小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド

 

では、どうぞ。↓

 

見えない軌道(3)

 

 

1か月ほどが経ち、

先日やってきた鉄道関係者の、

丸顔の人とメガネの人が

再び百輪村にやってきました。

 

村長のEが村人たちをどのくらい説得できたか、

進捗を聞きたかったからです。

 

するとEは、もらった地図を出しました。

 

そこには新たに、

緩く湾曲した赤い線が引かれています。

 

「どうぞごらんください。

 百輪村で考えた、新しい軌道です。

 

 これでしたら山間をうまく通るので、

 予定のトンネルを2つ作らずに済むはずです。

 

 そして、この町とうちの村を

 避けることが出来ますので、

 買収費用も抑えられるでしょう。

 いかがでしょうか?」

 

鉄道関係者2人は、

そんな話が出てくるとは夢にも思わず、

ぽかんとするばかりでした。

 

丸顔の方が、絞り出すような声を出します。

 

「いや、でも、計画が・・・」

 

「計画はその都度、良い方に軌道修正された方が

 良いのではないでしょうか?

 わざわざ悪手を握りしめる必要はないでしょう?」

 

Eの言葉に、今度はメガネの部下が言い訳をします。

 

「も、もう決まっていることを、あの、その・・・

 変更するのは、時間もお金もかかりますし・・・」

 

「トンネル2つ分よりも、ですか?

 どうしても百輪村に通すのなら、その理由を、

 私たちが納得できるよう、説明していただきたいです。

 

 起伏のある地形に線路を通す計画でありながら、

 画用紙に一本の線を書いているだけの様子なのは、

 いかがなものでしょうか」

 

鉄道関係者たちは顔を見あわせ、渋い顔をします。

 

メガネの部下が、名案を思いついたように言いました。

 

「けれど、これは、優秀な有識者たちの計画で、

 考え抜かれたアイデアでありまして・・・」

 

Eはさらに別の角度から切り込んでいきます。

 

「では、ほかの省庁に問い合わせていただきたいのですが、

 百輪村はかなりの額の税を支払っております。

 百輪ブランドの野菜や家具、卵などで。

 

 それが全部なくなりますが、

 コチダ国としては、それで構わないのですか?」

 

丸顔の男性は、ハンカチで汗を拭きまくります。

 

「え、は、いや、その、その件はですね、あの・・・

 そ、それは私どもの管轄外ですから・・・!!」

 

Eはゆるりと二度ほど頷きました。

 

「管轄外ですか。ですが、このような

 一大プロジェクトなのですから、

 コチダ国全体を俯瞰すべきことでしょう?

 

 もしよろしければ、そちらの会議にも

 うちの村の全員を

 参加させていただくことは可能でしょうか?

 ぜひ、お話をさせていただきたいです。

 

 うちの村の者は、難しい会議でも理解が早いので、

 きっと有意義な議論ができますよ。

 

 ・・・それから、これはうがった見方で恐縮ですが、

 わざと実現不可能な計画を立てて

 無造作に国家予算を引き出そうとするおつもりですか?

 

 ふふ。まさか、そんなことはなさらないですよね?」

 

Eが小首をかしげながらとどめの笑顔を向けると、

 

「じ、上司に報告しますので!!」

 

と、丸顔の男性が赤い顔で捨て台詞。

 

彼らは、逃げるように去っていきました。

 

 

その後、百輪村に敷設する話は

まったく来なくなりました。

 

それは、Eの熱弁が功を奏したというより、

Eを筆頭とする百輪村のことが、

単に面倒くさい相手だと思ったため、

しぶしぶ計画の軌道をずらしたようでした。

 

その後、新しい鉄道建設の話は

コチダ国内で大々的に着手されました。

 

が、結局、元々の計画がずさんだったせいか、

あちこちで見切り発車した工事は遅れに遅れ、

国家予算の請求額も跳ね上がるばかり。

 

いつになったら完成するのか、

めどが立っていないようでした。 

 

 

百輪村は、今日もまったりと時間が流れ、

空のトンビは、きれいな円の軌道を描いていました。

 

 

 

 

ending music

 

Sundial Dreams - Kevin Kern

 

 

 

 

 

(このお話はフィクションです。

 実在の物事とはまったく関係がありません)