小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
【百輪村】
E(村長&小学校教諭) 栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)
D(大工)        大吾  デイビッド
 
【草切村】
J(元キックボクサー)  純  ジャック

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない背中(2)

 

 

ところがーー。

 

 

砂浜にビーチパラソルを広げたレジャーシート。

 

髪型は普段通りに左右に三つ編みにして、

ワンピースの水着にフード付きのパーカーを着たKが、

青い顔で座り込んでいます。

 

両手で自分を抱えるようにしています。

 

「大丈夫か、K。無理しないで」

息子のRに日焼け止めを塗りながらも、

妻の様子をちらちらと気にするE。

 

「う、うん。私のことは気にしないでね。

 ジュニアと遊んできて」

 

「パパ~、早く~。海のとこ、行こ~」

ジュニアことRが、ぐいぐいとEの手を引っ張ります。

 

「ああ、わかったよR。じゃあね、K。

 ちょっと遊んで、すぐ戻るからね」

 

「いってらっしゃい」

 

「いくぞ、ジュニア」

 

「きゃははは」

 

Eは片手に浮輪、もう片方の手でRと手をつなぎ、

ザザーンと音のする波打ち際に走りました。

 

残ったKは、ひとつ大きなため息をつき、

体育座りで膝を抱えました。

 

(ちょっと背中を出すだけよ。

 誰も見てないし、誰も後ろ指をさしたりしない。

 うん、そうよ、頑張れ、K)

と、自分を鼓舞しますが、やはりパーカーを脱げません。

 

足と腕にゆっくりと日焼け止めを塗ったあと、

夫と息子が遠くの波打ち際で足を洗っているのを

ぼんやりながめました。

 

(楽しそう。パーカーを着たまま、遊ぼう)

 

Kは、ビーチパラソルから出て、2人に近づきました。

 

「K、来たのか」EとRがうれしそうに迎えます。

「ママ~、お水が行ったり来たりするよ~」

「本当ね。面白いわね」

「K、もう、それを着たままでいいんじゃないか?

 チャレンジはまた今度にしよう」

「うん、そうよね」

 

Kは、背中のことをいったん忘れて、

EとRが浅瀬で泳いでいるのを見たり、

3人で砂で山を作ったり、

パラソルの下でかき氷を食べたりしました。

 

楽しくなってきたKがふと周りを見ると、

水着姿の海水浴の人々がたくさん歩いていて、

堂々と体をさらしています。

 

(みんなも、普通に体を出しているわ。

今なら、出来そうかも・・・)

 

Kは少し勇気が湧き、

食べ終わったかき氷の器をレジャーシートの脇に置いて、

パーカーをそっと脱いでみました。

 

ぱっくりとあいたワンピースの背中から、

大きなやけどの跡が見えます。

 

Rはかき氷に夢中でしたが、Eの方は、

Kをちらっと見て、無言でいました。

 

「・・・出来たわ、E」とちょっと涙目のKに、

Eがうん、と軽く頷きます。見つめ合い、微笑みました。

 

そんなとき、後ろで、パシャと音がします。

 

少し離れた場所に大きなカメラを構えた男性がいて、

Kの背中を撮影したようでした。

 

EはすぐさまKの肩にパーカーをかけて立ち上がりーー

 

 

(続く)