小説を連載しています。

「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。

 

 

 

(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。

 登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。

 前作を読まなくても大丈夫です。)

 

なんのこっちゃ?の方はこちらから→ 告知

             

「女子高」のまとめはこちら → 百輪女子高DAYS 目次 

「村」のまとめはこちら   → 百輪村物語 目次

 

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

☆主人公は、いちおうEですが、群像劇です。
(性別が変わったので、新たに名前をふりました)
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
(生徒は下の名前、教師は苗字。男は黄色
A(3-5 スケバンのボス)  悪久亜  アクア
B(2-3担任・家庭科担当)  芭蕉先生 バブル  
C(2-3 生徒会副会長)  千枝  クララ
D(2-3 転校生)     大奈  ディアナ
E(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデル
F(1-1 DIY部・部長)   文子 フェリス
G(1-4 DIY部・副部長)  月夏  ゲイナ
H(百輪女子高の教頭)  広瀬先生 ヒラリー
J(3-4 生徒会会長)   純子  ジャニス
K(草切男子校2年)     加流  カール
L(百輪女子高の校長)  蘭堂先生 リンドン
M(1-2 ダズンのヘッド) 正美  マーシア
  ダズン=1年の不良グループ名
O(草切男子校3年)    織音  オリオン
P(2-3)         風由子 プリシア
 
ρ(Kの母親 美容師)   六花  ローズ

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない一歩

 

 

 

  

 

百輪女子高の昼休み。

 

各クラスでお弁当を食べる生徒たちのもとへ

生徒会からの特別な放送がかかります。

 

月末恒例の、

生徒会長Jによる『会長・Jタイム』です。

 

隣の草切男子校に届きそうな音量で、

「やっほ~、元気~?生徒会長のJだよ~ん」

と学校中に響き渡ると、

百輪女子の全生徒と教職員がニコニコして

放送に耳を傾けます。

 

各教室から、「わー」「会長ー」「Jさーん」などと

喜びの声が上がったり、拍手が聞こえたりします。

 

「みんな、体に美味しいもの、いっぱい食べてるぅ?

 栄養満点で、午後も乗り切ろうね。

 はい、そこの人、狭い個室なんかで食べちゃだめだよ。

 つらいことあったら、いつでも生徒会室においで。

 

 それでは、『会長・Jタイム』のはじまりはじまり~。

 

 最初の話題は、再来月の体育祭のことね。

 もうちょっと、はっちゃけた自由競技が欲しいんだ。

 生徒会室の要望ボックスに

 ピカッとひらめいた案を書いて入れちゃって。

 匿名でもオッケー。

 あと、体育祭のボランティアも随時募集中だよ。

 希望者は生徒会に声かけてね。待ってるよ~」

 

学校中が、この『会長・Jタイム』を楽しみにしています。

Jが生徒会長になってからは、

学校生活が明るくなっています。

 

そして最近では、この放送のラストに

もうひとつのお楽しみが出来ました。

 

「・・・てなわけで、お知らせはここまでね。

 

 はい、みなさま、たいっへん、お待たせしました。

 来月の、ヘアカットモデルの当選者の発表で~~す」

 

生徒会と美容室のKとの取り決めが出来てから、

百輪女子高では、毎月5名の希望者が

ヘアカットモデルを出来るようになりました。

 

希望者が多いため、生徒会は専用のボックスを設けました。

「学年・組・出席番号」を書いた紙を入れると、

Jタイムで抽選が行われ、当選者が発表されるのでした。

 

放送室では、ボックスを抱えたJが箱に手を突っ込み、

ガサガサと音を立てます。

 

「今回も、たくさんのご応募、ありがとうございます。

 幸運な5人を選びますよ。

 ではでは、J、いっきまーす」

 

Jはドラムロールを口で言いながら、1枚取り出しました。

「ドルルルルル~~~。ジャン!!

 はい!お一人目!

