小説です。「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。
(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。
登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。
前作を読まなくても大丈夫です。)
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登場人物名は、アルファベット表記です。
A(3-5 スケバンのボス) 悪久亜 アクアB(2-3担任・家庭科担当) 芭蕉先生 バブルC(2-3 生徒会副会長) 千枝 クララD(2-3 転校生) 大奈 ディアナE(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデルF(1-1 DIY部) 文子 フェリスG(1-4 DIY部) 月夏 ゲイナH(百輪女子高の教頭) 広瀬先生 ヒラリーJ(3-4 生徒会会長) 純子 ジャニスK(草切男子校2年) 加流 カールL(百輪女子高の校長) 蘭堂先生 リンドンM(1-2 ダズンのヘッド) 正美 マーシアダズン=1年の不良グループ名O(草切男子校3年) 織音 オリオンP(2-3) 風由子 プリシア
では、どうぞ。↓
見えない時間
1
百輪女子高にあるDIY部、
通称「大工部」誕生のお話です。
小学生の頃からGは、
近所に住むFと、いつも一緒に遊んでいました。
Fは気さくでほがらかな少女で、
一人称を僕と言うGに対してからかったりもしないので、
他にあまり友達の出来ないGにとってはまぶしい存在でした。
GはFのことが大好きで、同い年なのに「F先輩」と呼び、
どこへ行くにもついていきました。
高校の進学も、Fと同じ百輪女子高を選びました。
一年生となったFが
「実は、DIY部を作りたいんすよ」と言い出した時、
最初は漠然とFとテニス部に入ろうかと思っていたGは
すぐさまプランを捨て、
「いいですね!一緒に作りましょう」と頷きました。
新しい部を作るには、最低でも3人必要です。
もう一人の部員を急遽さがす必要がありました。
2人はポスターを作り、毎日ビラを配り、
「DIY部、一緒にやりませんか~?」と声を上げました。
が、新しい人は入ってきませんでした。
「困ったっす。女子高だからっすかねえ」
Fは少ししょんぼりしました。
Gは「諦めないで頑張りましょう」と励まします。
けれど、新しい部を申請するのには期限がありました。
あと1週間しかありません。
G「何か成果物を作るのはどうでしょう?」
F「おお、いいっすね」
まだ部費の無い二人は
なけなしのお小遣いで材料を買い、
子ども用の椅子を作りました。
ニスを塗られて可愛くなった椅子は、
学校の下駄箱付近にそっと置かれ、
「DIY部員・募集中」のポスターもつけられました。
その日の放課後。
1年の不良グループ、ダズンが通りかかりました。
「なにこれ。こびと用?」
「幼稚園児の椅子なんて作って、あほじゃない?」
と笑いだし、
グループの12人で蹴りまわして、壊してしまいました。
目撃したGが真っ赤な顔をしてダズンたちに向かいました。
G「何をするんですか!
先輩と僕で、せっかく作ったのに!!」
「あらら、かわいい。ちっちゃい子が来たわ」
「お嬢ちゃん、ここは幼稚園じゃないわよ~」
背の低いGは悔し涙にくれて
「ひどい!ひどい!」と言いながら、
両腕をぶんぶんふって
ダズンたちに襲い掛かろうとしましたが、
ダズンの一人に頭を押さえつけられて、その腕は届きません。
2
「やめるっす!!G!!」
そこへFが現れました。
G「F先輩!・・・僕たちの椅子が・・・ううう」
Fは泣きじゃくるGを背中に回し、
目の前にいる不良グループ・ダズンに
「なんで壊したんすか?」と聞きました。
ダズンのヘッドのMは
にやにやしながら、Fに言いました。
M「別に。蹴りやすかったから。それだけよ。
すぐ壊れるような椅子、
作ったってしょうがないでしょ」
Fはぐっとこぶしを握り、声を絞り出します。
「壊すのは一瞬っす。
壊して楽しいのも一瞬っす。
・・・でも、物をつくる長い時間、
おいらたちはずっと楽しいっす。
きっと、あなたたちには、わからないっす」
Mを含め、ダズンたちは、
Fの静かな言葉に息をのみました。
Fは、バラバラになった木片を拾い集めると、
Gと一緒に去っていきました。
ダズンたちは、
しばらく誰も口を開けませんでした。
「・・・なによあれ、私たちに説教していったわ」
「たかが椅子一つでさ。バッカみたい」
「ねえM、ケチがついたから、
これからタックバーガーに行きましょうよ」
負け惜しみのような声を出して、
士気をとり戻そうとしました。
ヘッドのMは、
自分たちが踏みにじった募集のポスターを拾い上げ、
しばらく黙っていました。
その紙には、不器用ながらも丁寧に描かれた文字と、
手作りの椅子の絵が残っていました。
Mはフン、と鼻を鳴らすと、
ポイとポスターを捨て、仲間たちと一緒に
ハンバーガーショップへ向かいました。
後日、学校の中庭のベンチで、
FとGが翌日に迫る期限について話し合いました。
F「もう、やることはやったっす。
あきらめて、別の部に入るっす」
G「先輩・・・無念です」
そこへ現れた一人の影。
Mでした。
Fは顔を上げ、
「もう椅子はないっすよ」と言うと、
Mが、ボロボロのポスターをFの前に出し、
「私、DIY部に入るわ」
と言い出したので、FとGはびっくりしました。
G「え?この人、何を・・・?」
F「冗談は、その赤い髪だけにするっすよ」
FとGが信じられない顔で呆然としていると、
二人が座るベンチに置いてある部員名簿を持ち上げ、
三番目の欄にMは自分の名前を書きました。
M「ほら。これでDIY部、大丈夫なんでしょ」
F「・・・なんで、っすか?」
Mはすぐには答えず、少しだけ視線を落としました。
M「この間は、やりすぎたわ。
ちょっと反省したの。
名前だけ使ってくれていいから」
F「なーんだ。名前だけっすか?」
G「せっかくなら、何か一緒に作りましょうよ」
M「私はダズンのヘッドとして、
仲間を取りまとめる仕事があるの」
「M、水臭いわよ!」
MとFとGが振り向くと、
ダズンの他のメンバー11人が立っていました。
「私たちはいつでも一蓮托生よ!」
「Mが入るなら、私たちだって入れてよ」
「ケンカが暇なときは、トンカチふるったっていいわよ」
「ちょっと面白そうだしさ」
Mは苦笑し、
「・・・あ、そう。じゃあ、みんなで入りましょ」
と名簿を回しました。
G「せ・・・先輩・・・」
F「奇跡っす」
ダズン・メンバーの名前が揃い、
名簿は全員で14人になりました。
M「Fって、”先輩”って言われてるのね。
じゃあ私たちも部内では、
あなたを”F先輩”と呼ぶわ。よろしくね。ふふっ」
F「M、よろしく頼むっす」
FとMはがっちりと握手をします。
Fの笑顔に、Gの瞳は潤みます。
足元では、タンポポがふわりと揺れていました。
(「見えない時間」終)