小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
発明家        (No name)
D(大工)       大吾  デイビッド
L(揚げ物屋)      蘭子  ルイーズ
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない稼働(2)

 

村の発明家が作ったロボは、

みんなで順番に使うことになりました。

 

ある日、理容室のKの番が来ました。

 

Kはワクワクしながら「よろしくね。えい」と、

ロボのスタートボタンを押します。

 

指先からデータを入力したロボは、

普段のKと同じように接客をします。

 

椅子に座っていたお客さんの髪を、

右手に持ったハサミで

チョキチョキと切り始めました。

 

「えー、すごいわー。私のやり方通りね」

と、Kが感激していると、

ロボの左手からポロリと櫛が落ちました。

 

あわてんぼうのKの癖を

そのままロボが真似をしたのです。

 

「うん。・・・私のやり方通りね」

と、Kはちょっと複雑な気分になりました。

 

いつものKは、お客さんがいないとき、

理容室の奥にいる息子Rの世話をします。

 

なので、仕事が一段落したロボも

店から中に入っていき、

「ジュニア~、絵本を読もうか~」

と言いながら、1歳のRに近づきました。

 

積み木をしていたRはびっくりして

ロボから逃げ始めます。

 

ロボは「待って、ジュニア~、ママよ~」

と、Kの声音で追いかけるのですが、

Rは「わーん、ママじゃない~」

と大泣きしながらリビングを走ります。

 

Kはあわててロボの後ろから近づき、

すぐさまスイッチを切りました。

 

ロボは、ぴたりと直立不動になって止まりました。

 

KはRを抱っこしてなだめながら、

「真似されてもうまく行かないことってあるのね・・・」

と、ため息をつきました。

 

 

Kの所ではアクシデントめいたものがありましたが、

おおむねロボは村人たちに好評でした。

 

けれども、たった一人、

試そうとしない人物がいました。

それは、村長のEでした。

 

「私の仕事は、私がやりますから」

と、責任感のあるEは、頑なに拒みます。

 

Dは、そんなEの肩をポンと叩いて、

「なあ、E。

 お前が一番この村で働いてるんだ。

 一日くらい、仕事をロボに任せたって

 罰は当たらないぞ?」

と優し気な目を向けるので、Eは諦めました。

 

「・・・しかたない。一回だけですよ」

 

 

(続く)