「うん……」
教室で宿題をしながら俺を待っていた雅紀は、ノートやペンケースをカバンにしまい椅子から立ち上がった。
「ねぇ、翔ちゃん……」
「ん、どうした?」
「え……あの……えっと……」
「ホラ、早くしないと
バス、行っちまうぞ」
「……うん、」
俺は口篭る雅紀の背中を押して校門を出た。
あれから一週間。
神山が雅紀の周りを彷徨くことはなくなった。
同じ学年だから、全く顔を合わせないというのは無理だけど
少なくとも、アイツが俺達の視界に入ってくることはなくなった。
あの男に俺が何を言ったのか
俺が何をしたのか
俺は雅紀に言わなかったし
雅紀も俺に聞かなかった。
聞かなかったというよりは、今みたいに聞けなかっただけなのかもしれないけど……
でも、大事なものを守るためなら、人は何だって出来るんだ。
大事なもの
大切な人
生まれて初めて見つけた守りたい存在。
「翔ちゃん?」
「あ、悪りぃ……じゃあ、帰るか」
「うん、」
雅紀
お前だけは誰にも渡さない。
つづく