1か月前にBS朝日で今年も忠臣蔵が放送されていましたが、江戸時代の12月14日は旧暦なので年明けになります。当事者はすぐに世を去ったし、間接的な目撃者が様々な尾鰭を付けたので、多くの人々の英知が完成させた作品といえ、シェイクスピアも舌を巻くような構成の巧みさです。

 特に涙を誘うのは東海道中で、日野家御用人垣見五郎兵衛と偽 り宿泊していると、当の本人と鉢合わせになり一触即発になりますが、浅野家の家紋に気付くと全てを察し、こちらが偽物だと詫びて本物の通行手形まで渡す粋な計らいをするのは、エウリピデス顔負けの認知(anagnorisis  アナグノーリシス)ですね。

 もちろん古事記を読んだことのある人ならば、雄略天皇の一行が葛城山に登頂の折、一言主神の行列と鉢合わせになり一触即発になりますが、雄略天皇が正体に恐れおののき所持品を全て神に献上して、下山する伝説のパロディーだとすぐに気付くでしょう。ちなみに山田うどんのロゴが案山子なのも、古事記に由来すると考えられます。