小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド
S(ラーメン屋)      進  スタン
 
F(Dの弟子・大工)   文也  フランク
G(Dの弟子・大工)    弦   ジョージ
O(Sの妻・スタイリスト) 織江  オリーブ
T(八百屋・車椅子使用)  拓郎  テッド  

 

では、どうぞ。↓

 

見えない勇気(2)

 

 

後日、百輪村の入口に大きな軍用車が停まりました。

濃いオリーブ色の車体には、威圧感があります。

 

DとSは村のみんなに急いで隠れるよう指示され、

壊れかけの納屋に身をひそめました。

 

村長のEが、車から降りた制服姿の士官の前に立ち、

「何か御用でしょうか?」と穏やかに挨拶をしました。

 

軍人たちは、村の様子をぐるりと見渡した後、

「国家の危機です。若者をお貸しください」と

Eに頭を下げました。

 

DとSを除いた村の皆は、軍人たちとEのそばにいて、

新たな試練に震えました。

 

「村の者は道具ではないので、お貸しできません」

と、Eが静かに答えると、士官たちは

「では、言葉を変えましょう。

 若者には召集に応じていただきます」と告げ、

近くにいたFやGを指さし、

「君たち、車に乗りなさい」と言いました。

 

それを納屋で聞いていたDが立ち上がろうとするも、

横にいたSがDの服をひっぱり、小声で言います。

 

「Dさん、出ちゃだめですよ」

「だが、弟子が・・・息子が・・・」

Dにとっては、FもGも我が子同然でした。

 

指名されたFとGは、

毅然とした態度で、士官に言いました。

「行かないっす」「車には乗りません」

 

軍人たちは驚いて、二人を見ました。

 

「なぜだ。国家を守るのが国民の務めだろうが?」

 

「武器を持っても、誰も幸せにならないからっす」

「国を守るなら、ここで守ります」

 

村長のEも、続けて言いました。

「この場所も国家の一部です。ご理解願います」

 

士官は言い返す言葉を失い、苦い顔で帰りました。

 
 

翌日には、今度は軍の上層部が大掛かりな説得に来ました。


村長のEは上層部の人であろうといつもの様子で、

「何度来られても、答えは同じです。

 私たちの村では、無益な争いを好みません。

 話し合いの場を設けて、ウィンウィンを探る。

 それが、ここでのルールです」

と言いました。

 

「ふざけるな!お前たちは全員、非国民だ!」

と、軍人の一人がEの横面を激しくはたきました。

 

パンと乾いた音がして、村人たちは息をのみます。


しかしEだけは、

何事もなかったかのように顔を上げました。

 

片方の頬が赤くなったEは、

ふっと鼻で軽く笑って、静かに見返すだけです。

 

Eと村人たちが全員、軍人を見つめて無言でいるので、

軍部の人たちは居心地が悪くなり、

「どうなっても知らんぞ」

と捨て台詞を吐き撤退しました。

 

軍用車が見えなくなった後、Eは村民に指示を出しました。

 

「とにかくたくさん、小さい防空壕を作りましょう。

 火の見やぐらも作って、交代で見張りましょう。

 

 食材もいつもより多めにストックしてください。

 貴重品は持ち出しやすいよう小さくまとめるように。

 いつも動きやすい服装でいてください」

 

DもSも、もう隠れるのはやめました。

そして、村のためにと防空壕をみんなで作りました。

 

 

(続く)