小説を連載しています。

「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。

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(通し番号は、2章の「勧誘」から1を振っていきます)

 

 

(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。

 登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。

 前作を読まなくても大丈夫です。)

 

なんのこっちゃ?の方はこちらから→ 告知

             

「女子高」のまとめはこちら → 百輪女子高DAYS 目次 

「村」のまとめはこちら   → 百輪村物語 目次

 

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

☆主人公は、いちおうEですが、群像劇です。
(性別が変わったので、新たに名前をふりました)
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
(生徒は下の名前、教師は苗字。男は黄色
A(3-5 スケバンのボス)  悪久亜  アクア
B(2-3担任・家庭科担当)  芭蕉先生 バブル  
C(2-3 生徒会副会長)  千枝  クララ
D(2-3 転校生)     大奈  ディアナ
E(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデル
F(1-1 DIY部・部長)   文子 フェリス
G(1-4 DIY部・副部長)  月夏  ゲイナ
H(百輪女子高の教頭)  広瀬先生 ヒラリー
J(3-4 生徒会会長)   純子  ジャニス
K(草切男子校2年)     加流  カール
L(百輪女子高の校長)  蘭堂先生 リンドン
M(1-2 ダズンのヘッド) 正美  マーシア
  ダズン=1年の不良グループ名
O(草切男子校3年)    織音  オリオン
P(2-3)         風由子 プリシア
 
ρ(Kの母親 美容師)   六花  ローズ

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えないあいこ

 

 

 

  

 

百輪女子高のスケバングループの長であるAは、

ずっとイライラが静まりませんでした。

 

Aは、1か月ほど前の出来事を思い起こします。

 

突然、長年にわたって自分の右腕だったEに

「生徒会で忙しくなるので、グループを抜けます」

と言われたとき、Aは目を点にしました。

 

A「は?え?生徒会って・・・?なんで急に・・・」

 

E「Cに誘われて、自分で決めました」

 

A「はあ?よりによって、あのCに?

 ・・・あんた、それ、裏切り?」

 

E「すみません。色々事情がありまして。

 お世話になりました」

 

Eが踵を返すと、Aは止めました。

 

A「ま、待ちなさいよ。

 ちょっと、あんたたち、

 ぼやっとしてないでEを止めて!!」

 

ボスであるAが手下のスケバンたちに声をかけると、

まわりもおろおろしながらEに言いました。

 

「Eの姉御、思いとどまってください」

「グループを抜けるなんて嘘でしょう?」

「なんで・・・なんでですか?」

 

E「中途半端にはしたくないので」

 

思わずAは、Eに張り手を食らわせました。

Eのメガネが飛んでいきます。

 

A「あんたはずっとここにいなさい!私の横よ!!」

 

頬が赤く腫れたEは、無言でメガネを拾いに行き、

曲がっていないか少し確認した後、

「失礼します」

とAに頭を下げて、静かに去っていきました。

 

そのときのことを何度も思い返すたびに、

Aは怒りで体中が震えます。

 

 

その後、Aは何度か手下を差し向けて

説得に向かわせましたが、

Eの答えは変わりません。

 

しびれをきらしたAが自ら赴いても、

Eは、丁重ながらも首を縦には振りませんでした。

 

今度は元凶のCを脅しつけようと思いましたが、

Cは強烈な毒舌攻撃を持っており、

Aは返り討ちにあうのでした。

 

 

Eを失ったストレスが高じたのか、

Aは他校のスケバングループに怒鳴り込み、

抗争を繰り返しては、

さらに勢力を広げていきました。

 

百輪女子高のAの名は近隣にとどろき、

各校のスケバングループから、

ますます恐れられる存在となりました。

 

 

職員会議でも何度も議題に上がりました。

 

「3年のAさんは、もう2年も留年してますけど、

 ケンカばかりでもう手に負えないですよ」

「このままでは、百輪女子高に傷がつきます」

「もう退学させませんか?」

 

そのたびに校長のLは、

「皆さん、もう少し、様子を見ましょう」

の一点張りで、Aはそのままで取り置かれました。

 

 

 

 

 

  2

 

