姉さんの好きだった真っ白い百合の花を墓前に手向け、2人並んで手を合わせた。
短過ぎた姉さんの人生。
あんな男と出会わなければ
あんな男なんか好きにならなければ
もっと違う人生があったはずなのに
少なくとも俺なら、絶対姉さんを幸せにしたのに……
死ぬ間際、俺に雅紀を託した姉さんは笑っていた。
雅紀とこの先一緒にいられないのは寂しいけれど、決して後悔はしていない。
ただひたすら息子の幸せを、それだけを願っている。
青白く痩せた頬。
それでも姉さんは、最後まで強くて優しい「母親」の顔をしていた。
幸せの定義はひとつじゃない。
俺の思う幸せが、必ずしも姉さんの幸せとは限らないし
その反対も然り。
何をもって幸せと感じ
何をもって幸せと言うのか
それは、その人じゃなければわからないだろう。
なんて、そんなことを考えられるくらいには、俺も歳をとったってことだろうか。
ふと隣りに目をやると、俺と同じように手を合わせていた雅紀が
「…………なさい……ごめん、なさい……」
えっ?
今、なんて……
聞こえてきた声に耳を疑った。
「雅紀?」
思わず声をかけた俺。
そんな俺の声に反応するかのように、雅紀は両肩をビクリと震わせ
次の瞬間
「雅紀!!」
俺の見ている前で気を失った。
つづく