平成の初めに政治改革論議が高まった時、よく聞かれたのは「聖人君子になれるわけじゃない」という逃げ口上でした。最近でも「森羅万象を知っているわけじゃない」と、答弁した首相がいました。

 しかし神になることは不可能でも、聖人君子くらいにはなれそうだし、それが本当の育ちの良さというものです。また森羅万象を知らないような人物に、一億人の生命財産を委ねるべきではありません。

 県会議員だった金丸信が国会議員への鞍替えを佐藤栄作総裁に相談すると、「君は政治家には向いていない」と言われました。また田中角栄は宮沢喜一のことを、「あれは官僚で政治家ではない」と酷評しました。

 もちろん二人とも権力を握り続けようとして、誰からも見放されましたが、先見の明だけはあったようです。その気になれば世の中はいくらでも良くできるのに、やろうとしないのは不思議です。