自分で作ったソロジャーナル

「とある魔導士の研修日記」です。

 

ビエントの6日目です。

 

 

主人公:ビエント(17)

人と一緒にいるのが好き。
人の気持ちによく気づく。
思い立ったら動く。
日焼けした健康的な肌に、癖のある黒い短髪。
明るい茶色の瞳。背はやや高め、細身。
笑うと目尻が下がって親しみやすい顔。

 

 

 

  6日目。朝。

 

 

朝の実習室で、ビエントは先生に鍵を渡した。

「先生、この鍵、なぜか僕の鞄に入ってました。

 それで、昨日、物置を開けちゃったんです。

 で、見つけた道具なんですが……」

「ああ、あれか」

先生は少し考えた。

「よく見つけたな。あれは昔の研修用具だよ」

「やっぱり……」

 

ビエントが続きを聞こうとすると、先生は棚から一枚の紙を取り出した。

「実は、あの道具は一人では使わないんだ」

「え?」

「二人で魔力を合わせるための道具だ」

ビエントは目を丸くした。

「二人で……」

 

そこへカイがやってきた。

「おはようございます、先生。今日の日直です」

「カイ。ちょうどよかった」

先生が二人を見る。

「君たち、昨日も組んでいたな」

「はい」

「じゃあ、ちょっと試してみるか?」

 

先生が古い道具を机の上に置いた。

二人で向かい合い、それぞれ魔力を流す。

すると、道具の中央に小さな光が灯った。

「……ついた」

ビエントが呟く。

カイも驚いた顔をしている。

先生は満足そうに頷いた。

「やっぱりな」

 

そして、道具についていた古い革紐を外した。

先端には、小さな金属の輪が二つついている。

「これは昔、二人一組の研修生が使っていたものらしい」

先生は二つの輪を、それぞれビエントとカイに渡した。

 

「研修期間中、持っていていい」

ビエントは自分の手の中の輪を見る。

「……これ、もらっていいんですか?」

「ははは。返すのは研修が終わってからでいい」

カイが隣から言った。

「じゃあ、なくさないようにしないとな」

「うん」

ビエントは輪を大事にしまった。

 

昨日まで、ただの古い道具だと思っていたもの。

それが今日は、二人で使う道具になった。

なんだか少し、不思議だった。

 

 

 

 

  6日目。昼。

 

午後の実習が始まった。

今日の課題は、二人一組で魔力を合わせ、一定の速度で魔法陣を動かすというものだった。

 

「昨日の道具と、ちょっと似てるな」

カイが言う。

「うん。今度はもっと難しそう」

ビエントは魔法陣を見る。

 

先生の合図で、二人が同時に魔力を流した。

魔法陣が動き始める。

 

最初は順調だった。

ところが、途中で急に速度が上がった。

「えっ!」

ビエントが慌てる。

「止める?」

「まだ!」

カイが叫んだ。

「このまま合わせよう!」

ビエントはカイの魔力の流れを感じ取った。

 

昨日の古い道具で、二人の魔力を合わせたときと同じ感覚。

「……いける!」

二人で息を合わせる。

魔法陣は勢いよく走ったあと、ぴたりと停止した。

 

「成功!」

先生の声が飛んできた。

ビエントとカイは顔を見合わせた。

「やったな」

「うん!」

 

そのとき、実習室の窓から風が入ってきた。

外に咲いていた白いモクレンが揺れる。

花びらが一枚、ふわりと飛んできて、ビエントの机の上に落ちた。

「モクレンだ」

カイが拾い上げる。

「きれいだな」

 

ビエントも頷いた。

「……なんか、今日の実習にぴったりかも」

「どうして?」

「二人で合わせないと、うまくいかなかったから。

 この花も、花びらが重なっててきれいだよね」

 

カイは少し照れたように笑った。

「じゃあ、これ、もらっていい?」

「うん」

カイは甘く香る花びらを、そっとノートにはさんだ。

 

 

 

  6日目。夜。

 

ビエントが部屋に戻ると、机の上に小さな紙が置かれていた。

「明日の朝、時間があったら裏庭に来てください」

名前は書いていない。

「……誰だろう?」

ビエントは首をかしげた。

 

しばらく考えていると、窓の外から声がした。

「ビエント!」

窓から見下ろすと、カイが立っていて、手招きしている。

 

ビエントは寮の外に出て、カイの所へ行った。

「ほら、今日、すごいよ」

カイが指さした先を見る。

夜空に、いつもよりたくさんの星が出ていた。

「きれい……」

二人でしばらく黙ったまま空を眺めた。

 

「そういえば」

カイが言った。

「明日から、実習の組み合わせが変わるらしい」

 

「え?」

「先生が言ってた。何人か入れ替えるって」

ビエントは少し驚いた。

「そっか……」

 

せっかくカイと慣れてきたのに。

そんな気持ちが、ほんの少し胸をよぎった。

するとカイが言った。

「でも、また組めるかもしれないだろ」

「……うん」

ビエントは笑った。

 

そのとき、遠くから鳥の声が聞こえた。

森から街の方へ、一羽の鳥が飛んでいく。

「フクロウかな?」

「たぶん」

二人はその姿を見送った。

 

明日は、今日とは少し違う一日になる。

 

でも、それも悪くない。

ビエントはそう思いながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

・・・続きます。