校長のLは、生徒会室に赴きました。

 

そこには、会長のJと副会長のC、書記のEが、

ポテチを食べていました。

 

「美味しそうだね。私もいいかな?」

とLが声をかけると、Jが嬉しそうに

「どうぞどうぞ」と席を用意しました。

 

LはEに入れてもらった紙コップのお茶を飲み、

「ここは落ち着くねえ。

 職員室より、居心地がいいよ」と笑いました。

 

J「それは良かった」

C「いつでもいらしてください」

E「お茶ならいつでもありますよ」

 

Lは、少し微笑み、ふっと窓の外を見て、

ひとりごとのように言いました。

「・・・A君のこと、どう思うかね?」と。

 

J「ああ。一応見かけたら、止めてますけどね」

C「色々こっちでも考えてますけど、なかなか」

E「・・・何か私たちにできることがあれば」

 

Lは、うん、と頷いて、つぶやきました。

「これは、独り言だよ。

 学校として、そろそろ答えを出さないといけないんだが。

 

 ただ、私個人の考えとしては・・・

 たったひとりの生徒のせいで、

 学校の全体の名誉が傷つくとか・・・

 そんな風には思ってないんだよ。

 

 どんな生徒でも、かわいい。

 うちに来たからには、最後まで見守りたい。

 

 基本は、本人の行動は本人が背負うべきものだ。

 学校は、箱だ。

 その箱の中の責任は、校長の私が負うべきものだ。

 

 ただ、その権力を行使して、

 勝手に大人の都合で切り捨ててしまって、

 その生徒の将来が傷つくのはね・・・

 なんとも、心苦しいものなんだよ・・・

 

 すまんな、暗い話をして。

 ちょっと疲れたので、

 少しここで休憩させてくれ」

 

Lは黙り込み、またお茶をすすりました。

 

3人の生徒は、静かに頷きます。

3人は、この校長先生が大好きでした。

 

Eは、校長の

( 勝手に切り捨ててしまえば、相手は傷つく )

という言葉を、しばらく考えていました。

 

Eは腕時計を見て立ち上がり、鞄を持ちました。

E「すみませんが、バイトの時間なので私はここで」

 

L「そうかね。気をつけて」

E「失礼します。校長先生は、どうぞごゆっくり」

 

Eは頭を下げて、ドアの向こうへ消えました。

 

J「校長先生、ほらほら、ポテチどーぞ」

C「海苔せんべいもありますよ」

L「ああ、ありがとう。

 今度私もポテトを揚げたのを差し入れるよ」

J「やった~!」

C「あの美味しい揚げ方のコツって、なんですの?」

L「ちょうどいいときに、油の音が変わるんだ。

 それはね・・・」

 

 

盛り上がる生徒会室を後にして、校舎を出たE。

実はこの日はバイトが入っていません。

 

Eの足は、学校の近くにある河川敷の方に進みました。

 

そこは、Aの率いるスケバングループのたまり場。

 

Eのかつての古巣でした。

 

 

 

 

 

  3

 

果たして、彼らはそこにいました。

 

 

「あ、ボス、Eの姉御が!」

 

指をさす手下の声に、Aたちは一斉に顔を上げました。

 

河川敷を見下ろすように、Eが立っていました。

 

Eは慣れたように、ザーッと坂を駆け降りると、

Aの前に現れました。

 

まるで帰省した孫を迎え入れるおばあちゃんのように、

Aは震えながら、すがるようにEに近づきました。

 

A「おお、おお、帰ってきてくれたのね、E。待ってたわ」

 

E「違います」

 

A「えっ?」

 

Eの一言に、その場にいた誰もが息をのみました。

 

E「Aさん、二人きりで話をしたいんですが」

 

気勢をそがれたAは、一つ咳ばらいをしました。

A「・・・わかったわ。みんな、今日は解散して」

 

「は、はい」

手下たちは、名残惜しそうに散っていきました。

 

 

Aは憮然とした様子で腕を組み、Eに言いました。

 

A「私は絶対にあんたをあきらめないんだからね。

 どんな話をされてもね。

 そこんとこ、わかってて、何か言うの?」

 

E「・・・うまく言えるかわからないのですが。

 たとえ話をしていいでしょうか」

 

A「たとえ話?」

 

E「そうです。

 こんな風に、考えてもらっていいですか?

