心臓がバクバクする。
バクバクして、苦しくて
なのに、自分の部屋には帰りたくなくて
「どうしよう……」
気付くとオレは、昨日お世話になった動物病院の前にいた。
診療時間は既に終わっていて、入口の照明も消えている。
でも、建物の窓からは灯りが見えて
オレは思い切って急患用のブザーを押した。
「でも、ちょうど良かったよ。
一緒に食べてくれる人が来てくれて」
「なんか、すみません……」
いきなり……しかも時間外だったにも関わらず、コウ先生はオレを笑顔で迎えてくれた。
しかも、カレーを作り過ぎたからと、晩ご飯までご馳走になって……
他愛のない話しをしながら、二人でカレーを食べて
コーヒーを淹れてるコウ先生の傍で、オレは昨日拾った仔猫と遊んでいた。
「コイツ、すっかり元気になりましたね」
「でしょう?ミルクもいっぱい飲むんだよ」
順応性が高いのか、昨日来たばかりのくせに、コウ先生の足元に甘えるようにまとわりついたり
そうかと思えば、オレの傍に鳴きながら近寄ってきたり
「そうだ相葉くん、この子に名前つけてよ」
「えっ、」
オレがですか?
「うん。この子をここに連れてきてくれたのは
相葉くんだし、それに……」
名前がないと呼ぶ時不便でしょ?
「だから……ね、お願い」
え~っと……それじゃあ……
「チョコ……とか」
なんか、ちょこちょこ歩く姿がとっても可愛いから
「チョコちゃんか……うん、いいね」
今日からキミはチョコちゃんだよって、仔猫を抱き上げ優しく微笑んだコウ先生は
オレがここに来た理由を一切聞き出そうとはしなかった。
つづく