登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
【百輪村】E(村長&小学校教諭) 栄一 エデンK(理容師・Eの妻) 加恵 カーラR(EとKの息子) 陸 ライアン(ジュニア)D(大工) 大吾 デイビッド【草切村】J(元キックボクサー) 純 ジャック
では、どうぞ。↓
見えない背中(1)
「E、私、水着を着てみたいの」
と、妻Kが言い出したので、村長Eは驚きました。
Kは時々、とっぴな発言をするので、
Eはそのたびにのけぞってしまいます。
「え?突然、どうしたんだ、K?
新婚旅行の時、あんなに水着を嫌がってたのに」
Kは、幼い頃に親の虐待を受けて、
背中に大きなやけどの跡があります。
心の傷は癒えているものの、
外側の傷は人目を気にしてしまう女心。
Kは一度も、外で背中をさらしたことはありません。
EとKが新婚旅行で海沿いの街に長逗留した時、
誰も泳いでいない岩場の影でEが
「海がきれいだよ、K。泳いでみる?水着買おうか?」
と尋ねましたが、
そのときKは強く首を横に振ったので、
それ以上勧めることはありませんでした。
Kの真意を測りかね、Eは尋ねます。
「水着って。
ファッションとして身につけたいの?
それとも泳ぎたいのかい?」
「えっと、外で背中を出す、
っていうチャレンジなのよ。
でも、おおっぴらに見せたいわけじゃなくて、
さりげなく、乗り越えたいの」
「なんでまた、そんなことを?」
「この間の、Jさんの炎上事件があったとき、
テレビカメラの前で誠実な態度だったJさんを見て、
なんか、勇気をもらったの。
私ももっと、堂々と、
ありのままの自分として立ちたいの」
「ああ、そうなんだ。・・・わかった。協力するよ。
家族3人で、またあの海に行こうか?
もうすぐ夏休みだから、すぐに行けるよ?」
「うん、そうね。ジュニアも初めての海で、
きっと喜ぶと思うわ。
シティで3人の新しい水着を買いに行かない?」
と、ウキウキした顔でいるKです。
(本気なんだな)と思ったEは、
新婚旅行の時にお世話になった民宿に
連絡を取ることにしました。
また、マブダチの大工Dにも
「すまないが、2~3日、家族で留守にするから、
その間、村を頼んでいいかい?」とお願いすると、
Dは胸をたたいて「おう、任せとけ」と言いました。
水着を入れた鞄も切符も宿泊の手配も整い、
E一家は、コチダ国の海沿いの街に出かけました。
「海どこ?お船、いっぱい?」
と、電車の窓から外を覗いて、長男のRも嬉しそうです。
「もうすぐ見えるよ」「楽しみね、ジュニア」
EもKも、Rのはしゃぐ声に顔をほころばせました。
(続く)