小説です。「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。
(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。
登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。
前作を読まなくても大丈夫です。)
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登場人物名は、アルファベット表記です。
A(3-5 スケバンのボス) 悪久亜 アクアB(2-3担任・家庭科担当) 芭蕉先生 バブルC(2-3 生徒会副会長) 千枝 クララD(2-3 転校生) 大奈 ディアナE(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデルF(1-1 DIY部) 文子 フェリスG(1-4 DIY部) 月夏 ゲイナH(百輪女子高の教頭) 広瀬先生 ヒラリーJ(3-4 生徒会会長) 純子 ジャニスK(草切男子校2年) 加流 カールL(百輪女子高の校長) 蘭堂先生 リンドンM(1-2 ダズンのヘッド) 正美 マーシアダズン=1年の不良グループ名O(草切男子校3年) 織音 オリオンP(2-3) 風由子 プリシア
では、どうぞ。↓
見えない密室
1
百輪女子高の2年3組の昼休み。
転校生のDは、CとEと一緒にお弁当を広げます。
D「二人とも生徒会の仕事、大変でしょう?
いつも何をしているの?」
E「大したことないわ。学校のイベントのお手伝いとか」
C「あと、町内清掃してるの。ボランティアで」
D「へえ、お掃除?私も手伝おうか?」
E「ありがとう。気持ちだけもらっておくわ」
C「うふふ。生徒会役員だけの特別清掃だから」
D「・・・特別な清掃?ふうん?」
そこへ、担任のB先生がやってきました。
B「お、E。クラス委員。ちょっと」
ドアから上半身だけをのぞかせた先生は、Eを手招きします。
E「はい」
Eは眉をひそめて立ち上がり、廊下に出ました。
E「なんでしょうか」
B「今日の放課後、家庭科室に来て欲しいんだけどさ」
E「なぜですか」
B「授業の準備を手伝って欲しいんだ」
E「・・・クラス数人、集めましょうか」
B「いや、君だけで用が足せるから。頼むな。
待ってるから」
E「バイトがあるので無理です」
B「すぐ終わるからさ。君にしかできないし」
Bは小声でEに「誰にも言うんじゃないよ」と耳打ちし、
すぐに体を離しました。「じゃあね」
Bは人差し指で、Eの肩から肘までを滑らせると、
職員室の方に歩いていきました。
Eはとっさに両腕を抱きしめ、一度ぶるっと身震いをした後、
目を閉じ、深く息を吸って吐き、ようやく教室に戻りました。
C「またご指名?」
E「寒気と頭痛がする」
D「大丈夫?あ、薬、持ってるわよ。どこだっけ」
Dがブレザーとスカートのポケットを探り始めました。
E「あ、いいわD。これは風邪じゃないの」
Eは頭痛を逃がすように、指先でこめかみを揉み、
何かを考えるかのように黙り込みました。
CはそんなEの様子をしばらく見て、口を開きます。
C「ねえ。一人でなんとかしようとしてない?」
E「私の問題だから」
C「ターゲットは今はあなたかもしれないけど、
これは学校の問題じゃないかしら?」
E「そんなに話を大きくしたくないの。
どうやってお灸をすえるか考えてる。
あの先生にだって人生があるし」
C「自分の人生はどうでもいいの?」
E「・・・そんなことは言ってない。けど・・・」
Eは口ごもった後、続けます。
E「手刀で気絶させることは造作もないの。
ただ、それだけでいいのか、とは思う」
Cは机から身を乗り出しました。
C「頼ってよE。助けるわ」
E「・・・信頼していいのかしら?」
C「もちろんよ」
D「何?何?私も手伝えること、ある?」
E「・・・私の作戦としてはね・・・。
実はもう道具をそろえているんだけど・・・」
3人が頭を寄せ合い、Eのロッカーの中身を確認した後、
小声で話をします。
D「え?先生にそんなことするの?」
E「やらなきゃやられる」
C「土壇場になったら、すぐに手刀を出しなさいよ。
伝家の宝刀じゃなくて日用品でしょう?
