登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
【百輪村の人】【草切村の人】E(村長&小学校教諭) 栄一 エデンK(理容師・Eの妻) 加恵 カーラR(EとKの息子) 陸 ライアン(ジュニア)D(大工→建築士) 大吾 デイビッドL(揚げ物屋) 蘭子 ルイーズC(牧場主→村の守護霊) 千太郎 クリス師匠(守護霊・Cの先生)J(キックボクサー → インストラクター) 純 ジャック
では、どうぞ。↓
見えない安息(C編)(1)
今日の百輪村は、穏やかに晴れました。
村の守護霊をしているCは、
自分の姿を見ることが出来ない村人たちとすれ違いながら、
畑の様子や人々の生活を眺め、
「今日も良い感じだなあ」と悦に入っていました。
日曜日なので、広場で
村の子どもたちが元気に遊んでいるのを見るのも、
Cにとって心温まる光景でした。
ふと見ると、村長のEが、家族や友人たちと一緒に
村の丘の上に向かって歩いていくので、
Cは興味を持ち、そのあとをついていきました。
彼らがたどり着いた先は、
生前Cが住んでいた牧場の跡地でした。
Eたちはレジャーシートを広げ、
持ってきたお弁当を食べ始めました。
「お茶どうぞ」とEの妻Kが紙コップに紅茶を淹れ、
「たくさんあるから、どんどん食べてくれ」と
Eも次々とタッパーのふたを開けて並べます。
「お外で食べるの美味しいね」と
Eの息子Rがサンドイッチを食べ、
「Lさんの揚げたてのポテトも、もらってきたぞ」
とDが紙袋を開いて場に出し、
「うまい。うますぎる」とJが次々口に入れます。
幽霊のCもまた、ニコニコと微笑みながら、
シートの一角にあぐらをかいて座りました。
もちろん、Cの姿は、Eたちには見えませんし、
お弁当を食べることもできませんが、
それでも、参加できることを嬉しく思うのでした。
しばらくしてから、Dが、
持参したギターを弾き始めました。
「自己流で思いつくまま弾いているんだよ」
などと周囲に説明しながら、つま弾くDの曲に、Kは
「初めて聞いたのに、すごく懐かしい・・・」と涙ぐみ、
Jもまた不思議そうな顔をします。
「オレもどこかで聞いたことあるような・・・」
EとRは初耳だったので、静かに聞いています。
Dの演奏を聞いて、Cは自分の耳を疑いました。
Cは、流れ込む過去生の記憶から、
彼らとのつながりをゆるゆると思い出していきます。
前世、Cは一つの国を治める王で、Kは妹。
DとJは、配下の兵士でした。
「D、その曲、君が過去世で弾いていたな。
懐かしい・・・。よくKと聞いたやつだ。
Jも、Dの部下だったから、どこかで聞いたんだろう。
前は竪琴だったけど、ギターでも代用できるんだね」
「ねえE。”前世では、君は僕の甥で、
僕の妹だったKの息子だったんだよ”って言ったら、
驚くかな・・・?
まあ、それは、あとのお楽しみだね」
Cがひとりでくすくす笑っていると、
Dがなつかしそうな顔で弾き続けながら言いました。
「・・・オレは今、Cにも聞かせてるんだ。
Cの前では、弾いたことないけどな」
「きっと聞いているよ。
・・・Cはそばにいるはずだ」
「今、聞いてるよ、D。
まさか、この曲をまた聞けるとは思わなかったよ」
Cは、こぼれそうになる涙をこらえ、
少し上を見上げます。
なぜだか、Cの心がすうっと軽くなりました。