小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
Z(靴屋)       九頭雄 ザックス
Y(Zの妻)       八千代 ヤスミン
A(ZとYの息子)    悪久太  アーク

C(村の守護霊)   千太郎  クリス
老人・師匠(守護霊・Cの先生)

 

 

今回のお話は、Z目線の話です。

 

第49章と第50章の後日談ですが、

読み直さなくても、たぶん大丈夫だと思います。

 

一応、貼っておきますね↓

 

 

 

 

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない殻(2)

 

 

発光する力を持つ老人に、変な魂の話を持ち出され、

オレは苦笑いした。

 

「光をとり戻せとか、魂が光で出来てるとか。

 なんだか、よくわからないですよ。

 人間は普通、発光なんてしませんし。

 あなたのように、私が光るわけ、ないじゃないですか。

 

 この暗闇にいるのは、きっと何かの間違いです。

 どうぞあなたがこの殻をぱかーんと割ってください。

 神様なんでしょう?」

 

「神ではない。光を選んだ者のひとりじゃ。

 まあ、ワシの話はどうだっていい。

 自分で作った殻が不要なら、自分で壊しなさい。

 ワシには壊せんのじゃ、ひとのものは」

 

「壊せなかったら・・・?」

 

「永遠にここにいることになるの。ではワシは帰る」

 

「永遠?!い、いやです。一人にしないでください」

 

老人は一度背を向けたのを元に戻し、言った。

「一度だけ、チャンスをやろう。殻の正体を知りなさい」

 

「お、お願いします」

 

老人は杖を高く振り上げた。

 

 

気がつくと、オレは、生前の村の中に立っていた。

だが、顔見知りに話しかけても返事をしてくれないし、

こっちの体をすり抜けていく。

幽霊になったんだな、とぼんやり考えた。

 

少し遠くに、自分と同じ幽霊が後ろ向きで立っている。

よく見たら、オレが殺した妻のYだった。

あいつが幽霊になってオレの前に現れ、

驚いたせいでこっちが心臓まひになったんだ。

くそ、あの女め。どうしてくれようか。

 

だが、どうだろう。生前はYは小ぎれいで儚げだったのに、

今の幽霊の後ろ姿は、まるでホラー映画の女のようだ。

ワンピースは水浸しで、水を滴らせているし、

髪を振り乱した状態で、両手がゆるく下がっている。

気持ち悪すぎる。傍に寄りたくない。

あんなのを見せられたら、誰だって心臓が止まるはずだ。

オレは村の樹の影に隠れ、Yから見えないようにした。

 

Yは、誰かとしゃべっているようだった。

Y以外は生身の人間たちで、簡素な祭壇の前にいる。

数珠を持った霊媒師みたいな女が、Yの語る話に頷いて、

他の人間たちに何かを説明している。通訳している風だ。

 

その霊媒師と話をしているうちに、Yの姿がだんだんと

生きていたころの質素な風貌に変わっていった。

ワンピースも乾き、髪も自然と整い、さらさらになる。

どういう仕組みなんだろうか?

 

 

(続く)