小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
【百輪村の人】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)
 
D(大工→建築士)    大吾  デイビッド
L(揚げ物屋)       蘭子  ルイーズ
 
C(牧場主→村の守護霊) 千太郎  クリス
師匠(守護霊・Cの先生)
 
【草切村の人】
J(キックボクサー → インストラクター) 純  ジャック

 

では、どうぞ。↓

 

見えない安息(C編)(2)

 

 

Dの演奏が終わると、JとRが駆け出して、

草原の中で遊びだしました。

 

2人が楽しく笑いながら遊ぶ姿を、

EとKとDの3人はまぶしそうに見ていましたが、

そのうち、昼寝をしてしまいました。

 

JとRも戻ってきて、ごろりと横になります。

 

5人全員が寝てしまったのですが、

それでもCはそこにいて、彼らの寝顔を見ていました。

 

 

そこに、少し大きな風が吹いて、

Cの師匠が姿を現しました。

師匠の姿は、Cにしか見えません。

 

「あ、師匠」Cは立ち上がります。

 

「Cよ。今、どんな気持ちかの?」

師匠が優しく尋ねます。

 

「あ、はい。

 さっき、乱世を生きていた過去世を思い出していて、

 それで、・・・とても懐かしい気持ちになりました」

 

Cは、少し師匠から目を転じて、

広がる青空と草原、

その向こうに連なる山々の稜線を、

ぼんやりと眺めました。

 

そして、ふいに思い出します。

戦ばかりの幾多の過去世では、

決して得られなかった願いを。

 

花の咲く大地、鳥の鳴き声、青々とした草木。

民は幸せに暮らし、子どもたちの笑い声が響く。

家族がいて、友がいて、静かな音楽を聴いて・・・

 

思わず目を閉じたCは、

胸が熱くなるのを感じました。

 

「・・・師匠。

 ・・・ここにすべてがあるんです。

 僕が、ずっとずっと欲しかったものが、

 願っていたものが、やっと叶いました・・・」

 

Cの胸の奥が、静かに揺れました。

人の目には見えぬ一滴の涙が、

かすかに輝きながら草の上に落ちました。

 

すると、Cの視界が

これまでよりも澄んで見えるようになりました。

 

師匠は、ゆっくりと頷きました。

 

「Cよ。おぬしは、今生で死んですぐに、

 『村を繁栄させられなかった』と後悔しておったな。

 

 その気持ちが強すぎて、次の転生も難しく、

 地縛霊になるところじゃった。

 

 そこで、”長い戦いの輪廻”を抜けたご褒美として、

 地縛霊にならぬよう「村の守護霊」という形にして、

 ひそかにおぬしの指導をしておったのじゃよ」

 

「え、そうだったんですか?

 じゃあ僕ずっと、

 ”殻”の中にいたってことですか?」

 

「うむ。だが、今、それが割れた。

 おぬしは自由になった。

 もう百輪村の守護霊をしなくてもよいぞ。

 新しい道を歩んでもいい頃あいじゃ」

 

師匠の提案に、Cは笑みを浮かべ、首を垂れました。

 

「・・・ありがとうございます。

 ですが、もう少し、村の守護をしていてもいいですか?

 DやEたちがこっちに来るまで、待ちたいんです」

 

「うむ。いいだろう。

 おぬしたちは、長年、ソウルメイトだからの。

 全員そろってからどうするか、決めてもよいぞ」

 

師匠はCににっこり微笑むと、

来たときと同じように

風と共に消えていきました。

 

 

(続く)