小説を連載しています。
「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。
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(通し番号は、2章の「勧誘」から1を振っていきます)
(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。
登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。
前作を読まなくても大丈夫です。)
なんのこっちゃ?の方はこちらから→ 告知
「女子高」のまとめはこちら → 百輪女子高DAYS 目次
「村」のまとめはこちら → 百輪村物語 目次
登場人物名は、アルファベット表記です。
A(3-5 スケバンのボス) 悪久亜 アクアB(2-3担任・家庭科担当) 芭蕉先生 バブルC(2-3 生徒会副会長) 千枝 クララD(2-3 転校生) 大奈 ディアナE(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデルF(1-1 DIY部・部長) 文子 フェリスG(1-4 DIY部・副部長) 月夏 ゲイナH(百輪女子高の教頭) 広瀬先生 ヒラリーJ(3-4 生徒会会長) 純子 ジャニスK(草切男子校2年) 加流 カールL(百輪女子高の校長) 蘭堂先生 リンドンM(1-2 ダズンのヘッド) 正美 マーシアダズン=1年の不良グループ名O(草切男子校3年) 織音 オリオンP(2-3) 風由子 プリシアρ(Kの母親 美容師) 六花 ローズ
では、どうぞ。↓
見えない空気
1
草切男子校のKは、ある日、職員室に呼ばれました。
Kの担任の先生が自席に座ったまま、
苦虫を嚙み潰したような顔で、
横に立っているKをじろりとにらみました。
「K君、君は百輪女子高生とどう付き合ってるんだね?」
「・・・僕は将来、美容師になりたいので、
カットモデルを百輪女子の皆さんにお願いしています。
それだけです」
「カットモデル?女子高生からお金を取ってるのか?」
「無料です。やましいことは何もしていません」
「そうなのかい?周囲が色々と騒いでるんだよ。
とにかく、清い男女交際をお願いするよ。
何かあれば、退学だからね」
「・・・はい、わかっています。失礼します」
Kは頭を下げて、職員室から出ました。
そこには友人のOが立っていました。
O「K、しぼられたのか?」
K「なんか、不純異性交遊を疑われたよ。
清い交際しろって」
O「ははっ。バカくさいな。清いとか清くないとか。
交際すらできない奴が騒いでる”やっかみ”だろ」
K「・・・ふふっ。ありがと」
OはKの首に腕を回しながら言いました。
O「なあ、うちの生徒会に働きかけてさ、
百輪女子とイベントやれたらいいよな」
K「例えば?」
O「そうだな。合唱とか学祭とか劇をやるとかさ。
Eが”眠りの森の美女”になったら、良くない?」
K「ああ、オーロラ姫か。似合うかも」
O「で、キスする王子は僕で決まりっと」
K「・・・退学したいの?」
その頃、百輪女子高の生徒会室では、
不穏な空気が流れていました。
発端は、学内のジャガイモ掘りのイベントの話でした。
百輪女子高の校長Lはポテトを揚げるのが趣味で、
学校の敷地内に大きな畑を作り、
学祭には校長自らが揚げたポテトをみんなに配ります。
その畑は生徒たちで世話をしており、
そのジャガイモを掘る行事も百輪女子高では名物でした。
E「というわけで、
年々、畑の面積は広がる一方ですので、
小型の耕運機や収穫機を導入すべきだと思います。
来年度の予算に入れるとしたら、今のうちに・・・」
C「却下。私、Eのそういうところ、嫌いよ」
E「どういう意味?私情を挟まないで説明して」
C「なんでも効率化しないで」
E「なるほど。でも、しんどいという声もあるので」
C「楽しみにしている生徒の気持ちは?」
E「辛さを軽減する方が先では?運営としては・・・」
C「お話にならないわ。私、帰るから」
E「待って。まだ終わってないのに」
副会長のCは鞄を持つと、生徒会室を出て行きました。
書記のEはちらりと生徒会長のJを見ます。
Jはポテチをのんびり食べながら、Eに言いました。
J「なーんかイライラしてるねぇ。アレが長いのかな?」
E「会長、どうします?決まらないんですが」
J「えー、わかんない。E、頼むね」
E「・・・」
丸投げされたEはため息をつきました。
2
その後、2年3組でも、EとCの冷戦状態が続きます。
D「どうしたの、C。Eとケンカしたの?」
C「ケンカじゃないわ。相手はロボットだもの」
D「・・・E、何があったの?」
E「私の案がお好みじゃないようよ。
代案出してほしいわ」
D「えー?仲良くしましょうよ。ねっ?ねっ?」
Dは二人の間でおろおろしました。