 2年4組の、27番の方~、おめでと~。

 次、二枚目行きま~す。

 ドルルルルル~~~」

 

こんな風に選び続けると、あちらこちらの教室から、

「キャー!」「わー!」「やったー!」

と歓声が上がります。

 

「はい!ジャジャン!

 ラストは、3年5組の1番の方!おめでと~」

 

Jの言葉に、3年5組の空気が急激に冷えました。

しかし、放送は続きます。

 

「当選した番号は、廊下に貼っておきますよ。

 当たった人は、Kさんの美容室にすみやかに連絡して、

 来月の都合のいい日を決めてくださいね。

 来月中に行かなかったら無効になるから気を付けて。

 

 それでは次回の”会長・Jタイム”、お楽しみに。

 まったね~~~ん」

 

放送は、昼にふさわしい軽快なBGMに切り替わりました。

 

一方、重苦しい空気に包まれた3年5組の教室では、

小さなひそひそ声が広がります。

 

その中で、体の大きな女生徒が席に座ったまま腕を組み、

「・・・何よぉ。文句あるの?」

と、ドスのきいた声で半目になり、

周囲をじろりと威圧しました。

 

周囲はビクッとして、慌てて弁当に視線を戻します。

 

 

最後に当たったのは、Aでした。

 

 

 

  2

 

百輪女子高でスケバングループのボスであるAは、

自分の髪質に密かに悩んでいました。

 

天然パーマでどこまでも縦横無尽に広がる長髪、

栄養の行き届いたコシのある剛毛・・・

 

ほうっておくとパーティ用カツラのごとく

アフロな状態、もっとハッキリ言えば爆発頭になります。

 

Aは毎朝、半狂乱になりながら

力づくでヘアブラシで下方へと落ち着かせ、

無理矢理二つに結んで登校しているのです。

 

スケバンとはいえ、かわいくなりたいお年頃。

 

ドキドキしながら、勇気を出して

(一回、一回だけよ、A)と自分を鼓舞しながら、

震える手で応募箱に「3ー5ー1」の紙を入れました。

 

その、たった一回の勇気が、運命を変えました。

 

 

Aはカットモデルの予約日をスケバングループに告げ、

その日の集会をオフにしました。

 

Aは放課後、Kの美容室に肩で風を切って向かいます。

 

けれど、うすっぺらな学生鞄を持つ手は、

脂汗でじっとりしていました。

 

Aは過去の思い出がよみがえります。

 

「やーい、爆発頭」「鳥の巣~」と

同級生の小学生男子にからかわれたあの日を。

 

(カットの人は草切男子校の生徒らしいし・・・。

 同年齢の男子って、デリカシーないからヤダわ。

 

 指を差されて笑われたら、末代までの恥。

 

 なんで応募しちゃったんだろう、ワタシ。

 どうしよう、やっぱり、やめようか・・・)

 

美容室の前でなかなか入れず、ウロウロしていると、

ドアの中から爽やかな笑顔の青年が出てきました。

 

K「ご予約のAさんですか?

 どうぞ。お入りください」

A「・・・」

 

Aは無言で頷くと、ボスらしく胸を張って中に入りました。

 

KはAの鞄を受け取ると、洗髪の席に促します。

 

K「本日は、ヘアカットモデルになっていただき、

 ありがとうございます。

 道、わかりました?

 ちょっと住宅街で分かりづらい場所だから」

 

A「すぐわかりました」

 

(縄張りはぜんぶわかってるわよ)

と心でツッコみます。

 

K「良かった。では、御髪を濡らしますね」

 

Aの心は、少し落ち着きをとり戻しました。

(なーんだ、ふつうの美容院じゃない)

 

次は、カットの席に移動します。

 

K「とても豊かな髪ですね。

 ・・・うーん。若干ボリュームを落としてみます?

 それとも、このボリュームを活かしましょうか」

 

A「活かす?そんなことが出来るの?