 

 あなたは、いわば大企業の社長。

 私はその秘書の一人でした」

 

A「え?まあ、そんな感じよね」

 

E「けれど私はフリーランスの道を取って、

 そちらを退職しました。わかります?」

 

A「退職届、勝手に出してきて。

 納得いかないわよ!」

 

E「自己都合ですみません。

 ですが、私の中では、道はもう違うんです。

 

 私は、あなたの下では働きません。

 

 でも――関係を切りたいわけではありません。
 必要なら、対等な立場で関わることはできます。

 

 ・・・どうぞ、ご了解ください」

 

Aは足元の小石を拾うと、川に投げ入れました。

 

A「小難しいたとえ話して!!

 結局、別れ話じゃないのよ!!」

 

Aはいくつもいくつも石を拾っては、川に投げました。

そして、1つの石を握りしめ、肩を震わせました。

Eは、そんなAの背中をじっと見つめました。

 

E「・・・」

 

A「なんなのよ、なんなのよ・・・!

 あんなにかわいがってきたのに・・・

 何が不満なのよ!」

 

E「・・・」

 

A「・・・あんたは、” 剃刀E ”なんかじゃない。

 

 私にとっては、

 世界最高の・・・アーミーナイフだったのよ」

 

Eはそっと目をつぶりました。

 

Aのそばに付き従い、一緒に戦ってきた日々が、

走馬灯のように次々と思い浮かびました。

 

 

 

 

  4

 

Eはまた目を開け、Aに優しい眼差しを向けました。

 

「・・・お褒めの言葉として、受け取ります。

 

 あなたは一代で組織を盤石にした豪胆な社長です。

 これからも、そうあってください。

 

 いままで、本当に、ありがとうございました」

 

「ううっ、ううっ」

Aはハンカチをびしょびしょに濡らして泣きました。

 

EはAが落ち着くまで、待っていました。

 

 

――Aの涙がようやく収まった頃、

 

「では、これで。失礼します」

と、Eが頭を下げて去ろうとすると、

Aが「待って!」と言いました。

 

Eがちょっと困り顔で振り向くと、

Aが言いました。

 

A「対等なら・・・対等なら、いいのね?」

 

E「はい」

 

Aは頷いて、最後の涙を拭き、毅然とした声で言いました。

 

A「これは、命令じゃないわ。

 お願いを聞いてもらえるかしら。

 

 あんたが行ってしまう背中は見たくないの。

 私が先にここを去るから、見送ってほしいのよ」

 

E「ええ。喜んで」

 

Eは、Aが夕日に向かって去っていく大きな背中を、

長い時間見つめていました。

 

 

後日。

下校しているEとDの所に、

Aがひとりでやってきて

「E、これ、あげる」とピンクの紙袋を渡しました。

 

E「なんですか?」

Eが紙袋から取り出したのは、

5センチくらいのフェルトのキャラでした。

 

A「私が作ったキディちゃん」

E「え・・・縫い目が細かい。上手ですね」

A「ふっ、じゃあね」

 

Aはすぐに帰っていきました。

 

Dは口を押えて、何も言いませんでした。

ただ、Eの顔をじっと見ているだけです。

 

Eは、もらった小さなマスコットを、

その場で、そっと鞄につけました。

 

 

その後。

生徒会室で、書記のEが

会長のJと副会長のCにお茶を出します。

 

J「最近、Aがらみのもめ事、減ったねえ」

C「Aのメンタルが落ち着いた感じがするわ。

 何かあったのかしらね、E?」

E「さあ」

 

JがふとEの鞄に見慣れぬものを発見しました。

 

J「あれ~?キディちゃん?

 Eってこんな趣味あったの?意外~」

 

Eは「思い出です」と静かに返事をします。

 

Cは頬杖をついたまま、ちらっとEを見て――
ふっと視線を外しました。

 

 

 

(「見えないあいこ」終)