それとD。あなたは入らなくていいのよ」
D「・・・。出来ること、言って。」
E「ありがとう、二人とも。
私で終わりにする、絶対に」
2
Dは小さな手提げかばんを抱えて
すぐさま教室を出ました。
CとEはロッカーの前で、Eの手元を見ています。
C「ペン型の録音機?」
E「そう、ノックするだけ」
Eは動作を確認するように、ゆっくり2回押しました。
E「録音時間18時間。充電済み。360度全方位型」
C「目の前で押したらバレない?」
E「教室に入る前に押すわ。胸に差しておいても、
ほら、ただのペンにしか見えないでしょう?」
C「機能は十分ね。
ただ、あなたが大根役者じゃないといいけどね」
E「・・・それは考慮してなかったわ」
C「緊張してるの?耳が赤いわ」
E「してるわよ。
自分の為に戦うなんて滅多にないから。
怖いのよ、自分が。やりすぎたらどうなるか・・・」
C「やりすぎたっていい。守りなさいよ、自分を」
Eは胸に差したペンに触れ、小さく息を吸いました。
E「・・・わかった」
そのあとEはひとりで生徒会室に入り、
真ん中のテーブルに少し大きな黒い機械を置き、
電気コードやヘッドホンなどをセットして、
また廊下に出ました。
Cは3年の教室に行きます。
生徒会長のJは、自分の席で昼寝をしていました。
C「会長、ちょっといいですか」
J「んあ、何、C・・・今ラーメン食べてたのに・・・」
C「いい夢見てるときにごめんなさい。
今日の放課後、生徒会室で先に待機しててください。
ずっとそこにいて欲しいんです。お願いします」
J「えー?ああ、いいけどさ。
何か企んでるの?面白そうだから教えてよ」
C「あとでじっくりお聞かせしますわ、ふふっ」
一方Dは、家庭科室に到着しました。
が、鍵がかかっていて入れません。
(うわ、ピンチ。どうしよう。職員室でカギを借りないと)
B「D?何やってるんだい?」
後ろから声がして、Dはびくっと肩を震わせました。
D「せ、せせせせ、先生こそ、なんでここに」
B「次の家庭科で使うから、鍵を開けに来たんだけど?」
D「あ、そ、そうなんですか。
あのちょっと、前回の授業で
忘れ物しちゃって、・・・取りたいんですけど」
B「ああ、そうなんだ。いいよ」
Bはカギを開けました。
B「物は何?一緒に探してあげようか?」
D「いえ、自分で探しますから、大丈夫です」
B「あ、そう。僕は横の準備室にいるから、
用事があったら声かけて」
D「は、はい、ありがとうございます」
Bは家庭科室の横の、小さなドアの中に入りました。
Dはそれを見た後、引き戸をあけ家庭科室に入ります。
横の準備室から、小さなカタコト音が聞こえ、
Dは脂汗を流します。
「あれえー、どこだったかなー」と大声を出しながら、
カーテンや棚、テーブルの下などを探る動きをしました。
D「あー、先生、ありましたー。失礼しまーす」
Dが家庭科室で大声を出すと、
B先生が「はいよー」と隣室から返事をするので、
Dは(よっしゃ)と思いつつ、
自分の教室に走って帰りました。
Bは、準備室から家庭科室に続くドアを開けて、
「ふーん?」と家庭科室全体を一瞥しました。
3
放課後になって、2年3組の教室では、
EとDとCが残っていました。
E「じゃあ、行ってくる」
Dは両手を祈るように組んで、少し震えています。
C「もう押しておいたら?それ18時間なんだから」
E「そうね」
Eはカチリとペンをノックして録音状態にすると、
胸ポケットに差し、一人で家庭科室に向かいました。
(全部閉めてある。準備万端ってわけね)
Eは胸元のペンにそっと触れ、
小さく息を整えてから、戸を開けました。
E「失礼します」
中は薄暗く、
Eは一歩踏み込み、
目が慣れるまで静かに立ち止まりました。
そのとき――
「来たね、E」
背後から声がして、Eは肩をびくりと震わせました。
振り返ると、戸の影に隠れていたBが、
ゆっくりと姿を現しました。
B「暗いと落ち着くんだ。
ほら、授業の準備って、集中したいだろ?」
E「電気、つけます」
Eが壁のスイッチに手を伸ばそうとすると、
Bが先に歩み寄り、Eの前に立ちはだかりました。
B「そのペン、いいね。どこ製?」
E「安物です」
次の瞬間、Bの指が素早く伸び、
Eの胸ポケットからペンを抜き取りました。
E「・・・!」
Bはペンを手のひらで転がしながら、にやりと笑いました。
B「ノック式か。便利だよね、こういうの。
・・・録音とか、できたりして?」
Eは一歩後ずさり、距離を取ろうとしました。
しかしBはその動きを見逃さず、ゆっくりと近づいてきます。
B「君、最近冷たいよね。
相談に乗ろうとしてるだけなのにさ」
E「・・・離れてください」
B「怖がらなくていいんだよ。ほら、ペンは返すから」
そう言いながら、Bはペンのノック部分を指で押します。
カチッ。カチッ。
B「・・・あれ? 光らないんだね。
録音機能なんて、ついてないのかな?」
E「・・・」
小さく息を吸い、足を半歩後ろに引きます。
Bはさらに距離を詰め、Eの肩に手を伸ばそうとしました。
B「ねえ、E。君だけでいいんだよ。
誰にも言わないから」
Eはその手を避け、
4
B「そんなに数えてたんだ?かわいいねえ」
E(・・・時間を稼げばいい。
Cたちは、もう動いてるはず)
Bが机を回り込んでくる。
Eは反対側へ下がる。
家庭科室の静けさの中、二人の足音だけが響きます。
B「逃げることないだろ。話をしようよ」
E「・・・話なら、ここじゃなくてもできます」
B「ここがいいんだよ。君と二人きりで」
Bが手を伸ばし、Eに壁ドンしました。
その瞬間――
カシャッ。
小さなシャッター音が、
家庭科室の空気を切り裂きました。
5