小説です。「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。

 

(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。

 登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。

 前作を読まなくても大丈夫です。)

 

なんのこっちゃ?の方はこちらから→ 告知

             

「女子高」の目次はこちら→ 百輪女子高DAYS 目次 

「村」の目次はこちら  → 百輪村物語 目次

 
 

登場人物名は、アルファベット表記です。

☆主人公は、いちおうEですが、群像劇です。
(性別が変わったので、新たに名前をふりました)
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
(生徒は下の名前、教師は苗字。男は黄色
A(3-5 スケバンのボス)  悪久亜  アクア
B(2-3担任・家庭科担当)  芭蕉先生  バブル  
C(2-3 生徒会副会長)  千枝  クララ
D(2-3 転校生)     大奈  ディアナ
E(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデル
F(1-1 DIY部)      文子  フェリス
G(1-4 DIY部)      月夏   ゲイナ
H(百輪女子高の教頭)   広瀬先生 ヒラリー
J(3-4 生徒会会長)   純子  ジャニス
K(草切男子校2年)     加流  カール
L(百輪女子高の校長)   蘭堂先生 リンドン
M(1-2 ダズンのヘッド) 正美  マーシア
  ダズン=1年の不良グループ名
O(草切男子校3年)    織音  オリオン
P(2-3)         風由子 プリシア

 

今回のお話は、前々話の「見えない時間」と、

前話の「見えない構築」の続きです。

(でも、読まなくても、大丈夫です。たぶん。)

 

では、どうぞ。↓

 

見えない土台

 

 

 

  

 

百輪女子高に転校してきたDは、

登校の第一日目にして、
放課後、校庭でのスケバン同士のケンカと
それを武力で止める生徒会のバトルを見ました。

そのあと、ふいに登場したFから
「大工部がある」という話を聞いて、
興味津々でついていきました。

Dは「大工」と聞くと、つい、心がはやるのです。


Fやダズンたちと一緒にDIY部の部室に入ったDは、
技術室の机上にあるミニチュアハウスを見て感動しました。

D「すごい!これ、全部、手作りですか?」

F「そうっす。じっくり見て、いいっすよ」

D「わー、細かーい」

G「このベッドは自信作ですよ」

Dは、家や家具をためすがめつ見て、

感嘆のため息をつきました。

その間に、ケンカでボロボロのダズンたちは、
空席に座って、傷をハンカチでおさえたり、
制服に着いた砂埃を払い落としたり、
常に持参している絆創膏を腕などに貼っていました。


気になったので、Dは質問します。
D「あの人たち、ケンカしてましたけど、

 この部の方たちですか?」

F「そうっす。でも、もうケンカしないっす。ね?M」

Fは、少し離れて座っているMに向かって声をかけます。

M「・・・自分たちからはね」
Mは赤い髪を櫛でとかしながらFに言いました。


Dは少しドキドキしながら、考えました。

(ああ、すぐに入部したい・・・
 でも、この不良グループも一緒?
 うーん。

 でも、この部長さんらしき人は、涼しい顔をしている・・・
 入っても、大丈夫そうな気はする・・・)

D「あ、あの、仮入部していいですか?」

F「もちろん、もちろん」

G「じゃあ、とりあえず、お名前を書いてもらえますか?」

差し出された名簿のヘッダーには、
「DIY部(通称:大工部)」と書かれていました。

15番目から空欄だったので、
Dはそこに学年と名前を書きました。
目を通すと、自分以外は全員1年生でした。

Dがペンと名簿を返すと、FとGはそれを眺めました。

D「・・・実は私、今日転校してきたばかりで、

 ちょっと疲れました。
 続きはまた明日でも良いでしょうか?」

G「え、今日が初日だったんですか?」

F「わかったっす、Dさん。明日の放課後、待ってるっす。
 おいらはF。こっちはG。部長と、副部長っす」

D「Fさん、Gさんですね。
 明日、よろしくお願いします。では失礼します」

Dは、目の前の2人と、

奥に座っているダズンたち12人の方に
それぞれ会釈をすると、技術室を出て行きました。


校門を出て家路に向かいながら、Dはふと
(今日はなんてたくさんのことが起きたんだろう)
と、振りかえりました。

(2年3組で挨拶して、

 Cさんに教科書を見せてもらって、

 Eさんに学校を案内してもらって、
 生徒会室では会長のJさんに会って、

 校庭で大人数のケンカを見て、
 そして、大工部の見学・・・。

 忙し過ぎて、なんか忘れてるような・・・?

 あ、生徒会の皆さんに最後に挨拶するの忘れてた!

 ああ・・・まあ、いいか。明日にしよう・・・)



ふらふらになりながら、初日を終えたDでした。

 

 

 

 

  2

 

翌朝、Dは、同じクラスで生徒会メンバーのCとEに、
「昨日は、途中で帰ってごめんなさい」と謝りましたが、
2人は全然気にしていませんでした。

C「それよりDさん。あ、もう呼び捨てにしましょう。
 D、あれからDIY部はどうだったの?」

D「じゃあ、私もCって呼びますね。
 えっと、昨日、見学させてもらったけど、
 ミニチュアハウスを作ってて、楽しそうだったわ」

E「ミニチュア。なるほど。少ない予算をそう使うのね」

D「予算が少ない?」

E「この4月に発足した部なの。
 部長のFに言われて生徒会も動いたけど、

 増額がきびしかったのよ」

D「そうなんだ・・・」


そこへ担任のB先生がやってきて、
朝のHRが始まりました。

HRの終わりに、
EはB先生に廊下に呼び出されましたが、
「・・・球技大会の打ち合わせが生徒会であるので、
 しばらくお手伝いはできません」
と、何かを断っているのが、
ちょっとだけDの耳に入りました。

