翔さんの会社を出て、駅に戻るように歩くこと数分。
「ここだ……」
背の高いビルとビルの間に、その喫茶店はあった。
レトロと言えば聞こえはいいけど、意識していなければフツーに通り過ぎてしまう。
とっても古くて小さな建物。
少し重いドアを開けると、カランコロンとベルが鳴り
「いらっしゃい」
カウンターでカップを拭いていた男性が、オレに気づいてその手を止めた。
「こ、こんにちは……」
「オレンジジュース」
「えっ?」
「……なわけないか」
何にする?
「えっと……ジンジャーエール……じゃなくて
アイスコーヒーを」
「はいよ」
席に着く前にオーダーを取られ、ていうか、オレンジジュースってなんだろう。
制服は着てるけど、そんなに子どもっぽく見えたのかな?
ガランとした店内。
ゆったりと心地いい音楽が流れる中、オレは窓際の一番奥の席に腰を下ろした。
冬ならとっくに夕焼け色に染まる時間だけど、未だ夏の太陽は「帰りたくない」と粘っている。
「はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
氷少なめのアイスコーヒーのグラスをテーブルに置き、青いエプロンをした男性が目を細めてオレを見た。
「あの……なにか?」
「いや、大きくなったなぁと思ってさ」
「え?」
初めて来たはずなのに、まるでオレのことを知ってるような
そして、そんなオレもなぜかこの場所を知っているような
気の所為……だよね?
窓の外を眺めながら、オレの頭ん中は色んなことでいっぱいいっぱいだった。
つづく