登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
【百輪村】E(村長&小学校教諭) 栄一 エデンK(理容師・Eの妻) 加恵 カーラR(EとKの息子) 陸 ライアン(ジュニア)D(大工) 大吾 デイビッド【草切村】J(元キックボクサー) 純 ジャック
では、どうぞ。↓
見えない背中(6)
後日、カメラマンに連絡を取り、
Rを抱っこしたEが立ち合いのもと、
Kはスタジオで写真を撮ってもらいました。
出来上がった写真集”傷跡ビーナス・2”は、
たくさんのモデルが紹介されている中で、
Kの写真は1枚だけ、しかも匿名でしたが、
その写真集の表紙にも使われました。
半裸の後ろ姿で、
おろしたウェーブの長髪を手で大きくかき上げ、
首と背中がはっきりわかるポーズ。
顎と口元がちらっと見えますが、誰かはわかりません。
スタジオの柔らかなライトが背中の白い痕を淡く照らし、
まるで宝を指し示すような大きな地図に見えました。
写真集の帯には、こう書かれていました。
『傷は弱さの証じゃない。
生きてきた証だ』
写真集は飛ぶように売れ、さらに増刷されました。
「美しい」「励みになる」
「元気が出た」「勇気をもらえた」
などという、高評価レビューもつきました。
カメラマンから郵送で届いた贈呈本。
Kはリビングのソファで、
表紙にある自分の背中をまじまじと見ました。
「こんな風だったんだ・・・。
もっとひどいのかと思ってた。
・・・ちょっと、自分の背中、好きになれたかも」
横に座っているEは、そっとKの背中に腕を回します。
「オレは、この背中も含めて、Kの全部が好きだよ」
「・・・ありがとう、E」
Eの胸に頭を預けるKに、Eは心の中で伝えます。
(お礼を言いたいのはこっちだよ、K。
君に、どれだけ救われたことか・・・)
百輪村でも、何人かがシティで写真集を購入しましたが、
モデルがKだとは誰も気づいていません。
事情を知らないDも入手し、ほくほく顔です。
「なあなあ、E、この写真集!
予約待ちしてて、やっと来たんだ。見るか?」
遊びに来たEに、Dが見せました。
「ああ、うちにも1冊あるよ」
とEが返事をすると、Dが頷きます。
「そうか。お前も買ったのか。大人気だもんなー。
モデルさん、全員、素敵だよね。
特にこの表紙の人がすごい。
神々しい背中だよな。
力強くて、たおやかで、凛としていてさ」
「・・・そうだな。
影を受け容れた人は強いよな」
と、Eは、静かに微笑みました。
ending music
翼をください ‐ 平原綾香
