登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
百輪村の人V(元SE・パートタイマ) 美々 ビビD(大工) 大吾 デイビッドE(村長・教諭) 栄一 エデンK(理容師・Eの妻) 加恵 カーラ草切村の人草切マーケット・店長 (No Name)α(パートタイマ・気弱) 在子 アルマδ(パートタイマ・賛同) 丑実 グロリアγ(パートタイマ・強気) 寅代 デイジー
今回は、Vの話の続編です。
Vの前回の話はこちらです。
(が、読まなくても大丈夫です)↓
では、どうぞ。↓
見えないみかた(1)
私は、百輪村のV。
隣村の草切マーケットで、
今日もレジのパートをしています。
素敵な職場・・・って言いたいところだけど、
私がいつも墓穴を掘っちゃうから、
周囲から浮いちゃってます。
この間も、同じパートの人たちの間で、
休みがちのα(アルファ)さんをかばったら、
γ(ガンマ)さんとδ(デルタ)さんに
シカトされちゃったり。
だから、あまり口出ししないほうが
いいんだろうな、ってわかってはいるんですよ。
昼休み中、従業員控室でサンドイッチを食べてたら、
聞きたくなくても聞こえてくるγさんの大きな声。
「夫の親の介護が大変で。
寝たきりなんだけど、文句が多くてね。
ぜんぶ聞いてあげると、こっちが疲れちゃう。
家に帰っても、すぐ用事で呼ばれて、休めないのよ」
「あなた、すごく頑張ってると思う。
偉いわ。しんどいわよね」
などと声をかけるδさん。
ああ、もやる。言いたい。言っちゃえ。
「あのぉ、γさん、介護って、
プロに任せられないんですか?」
2人はぎょっとして、私を見ました。
γさんがしかめ面をして言います。
「あなた、よく平気で人の話に割り込めるわね。
そういうところよ、空気が読めないのって」
「いや、聞こえちゃったし。γさんが大変そうだから」
「プロに任せるって簡単に言うけど、お金もかかるのよ」
「自分の休息に金払ってるって思えばどうですか?」
「そんなに簡単に割り切れるもんじゃないのよ。
嫁としてやるべきことはやらないと。
親戚とかご近所の目とか、いろいろあるのよ」
「γさんがそこまでする理由って何ですか?」
「私が頑張ればそれだけ、みんなが助かるじゃないのよ。
私だけじゃないわ。
みんなが頑張ってこそ、この世は回るのよ」
「・・・頑張ってる自分に酔ってるんですか?」
「もう!あんた、嫌い。黙ってて」
「はい」
私は再びサンドイッチを食べることにしました。
γさんとδさんは、すごく小さな声でコソコソしてます。
でも、わりと聞こえちゃったりするんですよね。
「あの子って、ほんと、冷たいわよね。
うちの親をプロに任せろなんて、よく言えるわ」
「まあまあ、まだ若いからわかんないのよ」
「ああいうのはね、年取ってからもああよ。
変人は変人のままなのよ」
サンドイッチの味がわからなくなったので、
パック入りのジュースで、流し込みました。
あーあ、また余計なこと、言っちゃった。
人生で何回、人に「冷たい」って言われるんだか。
人のことなんかほっといて黙ってた方がいいのに、
ってわかってるんですけどね・・・。
午後、レジを打ってたら、百輪村の大工のDさんが、
ふらっと、私のとこの列にやってきました。
「いらっしゃいませ」
私はかごをひきよせて、商品を次々と取り出します。
Dさんが気さくに話しかけてきました。
「Vって、バーコード通すの早いなあ。
ところで、輸入チーズの特売日っていつ?」
あまりしゃべりたくない気分だったので、
簡潔に答えました。
「・・・金曜と、5のつく日です」
「あれ?元気ないのか?」
「別に。・・・1710円です」
「V。もし悩みがあるなら、だれかに相談しろよ」
「はあ」
なんだか、もう、会話をする気にもなれません。
お金をいただいて、レジの引出しを収めました。
「はい、次の方、どうぞ」
「そうとんがるなって。じゃあな」
「とんがってませんっ」
「おーこわ」
Dさんは、肩をすくめて帰っていきました。
(続く)
