「いいわよねぇ、雅紀は」
母さんだって、たまには家事から解放されてホテルでゆ~っくり過ごしてみたいわ。
頬杖をつき、煎餅をパリパリ食べながら、母親がなんとも言えない表情でオレを見ている。
「そんなの……」
父さんに連れてってもらえばいいじゃん。
「別に、お父さんとじゃなくてもいいのよねぇ」
「えっ?」
「雅紀みたいに、仲良しの友達と一緒に行くのも
楽しそうじゃない」
「まあ……ね」
「仲良しの友達」と言われ、すぐに櫻井くんの顔が浮かんだ。
正確には「友達」じゃなくて「恋人」だけど(//∇//)
「ねぇ、雅紀ぃ」
その宿泊券、母さんに譲ってよ。
「えっ!?や、ヤダよ!!」
「どうせ貰い物なんでしょ?」
「それはそうだけど……」
でも、ダメなものはダメ!!
「ていうか、これから出掛ける息子に
そういうこと言う?」
「だってぇ、羨ましいんだもん」
「……だもん、て」
はぁぁぁ……
父さん、お願いだから今度母さんを温泉でも何処でもいいから連れてって下さい。
ピンポーン、ピンポーン
「あっ!!」
そうこうしてるうちに、玄関のチャイムが鳴った。
相手が誰なのか、確認しなくたってわかる。
「じゃあ、行ってくるね!」
「はいはい」
思う存分、楽しんでらっしゃい。
ひらひらと手を振る母親に見送られ、オレは用意していたリュックを肩に掛け、急いで玄関へと向かった。
つづく