小説です。「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。

 

(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。

 登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています)

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

☆主人公は、いちおうEですが、群像劇です。
(性別が変わったので、新たに名前をふりました)
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
(生徒は下の名前、教師は苗字。男は黄色
A(3-5 スケバンのボス)  悪久亜  アクア
B(2-3担任・家庭科担当)  芭蕉先生  バブル  
C(2-3 生徒会副会長)  千枝  クララ
D(2-3 転校生)     大奈  ディアナ
E(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデル
F(1-1 DIY部)      文子  フェリス
G(1-4 DIY部)      月夏   ゲイナ
H(百輪女子高の教頭)   広瀬先生 ヒラリー
J(3-4 生徒会会長)   純子  ジャニス
K(草切男子校2年)     加流  カール
L(百輪女子高の校長)   蘭堂先生 リンドン
M(1-2 ダズンのヘッド) 正美  マーシア
  ダズン=1年の不良グループ名
O(草切男子校3年)    織音  オリオン
P(2-3)         風由子 プリシア

 

では、どうぞ。↓

 

見えない勧誘

 

 

 

  

 

百輪女子高のスケバングループでボスの座にいるAは、

先日、気を抜いて廊下を歩いているときに、

うっかり下級生のCとすれ違い、

「・・・留年の春もめでたし」と

ぼそりとつぶやく精神口撃を受け、

気分がダダ下がりでした。

 

学校の近くの河川敷で

スケバングループが車座になり、

真ん中でAがずっと文句を言っています。

 

A「ホントに腹立つわ。あいつ。Cめ~~。

 2年生で学年トップに入る頭を持ってて、

 おフランス人形みたいな顔をしてるくせに、

 なんで人の心をえぐって来るのが絶妙にうまいのかしら」

 

「ボス・・・ほめてませんか?」

「ひょっとして、一目、おいてる?」

 

A「なによ!あんたたち、どっちの味方なの?」

 

「も、もちろん、ボスですぅ」

「Cだけ拉致って、裏でボコりましょうよ」

 

A「それが簡単に出来たら、どんなにいいかって話よ。

 魂をえぐるあの一言一言が凶悪ウエポンなんだから。

 それに、今あいつの周りには、生徒会の

 JとEがいるから、そもそも手が出せないのよっ」

 

「この界隈では最強の武闘派ですからね・・・」

「2人はCの護衛?隠れ蓑でしょうか?」

 

A「どっちでもいいけどさ、まったく、いまいましい。

 とにかく、Eだけでも返して欲しいのよっ!」

 

Aは立ち上がると、

目の前の河の下流に向かって叫びました。

 

A「E~~~、カムバ~~ック!!

 今ならキャンペーンで煙草を1カートンあげるわよ~!」

 

「・・・Eの姉御、もう禁煙したらしいですよ」

 

A「くううう。じゃあ、何なら喜ぶのよっ!!」

 

「と、とにかく、落ち着いてくださいボス」

 

鼻息荒く、Aはまた座り込みました。

 

A「あんたたち、Eの説得、どうしてできないのよ!!

 全員行って、誰も成功してないし!」

 

「で、でも・・・決心が固いって・・・」

「・・・もう諦めませんか?」

 

A「ふざけないで!あんな有能な子、もういないのよ。

 ケンカも強くて、頭も良くて、実は人望まであるし。

 あの子が歩くだけでも雑魚がゴキみたいに逃げるのよ。

 私の手下ってだけで、私の格も上がるのに。

 もう、いい!私が明日、直々に行くから!!」

 

「ひい、すみません」

「どうぞ、これで、心お健やかに」

 

手下たちが頭を沸騰させたAに

ジュースを渡したり、肩をもんだり、

持参したお菓子をたくさん差し出したりして、

Aを元気づけようとしましたが、ぜんぜんダメでした。

 

ため息をつくとAは再びすっくと立ち上がり、

A「帰る。ちょっと一人にしてちょうだい」

と、その場を去りました。

 

スケバンたちは、こそこそと話をします。

 

「やっぱり、私たちだけじゃだめなのかな」

「ボスが元気ないと、こっちもね・・・」

「Eの姉御、どうして好待遇を蹴ったんだろう」

「とにかく、明日、ボスがなんとかしてくれるわよ」

「ねえ、そういえばさ、

 あの1年のダズン、DIY部に入ったらしいわよ」

「堅気になろうっていうのかしらね、生意気」

 

 

Aは河川敷の坂を上ると、一人で歩き出しました。

 

犬の散歩をしていた近所の人がギョッとして、

威圧感のある女学生Aからさささと離れていきます。

 

Aはにらみを利かせながら、このままゲーセンに行くか、

そのまま家に帰るか、考えていました。

 

A(ああ。むしゃくしゃする。

 こんなときEがいてくれたら・・・。

 

 私の大好物のジュースも菓子パンも、

 夢のような速さで持ってきてくれたのに・・・

 

 あの子は私だけのドラえもんだったのに・・・)

 

 

 

 

 

 

  2

 

生徒会室で、書記のEがくしゃみをします。

 

生徒会長のJと副会長のCが、

地図から目をあげました。

 

J「E、どったの?風邪?」

 

E「いえ。どこかで噂されてるのかも・・・」

 

C「”剃刀E”も、風邪には勝てなさそう。お大事に」

 

E「ありがとう。大丈夫。でもそのあだ名はやめて。

 黒歴史なんだから」

 

C「ふふふっ。カッコいいあだ名なのに」

 

E「とんでもない。Aの下っ端だった時代がよみがえるわ」

 

J「そういや、Aのところで、ずっと何をしてたの?」

 

E「ただの使い走りです。

 小さい頃からずっとAの下にいて・・・

 それが当たり前のようになっていただけです」

 

