小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド

 

では、どうぞ。↓

 

見えない軌道(1)

 

 

爽やかな風が木々を通り抜け、

四季折々の花が咲き、鳥たちが楽しそうに歌う・・・。

 

そんないつもの百輪村に、

ある日、ふたつの黒い影が近づきました。

 

それは、コチダ国の鉄道関係者でした。

 

丸顔で一見人当たりのよさそうな中年男性と、

その部下らしい、逆三角の顔をしたメガネの男性です。

 

スーツには同じ社章をつけており、

ピカピカの靴で歩きにくそうに村道を歩いてきました。

 

出迎えた村長のEが話を聞くと、

これまでの科学の叡智をつめこんだ

最新で最速の鉄道を国の端から端まで通すことになり、

それが百輪村を横断する形になるため

村ごと退去して欲しい、という内容でした。

 

すると、Eがもっと詳しい話を聞きたい、

と身を乗り出したので、

鉄道関係者の2人は、大いに喜びました。

 

彼らはEに、持参した地図やら完成予想図など、

現時点での資料をたくさん取り出しました。

 

そして、すらすらと説明をしていきます。

 

丸顔の上司の人は、

慣れた手つきで資料の束を閉じると、

満面の笑みで言いました。

 

「・・・というわけで、立ち退いてくださるなら、

 今なら村の皆さんに一定額の

 助成金を差し上げようと思っております」

 

そして、小声で、Eに持ちかけました。

 

「もし村人たちの移住を手伝ってくれるなら、

 村長のあなたにだけは、

 さらに特別な新居をご用意いたしますよ」と。

 

「ふふっ。なるほど・・・。

 すみません、この資料をしばらくお借りしても

 よろしいでしょうか。

 村の皆さんに、会議でしっかり説明したいので」

とEが言うと、

彼らはよろこんでコピーをくれました。

 

来客が帰った後、Eはさっそく全村民会議を開きました。

 

Eから説明を聞いた百輪村の皆は驚き、

慌てふためきました。

 

「こ、ここを出ていけって言うのか?」

「村ごと立退きだなんて、ひどい」

「突然過ぎない?」

「どこへ行けばいいの?移転先ってあるの?」

「お金だけもらったって困るよ」

「横暴だ」

「戦うしかない」

「死守だ!」

 

 

(続く)