小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
百輪村の人
V(元SE・パートタイマ) 美々 ビビ
D(大工)         大吾  デイビッド
E(村長・教諭)     栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)    加恵  カーラ   
 
草切村の人
草切マーケット・店長  (No Name)
α(パートタイマ・気弱) 在子  アルマ
δ(パートタイマ・賛同) 丑実  グロリア
γ(パートタイマ・強気) 寅代  デイジー

 

 

 

見えないみかた(5)

 

 

 

私の不倫疑惑の噂を流したγさんが、

こんどは噂の種になりました。

 

控室で勝手に耳に入って来る情報によると、

介護疲れが高じて、寝たきりのご家族を

見えない所で叩いてたらしいです。

 

それが旦那さんにばれて家族会議になって、

寝たきりの人は介護施設に入ることになったとか。

 

その後、γさんは、パートの仕事から去りました。

 

本当のことは知りません。

噂なんて、信じる方がバカを見ますから。

 

 

その後、2か月ほど経って、

パートから帰ろうとしたときに、

偶然γさんにバッタリ出会いました。

 

いつも目の吊り上がってたγさんは、
なにやらおだやかな女性になってて、
最初は見間違いかと思いましたが、
「Vさん、久しぶり」と挨拶されました。

 

また何か言われるんじゃないかと身構えていると、
向こうは淡々とした様子で、
近況報告を聞くことになりました。
 
「・・・私ね、離婚したのよ」
 
「え、そうなんですか」
 
「介護が全部、私の役目で、きつかったの。
 だから、いつもイライラしてて。
 あなたにも八つ当たりしてたの。ごめんなさいね」
 
「いえ・・・」
彼女の言動がすごくソフトになっているので、
不思議な気分になりました。
 
「あなたの言う通り、ギリギリになる前に
 プロにお任せしてたら良かったかもしれないわ」
 
「誰にも相談できなかったんですか?」
 
「一応、身内にも”大変なの”って言ってたのよ。
  でも、“助かるよ”とか、“偉いね”とか・・・
 そう言われるたびに、
 変にやる気が出ちゃったりもしたし、
 ああ、私が全部やるしかないんだなって諦めてた。
 
 プロに頼るのは、”逃げ”だとすら思ってたし。
 でも、違う見方があるって、あなたから学んだかも」
 
「・・・今は、どうしてるんですか?」
 
「親族のいない別の村で一人暮らししてて、
 今日はたまたま、こっちに来たの」
 
「一人暮らしですか。大変ですね」
 
「ううん、ちっとも。
 もう頑張らないって決めてるの。
 今ね、フラダンスやってるのよ」
 
「へー、いいじゃないですか」
 
「ふふ、いいでしょ。じゃあね」
 
γさんは、楽しそうに手を振って、去っていきました。
 
 
空気の読めない私だけれど、
思ったことをすぐに言っちゃう私だけれど、
それでちょっと変わることって
あるの・・・かも・・・?
 
放った一石が、せめて、良い形で広がりますように。

 

 

 

ending music

 

Le Jardin - Kevin Kern