が、それよりもDは、
部活のことで頭がいっぱいでした。

 

 
その日の放課後、

技術室に入ったDは、

不良グループのダズンたちと目が合ったので、
「こ、こんにちは」と挨拶しました。

ダズンのヘッドのMは、

片手をあげて「どうも」と言いました。

DはMに軽く会釈をした後、

きょろきょろしてFとGを探しましたが、
まだ来ていません。

空いている端っこの席について、

しばらく待つことにしました。

 

技術室には、

木の匂いとヤスリの粉っぽい空気が漂っています。
Dは少し、深く息を吸いました。


すると、見るからに不良という風情のダズンたち数人が

Dの周りを取り囲んで、
「おたく、仮入部するんだ~?」
「Dさん?2年生?転校生なんだって?」
「どこから来たの?」
と口々に話しかけるので、Dはドギマギしました。

 

D「えっと・・・アチダ県からです」

「隣の県か。どんなところ?」

D「すごく田舎で、田んぼだらけです」

「こことそう変わらないじゃん?」

D「いえ、こちらの方が、ずっと都会では・・・?」

「ここが都会?マジ、ウケる」

「ひょっとして、バカにしてるの?」

D「・・・いえ、あの、そんなつもりじゃ・・・」


Mは立ち上がると、
「ほら、怖がってるって。ちょっと散りな」
と仲間たちを下がらせ、Dの近くに座りました。

 

 

 

 

  3

 

さっきのダズンの数人よりも、
赤い長髪のMがひとりでそばにいるほうが、

かえって緊張するDです。

M「私はM。

 こいつらはダズンっていうチームなんだけど、
 私はそのヘッドをしてるの。よろしく」

D「は、はい。私はDです。よろしくお願いします」

M「こんな不良たちが最近くそ真面目に部活やってんのさ。
 あなた、こんなところで、やっていける?」

D「私、手作業が大好きなんです。やれます」

 

Dがまっすぐに目を向けてMを見つめるので、

Mもまた、口元を上げました。

M「じゃ、一緒にやろう。Fはもうすぐ来るよ」

Mが目配せをすると、ダズンたちは頷いて、
それぞれがミニチュアハウスづくりを始めました。


Mは「板を切るから、そっち押さえてくれる?」と言い、
Dが手を添えると、Mはミニのこぎりを板につけます。

するとDが「あっ」と声を上げたので、
Mの体がビクッとしました。

M「なに?急に声を出して」

D「線の上を切ると、出来上がりがずれません?」

M「・・・あ、まあ、そうなんだよね。
 何回やっても、数ミリ小さくなるっていうか」

D「必要な分が減らないよう、線の外側を切ってください。
 そうしたら、大丈夫です」

M「・・・なんで詳しいの?」

D「あ、うち、大工なんです。父の手伝い、よくやるんです」

 

M「え?大工?」

「ガチで?」
「大工の娘?」
「サラブレッドが来たわ」
ダズンが色めき立ちました。


HR(ホームルーム)がずれこんで

遅くなったFとGが技術室に入ると、
Dを真ん中にしてダズンたちが集まり、
「へー」「ほー」と感嘆の声を上げています。

F「ちわっす。あれ?楽しそうっすね」
G「何があったんですか?」

驚く部長と副部長に、赤髪のMが顎で指します。

M「すごい新人来たわよ。知識が半端ない」


Fたちがそっと集団に近づくと、声が聞こえます。
「ねえ、ここがうまく、くっつかないのよ~」
D「斜めにカットすれば、ボンドがつけやすい、かも」
「じゃあさ、ここのギザギザは?」
D「うーん、やすり掛けで微調整・・・かなあ」


Dは後ろにいるFに気がつくと、
「あ、部長さん。こんにちは」と立ち上がりました。

F「こんちは、Dさん。どうぞ、座っててほしいっす」

D「あの、お話があるんです。
 うち、大工なので、端切れの板、

 たくさんあまってるんです。
 それ、今度、持ってきていいですか?」

技術室が一瞬、シーンとなり、

次にワ~と歓声が上がりました。

G「Dさん!!すごくありがたいです!!」

D「良かった~。毎日、ちょっとずつ持ってきますね」

F「き、奇跡っす」
G「先輩・・・良かったですね」

「まじで救世主やん!」
「これでたくさん作れる~」
「大工部よ、永遠なれ」

FもGもMもダズンたちも、

土下座してDの周りにひれ伏すので、
「ちょ、な、なんですかあ、もお」と焦るD。

Fは「おいらたち、全員、1年生だし、ド素人の集団っす。
 もしよかったら、2年のDさん、部長になってほしいっす」
と頭を下げました。

Dは両手をパーにしてブルブル振り、全力で否定しました。
「と、とんでもないです。Fさん、そのままでお願いします」

F「じゃ、じゃあ、今年はおいらで。

 来年、お願いするっす!」

D「・・・部長はともかく、本入部させていただきますので、
 こちらこそよろしくお願いします」

Dが頭を深々と下げると、周りの皆は拍手をしました。

技術室の空気が、また少し軽くなりました。

 

 


(「見えない土台」終)