1999年頃から「失われた10年」と呼ばれ始め、日本人の関心が現在から過去に向かいつつあり、紅白歌合戦でも昭和時代のヒット曲が歌われるようになりました。プロジェクトXの開始は停滞の結果かもしれませんが、当時の流行から失われた10年の原因がわかるかもしれません。

 例えば高度経済成長期に連載された「巨人の星」で、星一徹は帰国するオズマに、「思い出話しはじいさんになってからせい」と送り出します。また「やるだけのことはやっている」という宮崎からの手紙に、姉明子は「人のやらないことまでやりこんにちをきずいたのよ」と不安をいだきます。

 もっとも「ちびまる子ちゃん」の放送はバブル時代の真っ只中に開始しているので、昭和への郷愁が平成の停滞の遠因とは必ずしも言えません。むしろ「好循環」という前時代的な口癖に違和感を感じるし、専門外のことに関心を持つのも悪いことではありません。

 平成時代によく聞かれるようになった言葉に、「これで明日からもがんばれる」があります。人生の目的は稼いで消費することではないし、社会に適応することでもありません。日本人は十分に豊かになったにもかかわらず、人類が存在することに疑問を感じないようです。