし、告知から10年を経て
元気に生きている今、
それは、あの日々を乗り越えた自分や、
支えてくれた人々の思いまでも、
「なかったこと」にする行為だと思い至るようになりました。
過去の経験を、知恵と希望に昇華させ、
必要な人々に伝えること。
それは、私自身の救済でもあります。
そして今、彷徨い、助けを求めている人に
光に満ちたメッセージを贈ることが、
当時、直接的にも間接的にも、
私を助けてくださった大勢の方々への、
私にできる最大のご恩返しにもなるかもしれないと
考えるようになりました。
もちろん、万人に届くメッセージなどないことは
分かっています。
私は、ただ一人・あのときの私に、
今の私がかけられる言葉を探すつもりで、
ここに綴っていきたいと思います。
