小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
【草切村】
J(インストラクター)  純  ジャック
ν(草切村の子)     新汰  ニューロ
ξ(草切村の子)     薫士  クインシー
 

【百輪村】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない距離(4)

 

 

アスレチックジムのフローリングの上で、

νとξの2人が座ったところの
真ん中辺に向かい合うように
Jも腰を下ろしたので、位置が正三角形になります。
 
「えっとね、先生は、最近、よく壁際にいるよね。
 それはね、みんなをよく見渡せる場所だからだよ。
 それには気づいてた?」
 
とJが言うと、二人は頷きます。
 
「うん、それでさ、用がある人には来てもらってるよ。
 ここの子どもたち、全員にね。それもわかってた?」
 
また頷く二人。
 
「で、νは話があったからここに来たんだよね。
 だから、ぜんぜんずるくないよ。うん」
 
νは、ほっとした顔をしました。
 
納得のいかないξがムッとします。
「νは、話が長すぎるんだよ。先生のそばに居過ぎだ」
 
Jは首をかしげました。
「・・・なんか、ξって、他の子と先生が話してるときは
 ずるいって言わないよね?どうしてνだけはずるいの?」
 
ξは、ハッとした顔をして、少し黙りました。
 
Jとνは、しゃべるのを待ちます。
 
「もういい」とξが立ち上がりそうになったところを、
Jがその腕をそっと掴んで、
「怒らないよ。だから聞かせてよ」と声を掛けました。
 
ξは、うつむいて
「・・・だってこいつ、お父さんがいないからってさ、
 学校の先生たちもみんなνに優しくしててさ・・・。
 それって、ずるいじゃないか」
と言いました。
 
それを聞いてνは、ボロボロと涙を流しました。
 
「じゃあ、僕に!君のお父さんをちょうだいよ!!
 そしたら、君が優しくしてもらえるんでしょ?!
 僕は優しくされるより、お父さんがいいよ!!
 君の方がずるいよ。お父さんが生きててさ!」
 
ξは、「やだやだ。お父さんはあげない」と泣きました。
 
νは、「ずるいよ、ξはずるいよ」とさらに泣きました。
 
もらい泣きしながらもJは2人ににじり寄ると、
二人の小さな頭を抱き寄せました。
 
「2人とも、ずるくない。持っているものが違うだけだ。
 それだけだよ・・・比べちゃだめだよ・・・」
 
3人が寄せ合って泣いているところに、
いつの間にか他の子たちが静かに集まっていました。
 
 
その後、νとξは親友になり、一緒に壁を上ったり、
綱上りを楽しんだりするようになりました。
 
 
 
後日、カフェバーのカウンターでJから話を聞いて、
横に並んで座っているEは嬉しそうに頷きました。
 
「すごいな、距離の調整で万事うまくいったんだね」
 
「うん。そっちは解決したんだけど・・・」
 
JはちらりとEを見ました。
「・・・あのさE、
 オレ、今まで距離感、間違ってた?
 やたらとEやDのコートに入ってた?」
 
複雑そうな顔のJに、Eは苦笑い。
 
「気にするなよ、そこがJのいいところなんだから」
 
途端にJの顔がパーッと明るくなり、
「だよねー!」と気さくにEの肩に腕を回すと、
「近い近い」とEは笑いました。
 
 
 
 
ending music
 
君に捧げる応援歌 - HIPPY