小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
【百輪村】
E(村長&小学校教諭) 栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)
D(大工)        大吾  デイビッド
 
【草切村】
J(元キックボクサー)  純  ジャック

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない背中(6)

 

 

後日、カメラマンに連絡を取り、

Rを抱っこしたEが立ち合いのもと、

Kはスタジオで写真を撮ってもらいました。

 

出来上がった写真集”傷跡ビーナス・2”は、

たくさんのモデルが紹介されている中で、

Kの写真は1枚だけ、しかも匿名でしたが、

その写真集の表紙にも使われました。

  

半裸の後ろ姿で、

おろしたウェーブの長髪を手で大きくかき上げ、

首と背中がはっきりわかるポーズ。

顎と口元がちらっと見えますが、誰かはわかりません。

 

スタジオの柔らかなライトが背中の白い痕を淡く照らし、

まるで宝を指し示すような大きな地図に見えました。

 

写真集の帯には、こう書かれていました。

『傷は弱さの証じゃない。

 生きてきた証だ』

 

写真集は飛ぶように売れ、さらに増刷されました。

「美しい」「励みになる」

「元気が出た」「勇気をもらえた」

などという、高評価レビューもつきました。

 

 

カメラマンから郵送で届いた贈呈本。

 

Kはリビングのソファで、

表紙にある自分の背中をまじまじと見ました。

 

「こんな風だったんだ・・・。

 もっとひどいのかと思ってた。

 ・・・ちょっと、自分の背中、好きになれたかも」

 

横に座っているEは、そっとKの背中に腕を回します。

 

「オレは、この背中も含めて、Kの全部が好きだよ」

「・・・ありがとう、E」

 

Eの胸に頭を預けるKに、Eは心の中で伝えます。

 

(お礼を言いたいのはこっちだよ、K。

 君に、どれだけ救われたことか・・・)

 

 

百輪村でも、何人かがシティで写真集を購入しましたが、

モデルがKだとは誰も気づいていません。

 

事情を知らないDも入手し、ほくほく顔です。

 

「なあなあ、E、この写真集! 

 予約待ちしてて、やっと来たんだ。見るか?」

 

遊びに来たEに、Dが見せました。

 

「ああ、うちにも1冊あるよ」

とEが返事をすると、Dが頷きます。

 

「そうか。お前も買ったのか。大人気だもんなー。

 モデルさん、全員、素敵だよね。

 

 特にこの表紙の人がすごい。

 神々しい背中だよな。

 力強くて、たおやかで、凛としていてさ」

 

「・・・そうだな。

 影を受け容れた人は強いよな」

と、Eは、静かに微笑みました。

 

 

 

 

ending music

 

翼をください ‐ 平原綾香

 

 

 

 
 
 
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(おまけ)
 
KがEに背中を見せた過去の話はこちらです。
ご興味のある方はどうぞラブラブ