小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
U(バーテンダー)    梅吉  ウニー
T(八百屋)       拓郎  テッド  
μ(無職の青年)     未宇  ミルトン
 
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
D(大工)        大吾  デイビッド

 

では、どうぞ。↓

 

見えない使命(3)

 

 

その後、晴天の日になると、

体の大きなμがTの家にやってくるようになりました。

 

「おはようございます。Tさん、散歩しましょう」

 

Tは妻とμに手伝ってもらいながら、車いすに移ります。

 

「では、旦那さんをお借りします」

 

「いってらっしゃーい」

 

μと妻の声は明るいのですが、

Tは終始、むっつり顔でした。

 

車椅子に乗っている間もTは口が真一文字。

μもまた黙ってゆっくりと車椅子を押します。

 

無言のまま1時間ほど同じルートで村をめぐり、

また静かにTの家に帰りつきます。

 

μは、Tをベッドに戻すと、

「じゃあ、また」と言って、帰っていくのでした。

 

 

そんな習慣をずっと続けているうちに、

とうとうTは振り向いて、

車椅子を押すμに言いました。

 

「なあ、おい。

 オレたち、今、何の役にも立ってないよな。

 ただ、村を意味なく回っているだけだ。

 一銭の得にもならねえ。

 お前も、こんなことしなくたっていい。

 なんか別の仕事を見つけて、働いてくれよ」

 

μは驚いて、車いすの前方に回り込みました。

 

「Tさん、僕が押す間、働いてなかったんですか?

 頼みますよ、ちゃんとやってくれないと」

 

「は?」

 

「村長に聞いてなかったんですか?」

 

Tはうろたえました。必死になって記憶をたどります。

 

「え・・・Eはただ、散歩してくれって・・・」

 

「ただの散歩じゃありません。

 僕らには、大事なミッションがあるんですよ」

 

「ミッション?・・・スパイ活動か?」

 

Tは、思わずハッとした顔をしました。

 

μは、すぐそばに咲いている花を一輪、

プチリとそっと手折ると、Tに握らせました。

 

「この花と同じ仕事です」

 

「何を言ってるんだか、よくわからないんだが?」

 

μはTの言葉に何度か頷きます。

 

「・・・僕も初めて同じことを村長に言われたとき、

 意味がよくわかりませんでした。

 なので、村長の受け売りですけど・・・」

 

と、μは、苦笑いをしながら、話を続けます。

 

「僕、この村で、うまい仕事が見つからなくて。

 何をやっても上手にできなくて、家で凹んでました。

 そうしたら、ある日、村長が散歩に誘ってくれて、

 一緒に歩いてくれたんです。

 

 村の中、いつも花盛りじゃないですか。

 それを指さして、村長が言ったんです。

 

 『μ、村には花がいっぱいだね。たくさん咲いてるね』

 『これを、舞台のペンライトと思って見て。

  一つ一つの花が、

 百輪村の舞台を明るくしてくれてるんだよ』

 って」

 

「・・・」

 

「それで、村長が、僕に頼みがあるって。

 『μ、出来るときでいい。村を笑顔で歩いてほしいんだ。

 そうしたら、その一つ分、村が明るくなるから』って」

 

「・・・」

 

「だから僕、村を歩くときは、絶対に笑顔でいるんですよ。

 それが僕のミッションです」

 

Tは手元の花を見つめ、ボタボタと涙を流しました。

 

「・・・すまなかった、μ・・・。

 正直言って、お前のことずっと、

 村のごくつぶしみたいに考えてた。

 ほんとうにすまん。

 

 お前はずっと・・・

 オレよりもよっぽど役に立つ・・・

 立派な仕事をしてたんだな・・・

 オレ、何も気づいてなくて・・・」

 

肩を震わせるTに、μは、にっこりしました。

 

「いいんですよ。

 僕もぜんぜん知らなかったんですから。

 村の花がすごい仕事をしてるって」

 

 

それからというもの、

「これでどうだ?μ」

「はい、Tさん。OKです」

と、お互いの顔面チェックをして、Tの家を出ます。

 

百輪村のみんなは、

はじけるような笑顔で巡回する二人を見て、

「いつもご機嫌でいいね」

「こっちもついつい笑っちゃうよ」

「今日も笑顔パワーをありがとうな」

などと言いながら、笑顔を返し、手を振るのでした。

 

こうして百輪村では、

密かなミッションが常時行われているのです。

 

 

 

 

ending music

 

世界に一つだけの花 - SMAP

 

 

 

 

 

 

******

 

(お知らせです)

 

皆さま、いつも小説を読んでいただき、

本当にありがとうございますニコニコラブラブ

 

最近、章のまとめをやっていなかったので、

1月31日(予備日・2月1日)は

小説を一旦休んで、ブログの整理をします。鉛筆

(目次ページの編集です↑)

 

なので、何度も更新通知が届くと思うので、

それが気になる方はご面倒ではございますが、

上記の日程の間は

「通知を希望しない」に設定をお願いします。メモ

 

過去記事のまとめが終わり次第、

小説を再開いたします虹

 

以上 お知らせでしたお願い乙女のトキメキ