登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
発明家 (No name)D(大工) 大吾 デイビッドL(揚げ物屋) 蘭子 ルイーズ
E(村長&小学校教諭) 栄一 エデンK(理容師・Eの妻) 加恵 カーラR(EとKの息子) 陸 ライアン(ジュニア)
では、どうぞ。↓
見えない稼働(1)
ある日のこと。
いつも平和でのんびりしている百輪村に、
突然、一体のロボットが出現しました。
それは、村に住む発明家が作ったものです。
スタートボタンを押した人間のデータが
微量な生体電気を通じてインプットされ、
その人の仕事を一日やってくれる、
という触れ込みでした。
村のみんなは、二足歩行が可能な人型の銀色ロボを
遠くからじっと見るだけです。
だれも試そうとはしません。
発明家はしょんぼりして、
「誰か、試しにやってもらえませんか?」
とさめざめと泣くので、
同情した大工のDが、
「よし、じゃあ俺が押そう」と
スイッチを入れました。
すると、ロボの目がぴかっと光り、
「よっしゃ、今日も頑張るぞ!」
と、Dの口調を真似てしゃべり出しました。
みんなは、「おお!」と声を上げます。
ロボはDの工具箱を開け、ハンマーと釘を取り出すと、
修復中の家の屋根にはしごをかけて
トンカントンカンと修理を始めました。
作業をする姿も、ちょっぴりガニ股で歩く様子も、
まるでDそっくりです。
「・・・おいおい、大丈夫かよ?」
と、Dは心配そうに階下から見上げてましたが、
そのロボの仕事が終わって降りてきた後、
自分も屋根に上がって、仕上がり具合を見に行きました。
まるでDがやったように完璧な仕上がりだったので、
屋根を降りたDがみんなに感想を述べました。
「すごいぞ。おれの仕事、そっくりに出来てる!」
村の皆は、急に色めき立ち、
「次はオレだ」「じゃあ、次は私!」「おいらも~!」
と、ロボの取り合いになりました。
発明家はニコニコして、
「良い発明が出来てよかった。
みなさん、休みたいときはぜひロボを使ってください」
と、喜んでいました。
フィッシュアンドチップスの揚げ具合も
L婆さんのやり方をそのまま再現しました。
花屋のアレンジメントもお手のもの。
クリーニング屋では洗い物も接客もこなし、
畑の雑草取りも完璧、
パン屋でのパン生地のこね方や焼き方も・・・
とにかく、ありとあらゆる仕事ができます。
ボタンを押した人の仕草を
完全にコピーして動くロボでした。
ロボは、村で引手あまたの人気者になりました。
(続く)