自分で作ったソロジャーナル
「とある魔導士の研修日記」です。
ビエントの6日目です。
主人公:ビエント(17)
6日目。朝。
朝の実習室で、ビエントは先生に鍵を渡した。
「先生、この鍵、なぜか僕の鞄に入ってました。
それで、昨日、物置を開けちゃったんです。
で、見つけた道具なんですが……」
「ああ、あれか」
先生は少し考えた。
「よく見つけたな。あれは昔の研修用具だよ」
「やっぱり……」
ビエントが続きを聞こうとすると、先生は棚から一枚の紙を取り出した。
「実は、あの道具は一人では使わないんだ」
「え?」
「二人で魔力を合わせるための道具だ」
ビエントは目を丸くした。
「二人で……」
そこへカイがやってきた。
「おはようございます、先生。今日の日直です」
「カイ。ちょうどよかった」
先生が二人を見る。
「君たち、昨日も組んでいたな」
「はい」
「じゃあ、ちょっと試してみるか?」
先生が古い道具を机の上に置いた。
二人で向かい合い、それぞれ魔力を流す。
すると、道具の中央に小さな光が灯った。
「……ついた」
ビエントが呟く。
カイも驚いた顔をしている。
先生は満足そうに頷いた。
「やっぱりな」
そして、道具についていた古い革紐を外した。
先端には、小さな金属の輪が二つついている。
「これは昔、二人一組の研修生が使っていたものらしい」
先生は二つの輪を、それぞれビエントとカイに渡した。
「研修期間中、持っていていい」
ビエントは自分の手の中の輪を見る。
「……これ、もらっていいんですか?」
「ははは。返すのは研修が終わってからでいい」
カイが隣から言った。
「じゃあ、なくさないようにしないとな」
「うん」
ビエントは輪を大事にしまった。
昨日まで、ただの古い道具だと思っていたもの。
それが今日は、二人で使う道具になった。
なんだか少し、不思議だった。
6日目。昼。
午後の実習が始まった。
今日の課題は、二人一組で魔力を合わせ、一定の速度で魔法陣を動かすというものだった。
「昨日の道具と、ちょっと似てるな」
カイが言う。
「うん。今度はもっと難しそう」
ビエントは魔法陣を見る。
先生の合図で、二人が同時に魔力を流した。
魔法陣が動き始める。
最初は順調だった。
ところが、途中で急に速度が上がった。
「えっ!」
ビエントが慌てる。
「止める?」
「まだ!」
カイが叫んだ。
「このまま合わせよう!」
ビエントはカイの魔力の流れを感じ取った。
昨日の古い道具で、二人の魔力を合わせたときと同じ感覚。
「……いける!」
二人で息を合わせる。
魔法陣は勢いよく走ったあと、ぴたりと停止した。
「成功!」
先生の声が飛んできた。
ビエントとカイは顔を見合わせた。
「やったな」
「うん!」
そのとき、実習室の窓から風が入ってきた。
外に咲いていた白いモクレンが揺れる。
花びらが一枚、ふわりと飛んできて、ビエントの机の上に落ちた。
「モクレンだ」
カイが拾い上げる。
「きれいだな」
ビエントも頷いた。
「……なんか、今日の実習にぴったりかも」
「どうして?」
「二人で合わせないと、うまくいかなかったから。
この花も、花びらが重なっててきれいだよね」
カイは少し照れたように笑った。
「じゃあ、これ、もらっていい?」
「うん」
カイは甘く香る花びらを、そっとノートにはさんだ。
6日目。夜。
ビエントが部屋に戻ると、机の上に小さな紙が置かれていた。
「明日の朝、時間があったら裏庭に来てください」
名前は書いていない。
「……誰だろう?」
ビエントは首をかしげた。
しばらく考えていると、窓の外から声がした。
「ビエント!」
窓から見下ろすと、カイが立っていて、手招きしている。
ビエントは寮の外に出て、カイの所へ行った。
「ほら、今日、すごいよ」
カイが指さした先を見る。
夜空に、いつもよりたくさんの星が出ていた。
「きれい……」
二人でしばらく黙ったまま空を眺めた。
「そういえば」
カイが言った。
「明日から、実習の組み合わせが変わるらしい」
「え?」
「先生が言ってた。何人か入れ替えるって」
ビエントは少し驚いた。
「そっか……」
せっかくカイと慣れてきたのに。
そんな気持ちが、ほんの少し胸をよぎった。
するとカイが言った。
「でも、また組めるかもしれないだろ」
「……うん」
ビエントは笑った。
そのとき、遠くから鳥の声が聞こえた。
森から街の方へ、一羽の鳥が飛んでいく。
「フクロウかな?」
「たぶん」
二人はその姿を見送った。
明日は、今日とは少し違う一日になる。
でも、それも悪くない。
ビエントはそう思いながら、眠りについた。
・・・続きます。