小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
【草切村】
J(キックボクサー)    純  ジャック
ο(Jの元セコンド)   臣久  オマール

【百輪村】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド

 

 

今回は、Jの話です。

 

第43章と第78章にまつわるエピソードもありますが、

無理して読まなくても大丈夫です。

 

 

🌟Jがボクシングを始めた経緯&結婚の話はこちら↓

 

 

 

🌟Jが戦争に行った話はこちら↓

 

 

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない声(6)

 

 

そのライブ放送があった数十日後、隣のアチダ国で、

とある特別番組が放送されました。

 

「元・敵国の兵士をほめるのはどうかと思い、

 今まで差し控えていましたが・・・」

 

画面の向こうで、老兵たちがゆっくりと頷きます。

 

語られる声には、恨みも批判もなく、

ただ彼らが見たままの事実が語られていました。

 

その番組では、

望遠を引き延ばした1枚の写真も出されました。

 

激戦で砂煙の上がる背景に、

曲がったヘルメットで無心に穴を掘る軍服姿のJ。

 

その姿は、戦う者ではなく、ただ一人の男が、

仲間の帰る場所を静かに作っているように見えました。

 

ネット民の中には、

「合成の写真ではないか?」という

疑問の声も上がりましたが、それは

アチダ国の有名な戦場カメラマンが撮影したものでした。

 

そのカメラマンが、

「自分の写真への誹謗中傷だ。

 ネット民を訴える」と言い出したので、

ネットで騒ぐ匿名の声は急速にしぼみました。

 

コチダ国内でJをたたく世論の声は少しずつ消えていき、

さらには、ずっとJを訴えていた遺族たちも、

そっと告訴を取り下げました。

 

 

Jの生活は、やっと平穏を取り戻しました。
 
報道関係者は来なくなり、
草切村に漂っていた緊張も
ゆっくりとほどけていきました。
 
Jのアスレチックジムも、静かに再開しました。
 
生徒の子どもたちも、「J先生~!」と
以前のように屈託なく慕ってきてくれました。
 
様子を見に来たEとDに、Jが言います。
「なんか知らないけど、急に静かになったよ。
 オレの人生、まだ、終わりじゃないみたいだね・・・」
 
Dは「当たり前だろ。
 そんな簡単に終わってたまるかよ」
と、にかっと笑いました。
 
「だな。・・・まあ、でもさ、
 青コーナーにあんなに敵が無数にいてさ、
 さすがのオレも、無理ゲーに思えたよ」
と、ため息をつくJ。
 
Eはそれに答えて言いました。
「J。あれは、リングの外の声だよ。
 聞かなくていい声だ」

 

Jは小さく笑い、空を見上げました。

「マブダチ、最高」

 

 

 

 

 

 

ending music

 

ff(フォルティシモ)- HOUND DOG