民宿に戻ると、Kは尋ねます。
K「ねえE、どっちが美味しかった?」
E「どっちもだよ。Kは?」
Eのどっちつかずの答えに、Kは区別をつけてみました。
K「私は・・・チキンより魚が美味しかったわ」
E「そう、それは良かった」
Eはノートを開いて、訪ねた店名の横に『魚』とメモし、
〇で囲みました。
(E・・・それは、私の好みよね?あなたは?)
Kは胸がキュッとしました。
そんなKの心も知らず、Eは地図のページを開いて、
Kに見せます。
E「さっきはこの道を歩いただろう?
明日は西側はどうかな。
ほら、途中にアイス屋だ。開店時間に合わせようか」
Kはハッとしました。
K「E、アイス、好きなの?うふふっ。意外」
E「いや、君が食べるかな、って。甘いもの、好き?」
K「・・・」
Kはノートをひったくると、ポイっと投げました。
ノートは弧を描き、ちょっと遠くのフローリングに、
スローモーションのようにパサリと落ちました。
E「・・・K?どうした?何か気に障った?」
K「どうして、そんななの?
この旅行は、あなたのためでもあるのよ?!」
E「私のため?とは?アイスが?」
Eはポカンとしました。
声を荒げてしまったKは、反省して肩を丸めます。
K「Eのね・・・えっと、あの、もっと自由にね・・・」
E「ああ、予測不能がいいのか?わかった。
君にはイベントを内緒にしてエスコートするよ」
K「違うの、違うのよ・・・私じゃなくて・・・」
Kはほろほろ泣き出しました。
Eはティッシュ箱を持ってきて、
「・・・君の方が予測不能だ」と背中をさすりました。
K「私、あなたのことで泣いているの」
E「え?どうして?」
Kから見てEは、わがまま放題のボスの元で
身を粉にしてきた人に思えました。
自分のことより人のことに徹するーー。
そんな姿勢のEの過去を、悲しく思ったのです。
K「ずっとずっと、我慢してきたんでしょう?
自分の”好き”を言わないで過ごしてきたんでしょう?
言ってよ。Eの好きなことを。私、私・・・」
E「我慢?いや、別にアイスはなくてもいいけど。
ごめんよ。何が君の地雷なんだい?」
まったく伝わらないので、Kはだんだん腹が立ってきました。
K「もう!私がプランを作るから!Eは何もしないで!」
E「あ、うん。わかったよ・・・」
Eは困ったように頭を掻きました。