小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
発明家        (No name)
D(大工)       大吾  デイビッド
L(揚げ物屋)      蘭子  ルイーズ
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない稼働(4)

 

 

Eの村長の仕事は、村をぐるっとめぐって、
何か不備がないか、変わったことがないかを
パトロールするのです。
 
何か困ったことがあれば、このタイミングで、
村民が近づいてきてEに話しかけてくるので、
Eはその場で相談に乗ったり、
次の村民会議の議題にするかを決めます。
 
ロボもまたそのように動きました。
面白がって、EとDもロボの後をついていきます。
 
途中でロボの足が止まりました。
目線の先には、Eの妻Kが
Rを載せたベビーカーを押しながら
肉屋で買い物をしていました。
 
買い物の終わったKは、
ロボとその後ろにいたEとDに気がつき、
手を振りながら「E、今日はカレーにするね」
と言って、笑いかけました。
 
Eは「うん、わかった」と手を振ると、
ロボもタイミングよく真似して
「うん、わかった」と仲良くハモりました。
 
Kはふふっと笑って、家に戻っていきました。
 
するとロボは、手に持っていたノートに
立ったまま、何かを書き始めます。
 
Dが「ん?何を書いてるんだ?」と覗き込むと、
『Kのカレーは最高だ。食べられるオレは幸せ者だ』
と書いていました。
 
Eは顔じゅう真っ赤にして、
「私の”推し活”まで真似するな!」と怒りました。
 
肩を震わせ笑いをかみ殺しているDと別れ、
ロボとEは家に戻りました。
 
EはKの作ったカレーを堪能しましたが、
食事をしないロボは家に帰ってからも
次回の全村民会議についての定義書をまとめ、
生徒たち一人一人の様子をノートに書きつけ、
三者面談の資料も作成し、
明日の授業の準備をし、テストの問題を作りました。
 
「ありがとう。もう十分だよ」
内容を確認したEが声を掛けましたが、
デスクワークの終えたロボは椅子から離れ、
今度は外に出て、高速の縄跳びをしたり
何度も走り込みをして筋トレをします。
 
まさかそこまでするとは思わず、Eは驚きましたが、
(筋トレの真似事が終わったら
また家に戻って来るだろう、
そのときにスイッチを切ればいい)
と考えました。
 
ところが、しばらくして家の外から
「ボンッ!ガシャーン!」
と、けたたましい音が響きます。
 
Eが急いで音のする方へ走っていくと、
ロボが頭から煙をもくもく出して倒れていました。
 
手足はバタバタ、口からは
「ヒュ~ヒュ~」と小さな笛のような音。
 
Eは慌ててロボを抱え、発明家の所へ運びます。
 
調べてもらうと、Eの真似をしたロボは、
思考回路と身体をフル稼働させすぎて、
オーバーヒート。
もう修復不能でした。
 
「こんなことで壊れてしまうなんて繊細だなあ」
と、Eがロボを見下ろしていると、
発明家が半泣きでつぶやきました。
「私は村長にセーフティ回路を取り付けたいですよ」
 
 
こうして百輪村に、
また新たな伝説が生まれました。

 

 

 

ending music

 

 
The Typewriter - Leroy Anderson