 こんなに広がって、どうしようもないのに」

 

K「広がりの欲しい方には

 パーマをかけるんですけど、

 あなたにはそれが必要ないでしょう?」

 

A「・・・毎朝、この髪と格闘しては絶望してるの。

 なんとかなるといいけど」

 

K「そうでしたか。毎朝となると大変でしょうね。

 では、ボリュームを落とす方向で。

 

 痛みもあるので美容液を使わせてもらいます。

 あとは、5センチほど切らせてください。

 

 先にちょっとだけ、頭皮マッサージしていいですか?

 血行を良くすると、うねりがおさまることもあるので」

 

A「・・・おまかせするわ」

 

K「やり方をお教えしながらやりますね。

 爪を立てずに、指の腹で行ってください。

 

 パーツとしては、前側、側頭部、後ろ側でやります。

 まず、前側いきます。

 ・・・いた気持ち良い強さで、こうして・・・」

 

KのマッサージでAの緊張は完全にほぐれ、

(あ、なんだか・・・眠気が・・・)

と、Aはついウトウトしてしまいました。

 

 

 

 

  3

 

K「・・・Aさん、終わりましたよ」

 

AはKの言葉にハッとして、目を覚ましました。

 

鏡の前には、アメコミのスーパーウーマンのような、

超ワイルドでセクシーな女性が映っています。

 

A「こっ・・・これが・・・ワタシ?

 ど、どうやって・・・」

 

思わずAは、椅子から身を乗り出し、

大きく目を見開いて鏡に顔を寄せました。

 

K「お気に召しましたか?」

 

A「あ・・・あなた、魔法使い?」

Aは鏡から振り向いて、Kの方に顔を向けました。

 

K「いえ、ただの美容師の卵ですよ」

 

KはAに今後のヘアケアを説明しました。

 

日々のブラッシングは毛先から行うこと、

洗髪の後、抑えるように水分をタオルに移すこと、

頭皮マッサージをこまめにやること、

なるべく夜はちゃんと寝ること、

水分を多めに摂ること、・・・などを。

 

「わ、わかったわ。ありがとうございます」

AはKにお礼を言って、店を出ました。

 

 

翌日の3年5組では、感嘆の声があがります。

 

「え、Aさん、きれい」

「すご」

「女優さんみたい」

 

Aは余裕の笑みを浮かべ、

「ふん、元がいいからね」と

年下のクラスメイトたちに言いました。

 

まるで当然のように振る舞っていましたが、

幼少期から容姿を褒められたことのなかったAには、

どこかくすぐったくて ―― 

 

時折、自分の髪をなでたり、

洗面台で鏡を見るたびに、ほほを染めるのでした。

 

スケバングループの中でも、

ボスAの変わりように

手下たちがほれぼれし、感涙しました。

 

「バカねえ。大袈裟じゃないの」

と片手を振りながらも、

内心では、にやけるのをこらえるのに必死でした。

 

Aは、ただ暴れまわるのがなんだか恥ずかしくなってきて、

自分からけしかけるケンカの回数が減り始めました。

 

近所でのAの評判は、怖いだけの暴走女から、

落ち着きのある女傑イメージへと変貌しました。

 

他校のスケバンたちは、

百輪女子高のAの美とカリスマ性があがったのを見て、

自分たちもなにやらケンカをするのを控えだし、

街中の雰囲気も、穏やかになってきました。

 

そして、Aのビフォーアフターにより、

K美容室のヘアカットモデルの応募者数は

うなぎ上りになり、

生徒会室前の応募箱を大きくしないと

応募用紙が入らないほどになりました。

 

 

 

生徒会室では、Jがつまらない顔です。

 

「最近、特別清掃の機会がないんだけどさ~」と。

 

副会長のCと書記のEは

「まあまあ」

「平和が一番ですよ」

となだめながら、

お茶と季節限定のポテチをJに差し出しました。

 

 

 

 

 

(「見えない一歩」終)