J「ふうん。じゃあ、なんでCのスカウトに乗ったの?」

 

E「・・・Cに聞いてください」

 

会長のJが副会長のCに顔を向けると、Cは微笑みます。

 

C「私はただ、”Aのそばにずっといて、楽しいの?”って

 聞いただけですよ。つまらなそうな顔をしてたから」

 

J「つまんなそうな顔って、今もじゃん?」

 

E「これは地顔です」

 

C「たまに営業スマイルよね。本気で笑わないんだから。

 ねえ、くすぐってもいい?」

 

E「怒るわよ」

 

Eは電気ポットのそばにいき、3人分のティーバッグを

紙コップにセットしながら、思い出していました。

 

Cにスカウトされたあの日をーー。

 

 

 

それは去年の2月。今から2か月前のこと。

 

Eは、他校の対立グループをたった一人で片付けた後、

ボスのAに報告に行く前に、

学校の裏山で煙草を吸っていました。

 

(なんだろう。すべてがむなしい・・・)

 

すると突然、横から声がしました。

「いーけないんだー、この山では禁煙よー」

 

Eがはっと振り向くと、そこにはかねてから

Aとそりの合わないCが立っていました。

 

Cの顔は少しけがをしていました。

 

E「・・・C。またAの張り手を喰らったの?」

 

C「ちょっとね。・・・私はケンカ、弱いから。

 でも、口げんかはで負けないようにしてるのよ」

 

E「・・・バカね。逆らわないのが一番いいのに。

 もしくは速攻で逃げたらいいわ、Pみたいに」

 

C「嫌よ。私は、逃げない。こびない。立ち向かうの」

 

E「なにそれ。少年漫画の読み過ぎね。

 あっちにいって。私はあなたの敵側よ」

 

CはそのままEの横に座ります。

 

E「なによ」

 

C「ねえ、E。Aのそばにいて、楽しい?」

 

Eはぎょっとして、Cの顔を呆然と見つめました。

E「・・・」

 

C「どうして黙ってるの?」

 

E「・・・そんなこと・・・考えたことなくて・・・」

Eの心に『楽しい?』がリフレインしました。

 

EはCから顔をそむけました。

 

Cがまた言います。

 

C「ねえ、E。私と手を組まない?」

 

 

 

 

 

  3

 

EはCの言葉に眉をひそめました。

 

E「寝言を言わないで。熱でもあるの?」

 

C「熱に浮かされてるわ、いつでもね。

 私はこのあたり一帯を平和にしたいの」

 

E「ふっ、だから、少年漫画の読みすぎ。平和って何」

 

C「この町はダウンタウン並みに不良が多すぎるの。

 落書き、かっぱらい、恐喝、夜遊び、バイク音・・・。

 そんなのが日常だなんて、我慢できない。

 普通にみんなが暮らして、普通に気分よく歩ける・・・

 それを当たり前の場所にしたいの。ずっと夢なのよ」

 

Cがまっすぐな目で心から訴えてくるため、

Eは胸の奥から、何かがこみあげるのを感じながらも、

むりやり吐き捨てました。

 

E「そっ・・・そんなの、警察に任せなさいよ。

 それともスケバン刑事でも探してるの?」

 

C「それよ。あなたが、それやって」

 

E「・・・むちゃくちゃよ・・・なんで私が・・・」

 

C「もう一人、候補がいるの。Jっていうんだけど」

 

E「・・・ああ、一つ上の学年の、妙に明るい人?

 確かに、ケンカは強いらしいけど・・・

 なんか、風船みたいな人でしょ。自由人で」

 

C「そう。でも、他に候補はいないの。力を貸して、E」

 

E「そんなキラキラした目で見ないで。圧ヤバいから」

 

C「待ってるから。いい返事聞かせて。じゃあね」

 

CはEの肩をグッと一度掴んでから、去っていきました。

 

E「・・・あいつ・・・バカなの?・・・」

 

Cが掴んでいった肩が、やけにジンジンしていました。

 

 

数日後。

教室で座っているCの席の前に、

Eが腕を組んで立ち、Cを見下ろしました。

 

E「・・・で?寝言の作戦はあるの?」

 

C「ふふ。そうこなくちゃ」 ・・・・・・。

 

 

 

Eが生徒会室の窓際で回想していると、

CがEの横に立ちます。

 

C「お茶が出てくる前に、夕方になりそうよ」

Cはポットのお湯を紙コップについでいきます。

 

E「・・・ごめん。ぼーっとしてた」

 

C「いいのよ。アンニュイな横顔を堪能したわ」

 

E「なにかしら一言つける人ね」

 

CはEに微笑みながら、みんなのお茶を運びました。

 

Jは近辺の地図をひらひらさせて見せます。

 

J「ねね、この辺の不良グループは断捨離済みでしょ?

 次はどこに行く~?」

 

Jにとっては、

討伐がまるでピクニックのようです。

 

E「会長、ブレイクしましょう。苺大福もありますよ」

 

J「わ~、これ大好き~!!」

 

C「甘酸っぱくて、いいですよね」

 

3人でほっこりしながら、お茶を飲みました。

そこはかとなくストロベリーの香りが漂います。

 

E「ところでJ会長。

 明日、転校生が1人来るそうです」

 

J「へー、そうなんだ。どんな子かねえ」

 

C「アチダ県からだそうです。

 あそこは緑の多い、のんびりした所だから、

 きっと素朴な人でしょうね」

 

J「素朴な子かあ、大歓迎だよ~。

 苔みたいに、気づくと増えてたらいいね」

 

C「うふふっ、しっとりした学校になりそう」

 

E「苔・・・?」

 

 

ーーこの翌日、Dが転校してくるのでした。

 

 

 

 

 

(「見えない勧誘」終)