上記の案内に連れられて、12月2日指定時間の5時より少し前に、御幸町御池上るのスペイン料理店「ラ・マーサ」のドアを開けると、さっと2階へ案内されました。まだまばらな店内で、男性がギターを弾きながらきれいな高音でフラメンコを歌っています。自由に席に着くと、さっとアルコールのメニューが出されます。ビールを注文してまもなくスペイン料理のおつまみがどんどん出され、いつの間にか店内は満員になっていました。ほろ酔い気分になった頃、階下にお集まり下さいと案内があって降りてゆくと、3坪ほどの狭い舞台に、きれいな衣装をつけたフラメンコダンサーが3人と、歌手とギタリストが二人。もっともダンサーのうちの一人は10歳ぐらいの少女、多分親子でのステージのようです。ソロが3回、群舞が一度、目の前、1メートルか2メートルで見るフラメンコはなかなかの迫力でした。それから50周年のセレモニーが始まりました。
いつもの店での仕事姿とは見違えるような盛装のご主人と奥さん。便せんに丁寧に書かれた最初のお客様の祝辞を神妙に聞いてはおられましたが、途中で「一枚飛ばしてます。」と奥さんが注意されるほどの余裕もありました。これも古なじみのよしみなのでしょうか。ご主人のお礼の挨拶も、50年前、25歳の開店当初「夜が来るのが怖いの」という流行歌のとおり、「夜が来るのが怖かった」(お客さんが来てくれるかどうか)とか「夫婦二人の仕事は大変、客の前で喧嘩もできん。」とユーモアあふれる本音続きでしんみりと笑わしていました。けれど地元の消防団、夷川の職人さん、京都新聞や市役所の職員さんなどいろんなお客に囲まれて続けてこられたのだそうです。
「ふじ吉」は麩屋町二条にある寿司、割烹のお店。最初のご縁は何だったのかちょっと記憶にないのですが、今では家族は勿論、事務所の宴会、ときには税理士仲間など気軽に立ち寄れるので、よく利用させてもらっています。一応、寿司、割烹なのですが、頼んでおけば、すっぽん、鯨、蟹などなんでも用意してくれる便利なお店。そういえば顧問先の社長が鯨を食べようと、連れていってくれたのが最初のような気がします。
話は全然変わりますが、割烹料理とは物の本によると、目の肥えた客が板前にいろいろ注文を出し、板前がそれに応えてそれぞれの客に目の前で調理するのをいうそうです。ところが最近は目や舌の肥えた客が減り、客をカウンターの前に並ばせて一斉に次々と料理を出してゆく、割烹とはとても言えない店がはびこっていると、物の本は嘆いていました。
そこへ行くと「ふじ吉」はまさに割烹料理です。「おまかせ」で頼みながら、突然天ぷらが食べたくなって、注文するとさっと出てきます。一度など、家内が祇園祭のときの家のおばんざい、「はもをなすびではさんでたいたん、出来る。」と聞くと、「それ面白いな」とすぐ出てきて、今では定番商品の一つになっています。
ところで一口に50周年記念といいますが、一代で50周年を祝えるのは非常に珍しいケースです。まず若くしてそれなりの実力がなければ独立できません。半世紀の間には景気の変動も激しく、お客様もどんどん入れ替わって行きます。そして何より本人と奥さんが、心身共に健康でなければなりません。この三拍子を50年維持するのは稀有なことです。本当におめでとうございます。と思っていると宴たけなわの二階席で、某京都市会議員の先生の、ふじ吉の半世紀を読み込んだ相撲甚句が始まりました。なかなかのいいお声で長々と謡いこみます。目出度い席の相撲甚句、きちんと宴が引き締まりました。