水蒸気の大気は少なくとも38億年前には沸騰した海に移行し、鉄分の多い赤い海だったと考えられます。大陸から隔離されたオーストラリアに恐竜時代の森が残っているように、大洋から隔離された黒海の海底に硫化水素の海が広がっているのは、初期のシアノバクテリアが硫化水素から光合成をしていたこととも一致します。

 また大気の大部分を占める窒素は水蒸気よりは重いけれども、金星の大気にはほとんど含まれないから、現在の海に少ない鉄分やアンモニアやカリウムが、植物の生育に必要な窒素リン酸カリが除かれ、大気中の窒素濃度も高くなり、鉄分も酸化して沈殿したのでしょう。

 大気中の二酸化炭素が全て酸素に還元されたとしても、20%に過ぎないので、地球の大気には元々二酸化炭素が少なく、火山活動に由来すると考えれば、温室効果が働かずに海が形成された事実とも一致するでしょう。もっとも二酸化炭素は水蒸気より重いので、水蒸気が雨となって降り注いだ時に、海に溶け込んだとも考えられます。いずれにしても地球表面の炭素のほとんどは生命が保持しているので、生命活動に利用されたことは確実です。