数日たっても状況は変わらず、
Dがしょんぼり下校していると、
草切男子校のKもちょうど帰宅途中でした。
K「やあ、D。元気?」
D「あ、Kさん・・・」
K「どうしたの?何かあった?」
D「友だちが・・・CとEがケンカしてて・・・」
K「Cさんって、副会長さんだよね。Eは書記だっけ?」
D「そう。
生徒会のイベントの話し合いでこじれたみたい。
私、生徒会役員じゃないから、なにも言えないの。
どうしていいか、わからなくて」
K「そうなんだ。Dはどうしたいの?」
D「元通りに仲良くして欲しいの。それだけ」
K「友だちがこじれてるとつらいよね。
・・・そうだ、手をグーパーしてごらんよ、30回」
Dは鞄を地面に置き、言われた通りにやってみました。
D「・・・28、29、30。
あれ?ちょっと落ち着いたかも」
K「良かった。
僕、お客さんをカットする前にそれをやると、
緊張がほぐれるんだよね。役に立った?」
D「はい、とっても」
K「落ち着くと、いい案が浮かぶこともあるよ。ドンマイ」
DはますますKのことが好きになるのでした。
翌日。
Dが登校すると2年3組の教室にはすでにEがいました。
D「おはよう、E」
E「おはよう、D。なんだか今日は元気そうね」
D「うん。昨日、Kさんと会ってね、元気もらえたの」
E「そうなの。それは良かったわね」
Eは深いため息をついて、目の前の机を見つめました。
机には、メモ書きと耕運機のチラシが散乱しています。
D「Eも話を聞いてもらったら?あの人、すごいわよ」
E「なるほどね。第三者目線も大事かな・・・」
Eはバイトの無い日に、Kの美容室に寄ってみました。
Kは母親の仕事を手伝っていました。
K「あ、E。いらっしゃい。髪の具合、どう?」
E「最近、毛先が変なの。やたらと、からまるし」
K「どれ?・・・ああ、枝毛だね。ストレス?」
E「・・・そうなのかしら」
K「新しい美容液あるんだけど、試してもいいかな?」
E「お願いします」
Kは施術をほどこしながら、話しかけます。
K「Dから話聞いたけど、生徒会、大変そうだね」
E「話が並行線なの。全校生徒のことを考えたうえで
完璧な提案をしているのに、副会長に
ダメ出しされて、手の打ちようがないの」
K「・・・Cさんの案とか気持ちは聞いた?」
E「”私情を挟まないで代案を出して”って言ったんだけど、
Cに”お話にならない”って、打ち切られたわ」
K「ふうん。どうして私情を出しちゃだめなの?」
E「え?感情は切り分けるべきでしょう?」
K「切り分けて、こうなったんだね」
E「・・・」
K「君の感情は、毛先に出ちゃったね」
E「・・・」
Eは、まだ美容液のついていない髪束をちょっとつまんで、
それを見つめました。
何本かの毛先は二つに分かれ、Yの字に裂けていました。
3
ジャガイモ掘りのイベントの日。
百輪女子高は、良い天候に恵まれました。
敷地内の広い畑から、
女子生徒たちの声があちこちで上がります。
「マジ、手ぇ汚れるんだけど~」
「腰、痛~い」
「ちょっと、このイモ、でかすぎ。見てー」
「いやーん、ミミズ出たぁ~」
「皮むきが無間地獄!」
「きゃー、油跳ねた~~」
文句ばかりだけれど、みんな笑顔です。
タオルを首に巻いたCが、
芋づるをつかんでいるEの所にやってきました。
C「どうして急に提案ひっこめたの?雨降るかと思った」
E「・・・Cの言いたかったこと、
なんとなくわかったから」
C「しんどいって言葉を拾うのもわかるわ。
でも、文字だけじゃないのよね、あの空気とか」
E「そうね」
立ち上がったEが畑全体を見渡すと、
芋掘りや土いじりで大騒ぎしているみんなが見えました。
畑のそばでは、
テントの下で楽しそうに油を揚げる校長Lや先生方。
別のテントでは、揚げたてのポテトを
小さな紙皿に取り分ける係の生徒たちがいます。
生徒会長Jや、Dも、ポテトを配る係でした。
ふとDが、CとEが仲良くしゃべっているのに気づき、
嬉しそうに二人に手を振りました。
CはDに手を振り返すと、
「私もあっちを手伝ってくるわね」と、Eから離れました。
Cが去った後、心の軽くなったEが
また足元の芋畑に目を向けようとしたとき、
校庭のフェンスの向こうに立つ
草切男子校生のKとOが見えました。
Eは近くにあるビニール袋2つに
2、3個のジャガイモを入れると、
裏門を通ってふたりに近づきました。
E「K、これ。少ないけど、お礼です。Oもどうぞ」
K「ありがとう。仲直りしたんだね。良かったね」
E「おかげさまで」
OはEから袋を受け取ると、嬉しそうに言いました。
O「ねえE、今度うちの学校と、合同で劇をやらない?
君が”眠れる森の美女”で、僕が王子役でさ」
Eはちょっと目を見張ったあと、
「枝毛が増えそうなので、私は辞退しますね」
とほほ笑んで言いました。
O「はい?枝毛?」
Oはきょとんとし、Kは笑いをこらえました。
(「見えない空気」終)