自分で作ったソロジャーナル
「とある魔導士の研修日記」。
トランプやサイコロの出目で
お話を作っていきます。
かなりのロングバージョンになりましたが、
一緒に楽しんでもらえると嬉しいです。
今回の研修生は、男の子です。
主人公:ビエント(17)
1日目、朝。
目覚ましが鳴る少し前に、ビエントは目を覚ました。
「……んー……」
カーテンの隙間から、夏の朝の光が差し込んでいる。
今日は研修初日。
楽しみな気持ちと、ちょっとの緊張。
でも、まずは朝ごはんだ。
ビエントが寮の食堂へ向かうと、入口のところで、一人の男子生徒が立ち止まっていた。
「どうしたの?」
声をかけると、男子生徒は困った顔をする。
「食堂って、こっちで合ってる? 昨日来たばかりで……」
「うん、合ってるよ。一緒に行こう」
「ありがとう」
二人で食堂に入る。
席を探していると、今度は別の研修生が手を振った。
「こっち空いてるよ!」
見ると、四人掛けのテーブルに二人分の席が空いている。
「じゃあ、ここいい?」
「もちろん」
結局、ビエントは、二人の知らない子と一緒に朝食を食べることになった。
最初はちょっと緊張していた三人だったが、
「どのクラス?」
「え、僕も三組!」
「ほんと? じゃあ午後の実技、一緒かも!」
などと話しているうちに、すっかり打ち解けた。
朝食を終えて外に出ると、校舎へ向かう道の脇に大きな樹木がある。
その木陰で、さっき知り合った男子が言った。
「なんか、ここに来てよかったかも」
「僕も」
ビエントは笑った。
そのとき、風が吹いて、木の葉がざあっと揺れた。
なんだか、この樹が、今日一日の始まりを見守ってくれているようだった。
1日目。昼。
午前の座学を終え、昼食も済ませたビエントは、教室で考えていた。
「魔法って、思ってたより難しいな……」
教科書をぱらぱらめくる。
そこには、魔力を一気に放出するのではなく、”異なる種類の魔力を適切な割合で混ぜ合わせる技法”について書かれていた。
「うーん……」
ビエントは首をひねる。
でも、嫌いではない。
むしろ、こういう「わからないことをわかるようにする」のは面白い。
すると、さっき朝食を一緒に食べた友達が声をかけてきた。
「ビエント、午後の実技、一緒に練習しない?」
「いいよ!」
即答してから、ビエントはふと思った。
――この研修、一週間あるんだよな。
だったら。
「ねえ、午後の実技だけじゃなくてさ。授業のあと、今日習ったところを一緒に復習しない?」
「いいね!」
そのときビエントの目に、教室の隅に置かれた古い魔法書が入った。
「……あれ、なんだろう?」
そこには、研修の教材には載っていない、少し古い魔法理論が書かれているようだった。
ビエントは手に取る。
「これ、ちょっと読んでみたいな」
午後の実技演習が始まった。
今日の課題は、手のひらに小さな光を作り、それを一定の大きさに保つという、基礎的な魔法だった。
「では、始めてください」
ビエントは手をかざす。
ぽっ。
淡い光が生まれた。
「よし……」
ところが、隣の友達の光が突然、ぼんっ!と大きく膨らんだ。
「うわっ!」
教室のあちこちから笑い声が起こる。
「ご、ごめん!」
「大丈夫、大丈夫!」
ビエントも笑った。
そのあと、教師が一人ずつ様子を見て回る。
ビエントのところで足を止めた。
「……少し変わった魔力の流れですね」
ビエントが古い魔法書を見せる。
教師は少し驚いた顔をした。
「それを読んだのですか」
「はい。ちょっと気になって」
教師は本の一節を指差した。
「午後の実技で試してみてもいいでしょう。ただし、無理はしないように」
「はい!」
ビエントは目を輝かせた。
教わった通りに魔力を流す。
すると――
手のひらの光が、今までよりもずっと安定した。
小さな光の球が、ふわりと浮かび上がる。
「……わあ」
本人が一番驚いている。
教師も頷いた。
「魔力の扱い方が一段深くなっていますね。午前中に習った理論と、その本の考え方をうまく組み合わせたようです」
「ほんとですか?」
ビエントは嬉しそうに笑った。
朝から新しい友達ができて、昼には知らなかった魔法の考え方を知った。
そして何より、「自分にも、まだ知らない力がある」ということが嬉しかった。
魔力が増えた。
でも、それ以上にビエントが得たものは、「もっと魔法を知りたい」という気持ちだった。
1日目。夜。
夕食を終えたビエントが寮の自室に戻ると、机の上に一通の封筒が置かれていた。
「……僕に?」
差出人を見る。
『魔法学校・研修担当室』
少し緊張しながら封を開ける。
そこには、今日の研修についての簡単な連絡と、明日の実技演習についての注意事項が書かれていた。
――と、そこまでは普通だった。
最後に、手書きの文字がある。
「本日の実技演習について、明日の朝、少し話をしたい」
「……え?」
ビエントは固まった。
え、僕、何かやった?
昼間の実技を思い返す。
古い魔法書。
教師に許可をもらって試した魔法。
うまくいったと思ったけど……。
「まさか、勝手に変な魔法を使ったと思われたとか?」
急に不安になってくる。
でも、手紙には「注意」も「問題」も書かれていない。
それどころか、最後に、
「心配する必要はありません」とある。
「……だったら最初からそう書いてよ!」
ビエントは思わず笑った。
それでも、明日の朝に呼ばれていることは気になる。
机の上に手紙を置いて、しばらく眺める。
そしてふと思った。
「今日、僕、けっこう頑張ったんだな」
朝は知らない人に声をかけた。
昼は授業で新しい魔法を試した。
友達もできた。
そして今、自分の魔法について先生から話をしたいと言われている。
まだ初日なのに、ずいぶんいろんなことが起きた。
ビエントは手紙を封筒に戻し、明日の朝すぐ取り出せるよう、鞄の上に置いた。
「よし、続きは明日」
そう思いながら、ビエントはベッドに入る。
寮の窓の外では、夜の樹木が風に揺れていた。
・・・続きます。