DNAの二重螺旋構造が解明された20世紀には、生命が自然発生する確率は10のマイナス90乗とまで言われました。例えるなら19世紀の作曲家がバッハの平均律曲集を発見したようなもので、ショパンは前奏曲しか書けませんでした。
しかし何事もいきなり高い完成度に到達するわけではなく、実際にたんぱく質を合成するのはRNAで、DNAは保存に特化した図書館のようなものです。例えるなら熱狂的なファンが観賞用のDVDや写真集の他に、保存用のDVDや写真集も買うようなものです。
遺伝子はDNAもRNAも4進法で構成され、1つ1つの遺伝子には意味はありません。遺伝子は3つ1組で1つのアミノ酸を指定し、UGUならシステイン、GAAならグルタミン酸という具合で、延々とアミノ酸の配列が続くだけです。
ローマ帝国のエッセイストのプルタルコスは、食卓歓談集でニワトリが先と結論付けているので、偶然アミノ酸が集まって肉体のようになったところへ、デオキシリボ核酸が引き寄せられ、「へのへのもへじ」のように似姿が写し取られ、自己複製が始まったのかもしれません。
4週に渡って地球外生命の確率を考察してきましたが、生命の素材が生まれる可能性は高くとも、生命を育む地球のような惑星が生まれる可能性は低く、サマージャンボの1等に当選するよりも難しいのかもしれません。